2021/10/01 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > 戦いは早暁から始まり――ちょうど夕暮れとともに終わった。

戦い慣れているものにとっては、いつものことの一言で済むだろう。
さながらいつものように砦が奪われ。
そして、日常の如く、かつ、滞りなく奪回の軍として任意の師団が指名され、出撃する。

即応できず、整わない兵力については臨時で傭兵や手が空いた冒険者を募っての速攻戦だ。
麾下の師団は何よりも機動性とインパクトの面では、他の師団達にも劣らないと自負している。
後は、砦を奪った者達の手管次第だ。
粘ることをよく知っているものであれば地の利を活かして、よく耐えるだろう。

だが、時間が経過すれば経過する程、砦に善くないものを残留されるという危険性は増してゆく。
故に攻め入る側としては、加減もしない。する理由もない。
殺すべきを殺し、屠るべきを屠る。砦の外に骸を積み上げ、焼き上げながら喰らう酒というのは――。

「…………旨いッ! なんて云う奴の気が知れないわね、ほんとに」

時は、夜。奪回戦を終えた砦の広場や天蓋には血糊や焦げ跡がまだ残る中、運び込まれた食糧で戦勝の宴が開かれている。
駆逐した敵の骸を荼毘に付す煙がまだ上がる中、其処には狂騒がある。
その風景を広間の端より見遣りながら、白い鎧姿の女が椅子代わりの樽に腰掛けて嘯く。
足元に幾つも転がるのは、毒見と称して徴発した砦に備蓄されたワインの瓶だ。
地下蔵に備蓄されたものについては、今回はどうやら手がついていないらしい。おかげで飲み倒すには困らない。

ただ、外からの悪臭にどうしても閉口するだけだ。

アマーリエ > 今回、魔族の国側に面した砦の外で灼く骸については始末の他、様子を窺っている敵への示威である。
バカ騒ぎができるのも、厳正なる籤引きで負けたとはいえ、砦周囲を竜に騎乗した騎士達が巡回しているからだ。
最悪となれば、砦を早々に放棄して逃げの手を打つのも特段躊躇いはない。
その際ただ、運び込んだ食糧に火を投じるのと、慰み者同然とはいえ、捕虜を始末しておくこと厳命するだけだ。
万全を期すのであれば、毒まで井戸に投げ込むのが戦史を紐解くと最良な気がするが。

「運び込んだからには、真っ当に消費してくれることだけを願いたいわね。
 うちのモットーとはいえ、楽じゃないのよ。集めるのも蓄えるのも」

広場の片隅に積み上げられ、幕をかけられた木箱と樽の山積みを思う。
砦の備蓄品が汚染されていることを憂慮し、運び込んだ備蓄の保存食と浄化した水、ワインの樽だ。
保存前提とはいえラインナップに偏りはあっても、宴を開く位には困るまい。
一度封を開けたからには、敵ではなく、兵達の腹に入ってひり出してくれる方が何よりも無駄がない。

「……――さーて。誰か良い捕虜でも美味しい話でも得てないかしら」

少し見て歩くわ、と。丁度見かけた騎士に声をかけ、まだ中身があるワイン瓶を摘まみ上げて立とう。
焚き火を囲って歴戦と云った風体の傭兵達が、同僚の女や枷を付けた魔族の女を引っ立てて、交わり出すというのは、目の毒だ。
日常とは言えども、無理を言わせた急襲だ。その労いとしても、程々に緩めなければ次の雇用にも差し障りがある。

あとは、眺め遣る己の欲動の始末にも困るというのが、一番の悩みどころだが。

アマーリエ > まさか、わざわざこんな所まで高級娼婦を呼びつける訳にもいくまい。
捕獲した捕虜は他の貴族への贈答「品」扱いにするなど、政治的な用途は幾つか思いつく。
ただ、己の手籠めにしたいと思う程の者には中々遇ったことはない。

「嗚呼。歯応えのある獲物って、ここ最近見かけないわね。狩り尽くした――なんて、無いとは思うのだけど。」

印象的であれば、厭でも覚える。記憶に残る。
そうでもないというのは壁の向こうの魔族達も人材が枯渇したのか。それとも、所領に引き籠っているのか。
思うところはある。

牢に向かい、酒を舐めながら品定めも兼ねて捕虜を改めておくとしよう。そう思いつつ――。

ご案内:「タナール砦」からアマーリエさんが去りました。