2020/11/01 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――嗚呼、戦場の臭いだ。

最近は各処との交渉、折衝に追われて緊急の出撃要請には、麾下の騎士達を向かわせることが多かった。
本来は其れが良い。其れが正しい。
兵棋の類で考えれば王の駒を無為に動かすのは正しいことではない。盤面を乱す。
だが、ここは盤面ではない。ヒトが行き交う戦場だ。
いったんは落ち着いているにしても、それはまるで呼吸するように、生きているように蠢く戦場の凪に過ぎない。

「交代の兵の補充にはまだ時間がかかるのね。
 ……そう、いつもの事だけど遅々としてるわね、本当に」

朝が過ぎ、昼に差し掛かろうとする砦の中庭。
暗雲の隙間から漏れる陽光に目を細めながら、白い鎧を纏う女騎士の姿が配下と思しい者達と言葉を交わす。
鈍色に磨き上げられた鎧姿と比べ、人目を引く姿は立ち振る舞いも相まって、兵卒のそれではない。
纏う黒いマントと襟元に設えた徽章が、その証だ。一軍を預かる者だ。
穏やかに微笑めば如何にもらしく見える容貌が、やれやれといった風情で溜息を零す。

タナール砦の攻防の後でよくある事項だ。
損耗した兵力が勝手に地面に生えるわけでも、井戸から這い出して来る訳でもない。寧ろそれは死霊術の類である。
麾下に魔術師は多くとも、生憎とその手の術に長けるものは居ない。居ても使わせないが。

「無駄と思うけど、催促の伝令を出して頂戴。
 あ、早くしないと手頃な捕虜が先に売れてしまうと言い添えておいてね」

こんなのは好かないけど、と。小さく舌を出し、肩を竦めて配下に指示を出し、それではと動く姿を見送る。
面倒なものだ。砦の陰に纏められた、収容待ちの魔族やら異種族の雌を眺めて思う。

ご案内:「タナール砦」にルインさんが現れました。
ルイン > 半ば臨時騎士に近い身分ではあるが何かあれば呼び出しを受ける。
特にタナール砦での有事では問答無用という事も多々。
後方勤務の窓際師団所属という事で伝令代わりに今回は使われ。

捕虜がまとめられている場所の近くに責任者がいる事がなぜか多く、砦につけば捕まえた兵にその場所を訪ねて砦内を走る。
そうして何度か迷いちょっかいを出されながら中庭に到着をすれば周囲を見回し。

「ちょっとすみません、責任者はどこに…あそこですね」

近くにいた兵に何度目かの同じ問いかけをし、告げられた白い鎧の騎士を見つければ駆け寄り。

「王都からの伝令です。交代はもう少し準備に手間がかかるそうです」

名乗るよりも先に簡潔に伝言を告げ、後の命令はこちらにと書状を差し出して。

アマーリエ > 空を仰げば、遠く――咆哮が響く。
麾下の第十師団は竜騎師団だ。臓腑に響く力ある竜声はワイバーンの類ではなく、ドラゴンのものに他ならない。
厩舎に繋がれた荷馬達が戦慄くが、師団が駆る軍馬達は動じない。慣れたものだ。

だが、より明瞭な意志あるものであればそうもいくまい。

打ちひしがれた敗残の者達は、朝焼けと共に訪れた奪回の竜騎士達が駆る竜のそれを聴いただろう。
急襲の楔となる竜騎士を先行させ、路を確保すれば攻城兵器を伴った騎兵達を後続させ、侵入を果たす。
ある意味では、対処のパターンは幾つかの型式として決まりつつある感はある。
だが、そのどれもで徹底しなければならないことは一つだ。生かして帰さないコトである。

捕虜を取るなら、それは「後始末」をつけやすいモノであることが肝要だ。
特に見目の良い雌であれば、概してその後始末は決まっている。美少年なら? それは買い手次第だが。

