2022/06/12 のログ
ご案内:「タナール砦」にネロさんが現れました。
ネロ >  
女が砦に現れたのは暇を持て余していたこと
そしてほんの少し、虫の居所が悪かったこと

「ふん…」

逃げ遅れた人間の兵士の一人に掌からドス黒い魔力の塊を叩きつけ、吹き飛ばす
大きな音を立てて瓦礫に埋まる兵士を一瞥し、つまらなさそうに息を吐く

「少しくらい憂さ晴らしになると思ったのに、所詮有象無象ね」

砦に転がる躯を足蹴にそう零す、魔王の娘の周辺では彼女が連れてきた魔物の群れが生き残りを探し彷徨いていた

ネロ >  
ネロが不機嫌な理由はあまりにも単純なもの

他の魔王が意欲的に砦を攻めないことに苛立ち、自身が魔物を率いて砦を攻めるも
砦を落とすことは良いとしてその後が実に良くない

我儘の極みで育った魔王の娘にとっては酷く面白くない、『自分の思い通りにならないこと』
それが続いたことによる苛立ち…ただそれだけであった

「ああ、ダメ。ダメね…こんなんじゃ全然おさまんない!」

人間達はそうそうに逃げ出してしまった
逃げる人間を追い回すのも面倒、となれば魔王の娘の治まらぬ苛立ちの矛先は、自ら連れてきた魔物にも向けられる

「あんた達がグズグズしてるから、ロクな数の人間を殺せなかったじゃない!」

自身を中心に、暴風の如き魔力を解き放ち周囲にいた魔物達すらも吹き飛ばす
それを見た他の魔物達もまた背を向け、砦から逃げ出していった

ご案内:「タナール砦」にクレイさんが現れました。
クレイ > 「……なんか、ラッキー?」

 魔物がいなくなった辺りでドガッと瓦礫のひとつが吹き飛ぶ。
 中から這い出して来るのは1人の男。腰に2本の剣をブラ下げた男が汚れこそ付きながらも怪我はわずかでその中から這い出して来る。

「あの数に正面からは無理だったけど……なんか大将自らがある程度追い返してくれるとはおもわなかったな」

 中からはゾロゾロと数人の人が同じ瓦礫から這い出して来るのは非戦闘員、簡単に言ってしまえば医療班だったり周辺から紛れ込んだ子供だったりだ。
 首をコキコキならして男は眼前に立つ少女に語り掛ける。

「さてさて? 魔族さんや、もしよければどうだい。砦はぶっ壊したって事で手打ちなんて。こいつらは非戦闘員だし良いだろ?」

 ダメ? なんて首を傾げながらもその非戦闘員にはさっさとあっちへ行けと他の人間が逃げた方向に追いやる。その間、つまり壁のように立ちふさがるのがこの男であった。
 その立ち方などから断るならやるぜという意思を感じるだろう。
 だが同時に、魔王の娘と言える程の強さを持つのならわかるだろう。その男に内包された魔力は、そして練り上げられた肉体は所謂有象無象ではないと。

ネロ >  
「……何、あんた達」

大きな音と共に吹き飛んだ瓦礫
そしてそこから現れた男達に魔王の娘は怪訝な視線を向ける

多勢に無勢と見て隠れていたことは理解できる、が──

男の持ちかけてきた取引に、ネロは大きなため息をついて、その青い瞳で睨めつける

「──は。何、ウジムシみたいな人間があたしと交渉しようっていうの?」

あからさまに、人間風情が、と
見下した言葉を続け、その小さな身体に強大な魔力が漲ってゆく

「皆殺し。もしくは頑丈な人間なら玩具として持ち帰ってやってもいいけど?」

立ち塞がる男から感じる魔力で、只者でないことはわかる
しかしそれが自分と如何程の差があるのか
圧倒的な素養での蹂躙以外を知らないネロにとっては、その実力を推し量るどころか、考える気すらないようだった

クレイ >  
 「ハハハ! 持ち帰るか、いやぁそれは困るな。昔ガキの時に魔族に攫われてよ。中々に辛い目にあってんだわ俺」

 なんてお気楽にアッハッハッハッと笑う。
 睨みつけられるのなんて何のその。だがひとしきり笑った後に。目を開く。
 黒い瞳は濁り、奥すら見通せないほどに。そして先ほどまでは見せていた魔力がスゥと引き絞られる。
 
「ま。そういうわけで……言いたかったこと、上手く伝わってねぇみたいだし、今お前が言った言葉そのまま返すわ」

 腰の剣を2本抜き放つとそれを乱暴に振り抜く。
 轟音と同時に風圧が周囲に現れる。衝撃波ともとれるそれは魔王の娘にとっては強めの風かもしれないが、弱い人間や魔族であればそれだけで十分吹き飛ばせるほどの威力をしている事だろう。

「ここで死ぬか。玩具になるか……選べよ傲慢娘」

 口調こそはじめの時と変わりない、それこそニヤリと付きそうな言い方だ。
 だが、その表情はどこまでも冷めきり、完全にやる気であると理解できるだろう。

ネロ >  
「…はぁ。いくら強くったって、ただの人間があたしに敵うと思ってるだなんて」

剣を抜き放った男に怯む様子などは見せず、その動向が鋭く細まり…

「じゃあ、もう一度捕まえてより辛い目に合わせるのも一興ね。
 ──あんたが選ぶのよ、身の程知らず!!」

言葉を終えると同時
その右手を薙ぐように振ればそれに追随するように黒い魔力の風が巻き起こる
逆巻く風のように地面を削り巻き上げながら、衝撃波となって構えた男へと迫る

──魔王の娘、その身振り手振り自体が強力な攻撃となっているようだった

クレイ >  ここにきて初めて口元に獰猛な笑みが浮かび上がる。
 とりあえず第1段階は完了。あとは自分が長持ちすれば彼らを非難させられる。それまで耐えるだけだ。

「優しいねぇ選ばせてくれるなんてさ!」

 踏み込むと同時、迫る魔力の風を左の剣を振り下ろして切り裂く。
 そして生まれた隙間に体をねじ込む。

「じゃあまぁお互いに生きてたら楽しむって事にしようか。それで文句ねぇだろ我儘女」

 その刹那、風のような速度で迫ると同時。今度は右の剣が地面すれすれから跳ねるように襲い掛かる。
 相手の左わき腹から肩にかけて切り上げるように。