2021/10/18 のログ
ご案内:「タナール砦」にタマモさんが現れました。
タマモ > 空を見上げれば、満月間近の月が輝く。
そんなタナール砦は今、どちらが支配しているのか。
それは今なのか、それとも、過去にここで起きた出来事とあるものか。
それは、誰にも分からない。

だが、正直、そんな事はどうでも良い。

今、ちょうど交代の時間か、それとも他に理由があるのか。
見張りも立たぬ屋上に、ふわり、と少女の影が舞い降りる。
風に揺れる狐を模した耳に、複数の尻尾。
血のように真っ赤に染まる紅の双眸が、ゆっくりと、周囲を見渡す。

「………あぁ、匂いが、臭いがする。
心地良き、そして、心躍らせる、生の脈動も聞こえる。
妾にとって僥倖か、あの子にとって不運であろうか。
久し振りに、楽しめそうな場所で目を覚ませたものじゃのぅ…?」

周囲に感じるだろう、幾つもの何者かの気配。
それは、攻め落としたばかりか、今だ守り続けているものか。
それを感じながら、くくっ、と喉で笑う。
その少女を知る者は、そこに普段と違う少女を見るだろう。

「さぁ、楽しませて貰おうか。
それが出来ねば、訪れるのは、永劫なる苦行であろう」

そんな呟きを漏らす少女は、この屋上で見付けた、この砦の中へと続く入り口へと。
ゆらり、ゆらりと、ゆっくりとした足取りで、歩み始めるのだ。

タマモ > しかし、その歩みはすぐに止まる。
ここに向かい来る、何者かの足音。
それを、鋭敏な聴覚が捉えたのだ。
人ではまだ捉えられぬ、少し距離のある僅かな足音、もう少しでこの屋上に来る事だろう。

「ここの者ならば、何者であれ、この現状に妾より詳しい者じゃろう。
ならば…その記憶、姿共々、頂くが利便じゃろうな。
遊べるならば、尚良いが、大して遊べる者も少なかろうしのぅ」

軽く考え、呟くのはそんな言葉。
それが、一体何を意味する事か、それを知る者は、その呟きを聞いたとしても、数少ないものだろう。
音もなく、ふわりと身が宙を舞い、とん、と着地をするのは入り口の真上。
その気配を完全に断てば、静かに、その入り口から姿を現す者を待つ。

タマモ > 静かに入り口の真上に佇んだまま、この屋上への来訪者が足を踏み入れるまで留まる。
どうやら、ちょうど見張りの交代が来たらしいか。
見張り塔へと向かい歩む、その兵士の真後ろへと、再び音もなく着地をすれば。
伸びる手が、がっ、と口を塞ぐように抑え付ける。

「よぅ参った、そして、さらばじゃ。
お主と言う存在は、代わり、妾が使ってやろう。
安心して、その魂をも妾に譲り渡すが良い」

いきなりの事だ、何事かと、こちらへと注意を向ける…そんな余裕も与えずに。
伝える言葉と共に、どっ!と、兵士の体が何らかの衝撃で大きく揺らぐ。
視線を下げれば、胸から伸びた、少女のもう片手と、その手の上に乗った、紅い塊。
どくん、どくん、と鼓動を起こす、その塊が何であるか。
それを確かめる事も、その兵士には出来ないだろう。
ずるぅっ、と腕は引き抜かれ、その体はゆっくりと前のめりになり、そのまま倒れる。

紅く染まる地面、それを気にする様子もなく。
ぐじゅっ!と更に飛び散る紅で、周囲を穢せば。
次の瞬間には、少女であった姿は、今まさに、事切れた兵士の姿、そのものとなっていた。
しかし、そうは経たず、周囲の穢れと、元の兵士の体は、ゆっくりと煙のようになって消えていき。
後、そこに残すのは、ただ兵士一人となっていた。

タマモ > こほん、と一つ咳払い。
あ、あー…と、軽く声の確認をした後。
軽く手足を解したり、体を捻ったりと、その具合を確かめて。

「さて…残っている滞在者は、これだけか。
なら、頂くのに、そう時間は掛かるまい。
…憂さ晴らしも兼ね、付き合って貰うぞ、人間共」

くるりと踵を返し、兵士へと姿を変えた少女は、入り口を抜けて砦の内部へ。
その後、砦がどうなったのかは…詳しく、知る者は居ない。
ただ、新たにこの砦に来た者達を迎える砦には。
誰一人、居る事はなかったとか。

ご案内:「タナール砦」からタマモさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。