「……ン? なぁに?」

己を呼び出す無声の通信魔術が脳裏を叩く。どうやら、伝令が来たらしい。
入れ違いとなったのか。首を傾げながら、駆け寄る気配に師団の紋章を描いたマントを揺らして振り向こう。
見える姿に、あら、と。そんな声を出しながら目を瞬かせて。

「――ちょっとビックリしたわ。
 久しぶりね。あと、伝令ご苦労様。あんまり聞きたくなかった知らせだけど、仕方がないから受け取っておくわ」

柳眉を撓らせ、予想通りの内容に険しくなりがちな表情の動きを抑えつつ、挨拶と共に書状を受け取る。
その封を開いて内容を一読すれば、侍従の兵を呼んでそれを渡す。
とりあえず帯同させた参謀たちにその対処を諮らせよう。

ルイン > 規模が大きくなればなるほどに統率の取れない部隊は多いが今回の派遣先である第十師団はそれはなく。
やはり竜騎師団という事もあるのか他の部隊に向かった時とは違い揉め事にも巻き込まれない。
少々ドラゴンに警戒されはしたが近づかなければ問題もなく。

毎回こういう派遣先なら楽なのにと考えてしまう。
そうして見つけた師団長に声をかけ、その顔を見ると最初は首を傾げ。
次には不法侵入者の事に城であったことを思い出し汗が流れる。
今は正式な18師団所属なので問題はないが緊張はしてしまい。

「あはは……お久しぶりです。
いえいえ、これが仕事ですので……交代部隊が来るまでは待機ですか?」

にこやかな笑みを浮かべて書状を渡し中身を見た様子につい訪ねてしまい。
しかし視線は中庭を行き来していたりとして。

アマーリエ > もともと、規模拡大が難しい編成の師団だ。
花形である竜騎士は力ある竜も含めて補充が難しく、一般の兵力もまた機動性を確保するための騎獣の類も欠かせない。
精鋭というのは聞こえがいいが、その実損耗が増えると機能を失いかねない脆さもある。
つまりは、結局金だ。限りある予算で何よりも練成しなければならない兵を湯水の如く、賄えない。

だからこそ、統率が取りやすいというのもある。
足りないところは遠慮なく傭兵を雇うことも、視野に入れている。
適切に契約の元に動かすにしても、統率を徹底しなければどうにもならないのだから。

「この場でこうしてまた会えたってことは、嗚呼、そういうことね。
 なら問題ないわ。健勝そうで何よりよ。

 ――そ、待機。防衛は得意じゃないトコに任せるあたり、つくづく余力がないのね」

何時ぞやの出会いは確か、不法侵入だったか。
だが、今回は違う。向こうの装束と持参してきた書状は正式なものだ。であるならば、咎める理由は何もない。
あれはあれ、これはこれ、だ。まずは健勝であることを寿ぐ。

中庭は荷馬や軍馬、色違いの鱗を纏った竜が寝転がったりとごった返している。
己が竜は単独で上空を周遊し、暇潰しも兼ねた警戒に当たっている。
騎士や竜達が動き出すのは防衛任務を受け、周囲の哨戒に当たりはじめたからだろう。

「嗚呼、捕虜の始末もしておかないとね。手土産が欲しいなら持っていく?」

この辺りは参謀たちに任せている。認可が欲しいなら別途呼ばれるだろう。
仕方がないので御茶でもしようかと思いながら、中庭を見遣る姿に尋ねてみようか。

ルイン > 騎士になってから色々な師団の手伝いや伝令として走った経験上、第10師団に持った印象は少数精鋭。
ワイバーンではなくドラゴンを扱っているのでそれは当然なのだが。
そして物資は別とし兵の補充が行いにくいのは日ごろの雑用という書類仕事で覚えていて。

ただそんな師団でどうやって砦を落としたのかはどうしても分からず。
たまたま騎士団員以外を見ることがなく不思議ではあるが問うことはなく。
一騎当千の兵揃いなのだろうと納得して。

