2021/08/17 のログ
ジギィ > すうーと鼻から湿った空気を吸いこむ。
それをただ吐き出さず、吹いていく風に乗せて鼻歌めいた響きを流す。

「ンー…♪―――…♪」

やがて調子が出てくると、小さく声を、言葉を載せていく。王都では聞かれることのない言葉で、ほんの少しだけ寂しい調子で。
背後から聞こえて来る、こちらは王都でも良く聞かれるような威勢のよい、銅鑼声交じりの歌とまるで真逆。それは少しでも浮つきそうな気分を集中させるためのようでもあり、ただのやっかみのようでもあり。

次の交代要員が来るのは、きっとあの月が払暁に霞むくらいだろうか。
……もしかしたら騒ぎに乗じて来ない恐れもある。

(……そしたら流石に…
 寝よう)

防衛組だったとはいえ疲れが無いわけではない。
口ずさんでいた歌がひと時途切れて、ふぁあと呑気な欠伸が零れる。

果たして女エルフはその夜、無事心置きなく休むことができたのか―――

ご案内:「タナール砦」からジギィさんが去りました。