2021/01/05 のログ
ご案内:「タナール砦」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > タナール砦の冬の夜は冷え切っていた。
一進一退繰り返す砦にはそれなりの武器と食料、医療物資が備わっているものの先の見えない戦況と寒さに寄せ集めの兵士たちは夜空に白い息を吐く。

そんな砦へと2頭立ての荷馬車が入っていく。
御者席に座り馬を操る褐色肌の冒険者は、とある重要な積荷を王都から運んできていた。
天幕と焚き火が点在する広場に到着するなり、ヒューーーィ!
指笛で周囲の気を引いて。

「みんなー!おまたせ!
おまちかねの――お酒だよー!」

馬を杭に繋ぎながら、片手を口元に大声で触れ回る。
荷馬車後部に移動すれば、エール、ワイン、蜂蜜酒にりんご酒を覆っていた幕を外すと、
寒さと戦に辟易していた兵たちがこぞって手を伸ばしてくる。
瓶や樽を荷馬車後部に乗ったまま次々と笑顔で手渡し。
そのまま、酒場のウエイトレスよろしく砦の中にたむろっている人々たちへと往復しながら配っていく。

「――だいたい行き渡ってるかな?
お酒、ほしいひとー!」

あちこちで小さな飲み会が繰り広げられる砦のなか、
いくつかの瓶と取っ手のついた小樽を抱え。
酒精求む人影を歩きながら探し。

タピオカ > 身体がぬくもり、酒気帯びに陽気な掛け声。
自然と広がるのは調子っぱずれな歌声だった。
王都から派兵されたらしき一団からはかつての王国の姿を称える行進歌。
冒険者たちによるグループはふしだらな良き隣人の妻の所業、本来は女声が歌う歌が。
代々この地に住まうクラン集団からは神がもたらした甘い朝露を食む羊たちの歌が。

それぞれ響く中を、ここでの仕事を終えた褐色肌の冒険者は王都へと戻る荷物を積み込み。小さな微笑み残して振り返ると、馬に鞭を入れて走り去り――。

ご案内:「タナール砦」からタピオカさんが去りました。