「ちょっとした縁で18師団のお世話になっています。
さすがに前と同じでこんな所にまで来る度胸はありませんから。
そちらもお元気そうでよかったです。

余力と言いますか‥…何も考えてないのかも?」

不法侵入でこんな所にこれませんと首を横に振って見せ。
大真面目な仕事ですと胸を張ると18師団の徽章がわずかに見え。
あの時以降遭遇はなかったが元気そうでよかったと顔を綻ばせて。

「でもこうしてみるのは初めてですけど色々なドラゴンがいますね。
さっきも立派なのが飛んでいるのを見ましたし…。
捕虜の始末は時間が経つと貴族様が口を突っ込んできそうですね。
え?いいんですか?」

多くの竜を見れば珍しそうにし、素直に凄いと感想を口に。
手土産と聞くと目を丸くして問いかけしてしまって。

アマーリエ > 頻繁に使う戦術としては、上空からの急襲、そして中庭に降りての開門という手順を踏んだ手管だ。
最大規模の他師団と比べて、兵数は少なくてもそれでも「師団」を名乗る以上、それなりの歩兵、騎兵の数は揃えている。
後始末が面倒だが、地中掘削能力を持った地竜の眷属を従えた騎士が居る。
防護魔術による護身も徹底したとはいえ、対空能力を固めた敵勢には足元からの奇襲という手もある。

こんな翻る旗がそれこそ日替わりで巡るような地の制圧、奪回はいっそ、だ。
専門の部隊でも作る方がそれこそ楽ではないかという気さえする。
護る方となる魔族は場数を踏んだ生き残りではない限り、攻める方が砦の構造を熟知している有様ともいえる。

「第十八師団、ね。今は兎も角最前線だものねぇ。特にここは命を捨てたい馬鹿以外はお勧めしないわよ。

 ……やめてやめて。それあんまり聞きたくないし考えたくもない最悪のパターンだわ」

あそこは確か、と。記憶を漁る。
式典以外でなければそれこそ統率者と顔合わせすることはないが、他勢力は頭に入れておかねば始まらない。
有難う、と。元気そうというコトバに笑うも、あまり考えたくない言葉に天を仰いで、頭を抱える仕草を見せよう。
大の大人がやるようなものではないが、つくづくそれを考えずにはいられない事ばかりだ。

「待機中の竜騎士以外は皆連れてきたわ。ワイバーンじゃないドラゴンを間近にする機会は、そうそう無いかもね。
 
 傭兵に下げ渡すのはたまにあるけど、捕虜をどうこう、というのはあんまり好きじゃないの。
 取っておけば、どういう風に使えるかを知っているから取ってるだけ。

 勲功の類はないよりも、少しはある方が帰参する時にいいでしょ?」

補給の部隊が運んできた飼料――肉の塊を喰らう竜も居れば、鱗にこびりついた血糊を剥がしてもらって喜ぶ竜も居る。
それぞれも並ではない、年月を経て力を得た竜達だ。彼らに伍するよう鍛えた騎士もまた、精鋭である。
白いのは私のよ、と言いつつ、手土産の扱いに肩を竦める。
生きて魔族の国に帰さないつもりだから、取れるものは取っている。それだけのスタンスだ。

ルイン > 元々荒事はほとんど経験はなく、冒険者としての活動も採取がメイン。
そして騎士団に所属したとはいえ後方部隊なので前線に出ることもなく城攻めの知識はなく。

それだけにこうして魔族の占拠していた砦の後始末の光景は珍しい。
きっちりと見て回ってもいないので本当の損害は判らないが見た感じそれも少なく見えていて危機感が少ないのが玉に瑕。

「後方部隊ですから前線には来ませんよ。でも手隙だったので伝令に駆り出されまして…私も命は惜しいんですよ。
王都に戻ったら早く交代の部隊をお願いしてみます」

後方部隊ですと特に恥じることもなく言い切り。
自分の言葉に天を仰いで頭を抱える姿に出来るだけ早くと…それしか言えず。
ただ問題は自分のような下っ端の言葉はまず通らない悲しい話。

