2022/06/04 のログ
■イルゼ > 森の中は微かな木漏れ日がさすぐらいで視界が悪く、当然空を飛んでの偵察は出来ない。
歩かねばならないのが、余計にイルゼを苛立たせた。
「このまま…勝手にどこか手頃な人間どもの村でも襲撃してやろうか?」
そんなことをついつい思ってしまう。
王国領内への襲撃は日によって選抜された魔族が行っており、
イルゼは今回その選抜から漏れたのだ。
選ばれなかった魔族は休養か、砦の補修などの肉体労働、
あとは彼女のような偵察や防衛に回される。
しかし、王国軍には未だに砦の奪還作戦の兆候もなく、
イルゼは暇を持て余していた。
と、その時だった。
「……ん?」
がさり、と何かが落ち葉を踏む音を立てる。そう遠くないところだ。
イルゼはそちらに顔を向けるが、茂みの中にでもいるのか、音を立てた相手の姿は見えない。
彼女は歩いて、そちらに向かうことにした。
■イルゼ > 歩いた先にあった、ガサガサと音が鳴る茂み。
イルゼはそれに気付くと、慎重に近寄っていく。
そして……。
「……うおっ!?」
飛び出してきたのは、この辺りによくいる鹿であった。
「なんだ、野生動物か…」
肩を竦めるイルゼ。結局、その日は何事もなく巡回が終わったという…。
ご案内:「タナール砦の近郊」からイルゼさんが去りました。