2022/09/03 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
■アマーリエ > ――攻めるか、様子を見るか。
単身であろうと、軍集団を率いる場合であろうとも、如何なる策略やら手管を揃えていても、攻め手の判断は凡そその二択だ。
古来の記録を紐解けば、一騎駆けで城や砦を落とす豪の者の話を聞かない訳ではないが、生憎とそこまで人間離れはしていない。
そのはずである。そう思っている。……そう思わせてちょうだいな、一応は。
単身、または乗騎たる竜の組み合わせで一騎当千を謳う騎士を揃えていても、相手が相手である。
「……――いつもといえばいつものコトなんだけど、ぱーっといってささーっと終わらせる方法があれば、聞きたいわ。凄く」
将にあるまじき、という謗りは知ったことか。数が重なれば兵ではなく将だって溜息も出る。
それが魔族の国の境という、良くも悪くも要衝たるタナール砦の攻略戦だ。
砦から離れた位置に幾つもの幕舎が建てられ、手慣れた風情で運びこまれた材木、丸太を並べた陣営が敷かれている。
夜となれば篝火がいくつも灯る風情を背負うように、陣営の入り口より離れた人影が嘯く。
行き交う兵、騎士達が会釈のうえ通り過ぎる姿は、整った顔を隠すことなく晒しつつ、夜風に靡く髪を抑える。
今のところ、遠見の魔術を使うまでもない。
数日前まで王国の兵たちが抑えていた、守護していたはずの砦は攻め込んできた魔族たちの手に落ちた。
小競り合いの如く数度、手勢を送っては威力偵察、並びに散発的に竜騎士たちによる上空偵察と威嚇を繰り返し、凡その配置を掴みつつある。
捕虜とした魔族兵の何人かが、口が堅い。開かせるのが早いか、地道な情報収集が実を結ぶが早いか。
■アマーリエ > 砦自体は何度も利用したことのある施設である。故に、建物の配置や構造はベテランであれば頭に入っているだろう。
この場合、留意しなければならないのは敵による臨時の改築、改造、そして罠の敷設という要素か。
俗に間抜け罠とも呼ぶような、他愛もないはずの罠も確かに厄介。
だが、魔術に長けた者が居れば、出城の敷設や対空兵器など即席の改修やら増築もやってのけるケースもある。
肉眼視できる限りでは――、そういった類のものがないのは幸いか。
「……考えなしに殴りこめた頃が懐かしいわね」
探索、分析に長けた魔術師を何人か連れてきているとはいっても、向こうが化かしに長けていた場合、そうもいかない。
故に情報解析ができる人員は、一人居れば事足りるは言わない。到底言えない。
分析者が総合的な判断を下すには、相応の時間を要する。其れをもどかしいというべきか、悠長というべきか。
だが、仕方ない。施設の損壊をまったく気にしない、度外視できるのであれば、師団の得意戦法を以て押しつぶすものを。
損壊を補填せよ――と呼ばれて、はいどうぞ、と出せる財力があれば、最初から使っている。カケラも残さない。
兵の増員、本拠の拡張、死傷者への見舞金等々。財貨の使い道は多種多様。
他の師団もきっと似たようなもの、であろうか。其れとも違うのか。その辺りを伺える機会があれば、聞きたいものだ。
■アマーリエ > やがて、伝令の兵士が己を呼ぶ声が聞こえてくる。
どうやら、行動開始前の最終判断を下すための分析が済んだらしい。
麾下の兵と騎士達は精鋭であると、将らしく自惚れてもいいと思うが――、湯水の如く使い潰せるものではない。
水は高きより低きに向かって流れる。其れが道理である。
兵力というチカラを流した際、如何に狙ったように敵の最も弱い場所を突き崩せるように流せるか。
最終的には現場判断による点はある。其れは否定しない。
しかし、お膳立てはあるに越したことはない。
力とは淀みなく整然と流れるべきであり、狙い定めた矢の如く迅速にあるべきだ。
「……ご苦労様。騎士達を集めるよう伝えてきてくれる? 最終確認を済ませ次第、動くからそのつもりで宜しくね」
呼び声に分かったと伝え、振り向きながら手短に指示を送ろう。
分析の結果は大体は恐らく、事前に考えた、想像していた通りの塩梅だろうが。
だが、しないよりマシだ。行動開始前に詰めた内容は、軍議として記録に残している。万一の失敗、敗退時も残すべき事項だ。
先に駆け出す伝令に続くように、マントをまとった姿は踵を返し――て篝火に囲まれた幕舎の方へと歩む。
軍議が済めば、鬨の声が上がる。奪還を告げる竜の咆哮である――。
ご案内:「タナール砦」からアマーリエさんが去りました。