2021/01/07 のログ
ご案内:「タナール砦」にゼロさんが現れました。
■ゼロ > 其処は、正しく戦場。何時ものように魔族が砦を落とし、マグメールへの橋頭保にしようとする、そして、奪われる。
奪われた後に、軍が編成されて、向かい、取り返す。
その繰り返しがいつものように行われている場所で、蒼く彩られた鎧を身に纏う兵士がその中に居る。
王国軍第七師団タナール方面第一強襲部隊……それが、少年が所属する部隊の名前であり、その主任務は、奪われた砦を取り返す事―――魔族を撃退することにある。
少年兵は、まずは、北にある魔族の国方面の大門の前に移動する。
基本的には其処が一番の激戦区となり、砦を落とそうとする魔族、逃げようとする魔族が其処に来るのだ。
来るものを撃退するために、逃げようとするものを、逃がさぬために。
蒼い鎧の兵士は、其処に立つ。
そして、槍で、短刀で、拳で、薙ぎ払い、切り裂き、殴り倒し―――どれだけの時間を過ぎたのか、其処に立つのは死骸の山と、全身鎧を血にまみれて赤く染めて立つ少年兵だ。
雑兵程度では、少年を止めることは出来ない、名を持つもの以上の魔族でなければ、だ。
これでも、年単位で魔族の国に潜み、生き延びた経験を持つ故に、魔族に対する戦闘能力は高い。
今、目の前に門を抜けようとする魔族が居て、それを阻む様に、少年が立つ。
■ゼロ > 魔族は、人型の存在で、角を持つ存在、魔族ではあるが、魔法よりも物理的な力に自信のあるタイプか。
オーガとか、そう言った存在の上位と言った所だろう、見た感じでは、そういう風に捕らえることが出来る。
人と似通った姿は、人と同じような弱点を持つものが多い―――とは言うが、それは、多いと言うだけで絶対ではない。
目の前に立っている存在は、残忍な笑みを浮かべ、此方を見下ろしている、体格的には自分よりも頭は二つ高いか。
そうなると、膂力は兎も角破壊力的には相手の方が軍配が上がる、同じ武器を使ったときに、体格が大きい方がリーチも一撃の重さも体格に合わせて変わるのだから。
とは言え、少年はそれを不利と感じてはいない、これでも、対魔族の軍である第七師団の古参兵と言える存在だ。
年齢に見合わずに経験は繰り返しているし、そして、生き残っている、実力は、有る。
その辺の雑魚と比べてもらっては困る、だの、こんなチビが相手じゃ、満足できないとか、何か言っているが、それは別に。
怒りがわかないというよりも、よく聞く言葉だ、と言う感想。
兵器として育った少年は、大声で何かを言っている魔族に、一歩踏み込む。
少年の鎧は、格闘する為には、動きを阻害する枷に見えるだろう、実際に、普通と同じ作りの鎧だから、格闘するには動きの阻害がそれなりに在る。
しかし―――利点もある。少年の格闘の技術は、戦場で培ったものであり、達人が作り上げたそれではない、流派もない。
ただ、壊すために、腕を、足を振り回すようなものだ。格闘家から見れば児戯といって良い其れ。
鎧の重さは、一撃の重さを体重に加えるために身に纏っているようなものだ、そして、打撃から身を守る殻に為る。
武闘家や、格闘かではない、兵士だからこその選択。
オーガ亜種が自慢げに話している間、踏み込んだ少年は全身の発条を使い、正拳を、その膝を真っすぐに殴り飛ばす。
不意を突かれたが、鉄の剣を弾く肌をしているとか言っていたオーガ亜種の顔が、余裕から、驚愕へと変化する。
籠手を纏った拳は、オーガ亜種の膝を砕き、その音が、オーガの中で、少年の耳に届いたから。
あっさりと、砕かれて崩れ落ちてくる頭を迎撃するように右手を戻しながら、左手でのアッパーカット、当然顔面に向けて跳躍し、下から登る、槍のトラップのように、その左目を抉る。
――――二度目の、咆哮。
■ゼロ > ぐじゅりと、柔らかなものを貫く感触、目玉をぶち抜いたと理解が出来て、次の瞬間、少年はそのまま力を籠める。
自分よりも大柄なオーガ亜種の肉体、持ち上げた慣性の儘に、少年は腕を振るう、膝をつこうとしていたオーガ亜種の悲鳴、更に持ち上げられ、痛みを悲鳴としているのだろう。
もはや、何を言っているのかわからない、そして、それを気にするのは少年のすることでは無く、少年はそのまま左腕を振るう。
オーガ亜種の頭を、地面に向けて叩きつける。
ぐしゃりという音と共に、オーガ亜種の頭が地面に埋まる、ダメージと衝撃と、それらを頭に受けて、頭から地面に埋まってしまえば、流石に生きてはいないだろう。
無言で、周囲を見回した、魔族の気配はなく、魔力も落ち着いているのが判る。
戦闘状態は、終わった、と認識していいだろう、後の細々しているのも、部隊の他の人間が倒しているのが判る。
もうしばらくここに落ち着いて、問題がないなら、砦の中に戻ろうか。
少年は、オーガ亜種を初めとした、倒していった魔族の死体を背に―――魔族の国の方に視線を向ける。
油断はない、油断したものから死んでいくのが、この場所だから。
周囲に気を張り、襲撃を警戒し、新たな戦力の投入を警戒する。
情況が落ち着くまでは、少年は、止まることはないのだ。
■ゼロ > 暫しの間、少年は警戒を続ける、それは習性と言うもなのだろう、兵士としての、兵器としての。
暫くの間の警戒の時間、徐々に徐々に、喧騒も減り、戦闘音も静まってくる、そして逃げてくる魔族に止めを刺す仕事が始まる。
彼らは、少年を見て、何を思ったのか。此奴なら逃げられると思ったか、もう、逃げられないと思ったのか。
そのどちらを考えたとして、結末は一つ、脇に倒れ伏している屍の山を増やすだけ。
そんな作業も終わり、完全な静寂が周囲に戻ってくる。
そうなると、新たな音が響き始める、砦の修復の音、食事の音、指揮官の号令により、再建が始まるのである。
直ぐに襲われては仕方ない、と、まずは北門―――魔族の国の方面からの門の扉を治し、壊されぬように新しくして。
ようやく少年の警戒が、一段薄まる。無くなるわけではない。
生きのこっている人間で警備、魔族の死体の処理、残党の処理など様々にやることがあり、それに専念。
少年は警備に入る事にし、砦の最上階の物見塔へと進んでいく。
其処からの視界が一番少年にとって便利だ、仮面で夜を見通し、魔力を感知し、警戒できる。
そんな、普段と変わらぬタナール砦の一晩―――。
ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。