2021/09/21 のログ
ご案内:「タナール砦」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 月夜。
常に戦場である荒涼とした丘に、くろぐろと聳える砦。
今宵満ちた月から降る月光を遮るものは何もなく、丘全体が白っぽく輝いてさえ見える。だからこそ砦が地に落とす影は一層濃く、それを追い払うように焚かれた篝火が弾ける音が、夜の静寂に鋭く響く。

「―――役得、って感じることもあるのねえ…」

砦に幾つかある物見の塔のうち、南側で番を務めるエルフがぼんやりと言葉を零す。
ぽっかりと浮かんだ月と、耳を澄ませば遠くから聞こえて来る虫の声。

今日は砦を取り返して守り通して戦線を更に押して3日目。
勿論被害が無いことはないが、なんとはなしに明日を憂う事のないのんびりとした空気が砦を取り巻いている。兵士も傭兵も緊張感無くのんだくれたり早々に寝床に入ったり捕虜を(いろんな意味で)からかったり。今の指揮官は『いざという時に役立てばよい』と割り切っているのだろう。特に叱咤激励するような雰囲気を醸し出すものも居ない。

そんな中生真面目に見張りについているのは自分だけかもしれない、とは思いながら
ひとりきり、それはそれでこの月と空気を独り占めしている気分で満更でもなさそうに、女エルフは外壁に背を預けて月を見上げている。

「……楽器持ってくればよかったなあ…」

せめて、笛とか。唇を尖らせて口笛を吹く真似をしてみる。