2022/02/08 のログ
ご案内:「タナール砦」にゼロさんが現れました。
ゼロ > タナール砦の中は、今、慌ただしく駆け回る工作兵達でごった返している。
つい先程、魔族の軍を撃退したばかりで、彼らは破損した砦の壁、天井、床、堀等を一生懸命に修復しているからだ。
他の兵士たちは、警備任務に付いたり、戦禍の確認を取って居たり、それぞれの仕事に従事していた。
今回、砦を奪還したのは第七師団、こういう時の為にタナール砦の近くに駐屯地があるのだ、攻撃を聞いて、直ぐに駆け付け。
魔族を撃退した、という所。
小隊長などは、報告書をまとめる為に個室に。
兵士達は、魔族の再来を警戒するために一時的にタナールに駐留という、何時もの流れの中、シフトを組んでの休憩を取る形になる。

丁度、少年兵ゼロは、休憩の時間となったので、今、食事の時間というのもあり、食堂に来ていた。
蒼全身鎧、仮面をつけた少年は、他の師団員と比べても異質と言って良いだろう。
だからなのか、トレーに一人分の食事を受け取って、食堂の隅に移動する。

他の仲間が食事を摂っているのを眺めながら、一人、仮面を少しずらして、もそり、もそもそ、と食事を行っていた。
之もまた、いつもの事だ、と。

ゼロ > 食事を摂りながら、少年は思考に耽る事にした。
考える事と云えば、一つしかない、第七師団の事である。
少年は―――ゼロは、今は亡き前師団長のオーギュスト直々のスカウトで参入した師団員。
旧体制の頃からの兵士であり、元は傭兵だった。その前は―――今考える事ではない。

今の第七師団の師団長……将軍は、サロメであり、前師団長の右腕だった人だ。
今は、彼女が師団長となり、魔族の国へと攻め入り、壊滅した師団を取り纏め復活させた。
その手腕は、矢張り、将の器であり、従う事に何ら疑問は沸かない。

ただ、戸惑いはあるのだ。
今までの第七師団は、見敵必殺であり、魔族となれば容赦はせずにただ、殺せという集まり。
だから、それを遂行できるような人物が多いし、そうなると、傭兵や荒くれ共が多く存在していた。

今の将軍の指示は、もう少し変わっているのだ。
人の害となる魔族を見極め、人を守護するという形。

完全攻勢の、以前から見れば、かなり及び腰と言われても仕方ない、現に、旧師団員の中には、そう言う意見もあるのやもしれぬ。
ただ、将軍の言う事だから、それに従うのが兵士の役割そう考える少年に、その理念の推移に関しても、問題はないのだ。

問題なのは。

「―――見極める。」

という一点だ。
少年は、人の敵となる魔族を見極めろ、と言われて、どれが?と首を傾ぐタイプだ。
魔族だから、敵、敵なら、撃滅。シンプルな殺意によって稼働する。
だからこそ、人の益になるのか、害になるのかを見極める、というその過程が、とても、難しい。
其処に、戸惑いがあった。

ゼロ > 対面する相手が、魔族かどうかまでを発見するのはたやすい。少年の仮面には、魔力を見通す機能があるから。
人間以上の魔力を持っていれば、魔法で人の姿に化けて居れば、どのような魔族でも発見できる機能がある。
ただ、其処からが問題となってくるのだ。

少年は、今現状を見ればわかるだろう、ぼっち属性だ。
対人関係スキルなんてものは、殆どない。
友人と考えられる相手は居るけれど、自分から声を掛けると言う事は殆どしない。
第七師団の同じ部隊の仲間から言わせれば、何を考えて居るのかわからない。
ただ、頼めばやってくれるから便利。

という返答が殆どだ。
そんな少年は、相手を評価すると言う事が特に苦手だから、最初の戸惑いに帰結する。
魔族を見つけたとして、それが、斃すべきなのか、斃さざるべきなのか、その判断が、付けられないのだ。
だから、如何しよう、と悩んでしまう。
ただ、将軍の掲げた新しい理念、それを否定積りもないのであれば、手探りでも、どうにかするしかないのだろう。

教えを請おうにも、教えてくれる人自体が、いないという今現状なのだ。
はぁ、と珍しくも、少年からため息が零れる。

ゼロ > 食事を続けながら、思考は続いていく。
少年は、軽く息をもう一度吐き出して、食事を続ける。
水を飲み、食事を続ける少年は、思考をまとめていく。

対人スキルを色々と育てないといけない、という結論に入るのだけども。
どうやったものか、と、頭を抱えて見せる。
何故なら、再編で、師団に入ってきたのは、貴族である正騎士や、学士である魔術師に法術師。
身分や、立ち居振る舞いも、重視したのだろう、将軍も貴族だから。
身分ではなく実力主義、とは将軍が行っていたとして、どれだけ伝わっているのだろう。
平民以下の少年は、先に此処に居るだけというだけであり、見下されている事も多くある。
だから。聞いても教えてはもらえないし、そんな事も判らないのかと言われている、それが現状だ。

その辺りも、少年自身の対人スキルの低さが要因となっているのだろう、それは、自分でもわかる。
ゆるり、と食事を終わらせてから、立ち上がる。

休憩は終わりだ。
また、兵士は駒に戻り、哨戒任務へ、警戒任務に戻るのだった―――

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。