「ほとんどないと思いますよ。私もこんな光景は初めて見ますから。
この光景だけでも来てよかったなって思っちゃいますよ。

捕虜はなんにでも使えますからね。
確かにそうですけど……では、ご厚意に甘えますね」

おっかなくも見える竜の可愛く見える姿、触ってみたいと思うのをこらえ。
一番立派に見えた白い竜がと聞くと納得してしまい。
そして少し考えて手土産をありがたく受け取ることに決めて。

アマーリエ > 確か、第十八師団は当第十師団と同じく壊滅的被害を過去に被っている師団では無かったか。
此方の師団については、立て直したが同様であるということは聞かない。
だがどちらかと言えば指標とすべき貴族たちの噂話ではなく、市井の評を聞くに悪評の類は耳にしない。

損耗前提で日々猛訓練を行う体質の所とは、毛色が違うということだろう。
であれば、こんな最前線に進出するのは物見遊山でもない限り、早々ないのだろう。
目ぼしい危険があれば、昼間だ。空も晴れている。直ぐに目につく。

「災難だったわね。不意の対処が遅れるのは大概、人が足りないからそうなるのよ。
 こういう時は大概手土産を持たせると、思ったより手が早く回ったりするから……解せないわね、全く」

言い切るわね、と。肩を竦めては唇を枉げる。
伝令である以上は大部隊を動かせる権限等がないのは、よく分かっている。かの師団の編成としても難しいだろう。
お陰で、モノ好きな貴族を動かすための鼻薬のキかせ方を心得てしまう。
美少年趣味はなくとも、異種族好みで金銭と権力がある貴族であれば、考えていないから動かしようもあるのだ。

「公開演習でもなければ、ねぇ。それでもそう間近じゃないか。
 
 一応目録は作らせてるから、一緒に持って行って。
 私で「始末」したいようなのは特に居なかったから、事と次第によっては処分するということも言い添えてね」

何か触り気な風情に口元を押さえて笑いつつ、続く言葉には笑みを交えずに言い含めるように告げよう。
守れないと判断した際は遠慮なく退く。その際、情報を持っている者は生かしておかない。

とりあえず、御茶でも呑んでいく?と。中庭内に建てられた天幕から上がる匂いを嗅ぎつつ、問おうか。

ルイン > 老人や子供、負傷兵で増員された18師団は王都防衛という名目で後方任務つく師団。
精鋭は他の師団に引き抜かれ前線部隊になれない構成とされている。
なので訓練よりも後方活動における訓練しか行っていなく自分も前線で戦えるような技量や装備も持っていない。

そんな自分から見れば屈強と言える第10師団の騎士は凄いとしか言えなく。
それと同時に後方部隊が何をしているという視線も受けはするがそれは全く気にせず。
もし危険があれば最悪は飛んで逃げようと考えていて。

「災難ですけど危険手当が出ますから…伝令ぐらいはきっちりと揃えてほしいところです。
やっぱり利のある相手は優先されるって事ですよね…人間って不思議ですよ」

ついポロリと零れてしまう本音。
安全が欲しいなら最優先ですることも手土産がないと後に回すのが理解できないと。
そして仮に自分がいる師団が動いたとして援軍になるとは思えず、既読の動かし方を心得ている姿に関心してしまう。

「私はその公開演習の予算申請なら処理したことならありますよ?
はい、必ず届けます。
あはは、忘れずに言い添えておきますね。
あ…でも……処分するなら可愛い子貰ってもいいです?」

判っていますと笑顔で返すが内容を理解していないわけではない。
内容を理解したうえで笑顔を見せ、処分なら一人とおねだりも忘れず。

そしてお茶に誘われると喜んでと頷いて。

アマーリエ > 異邦の言葉では、餅は餅屋という。つまりは専門が違う。
なにより、この第十師団は王都に進入しての作戦行動の許可は出るまい。
竜を従えているという、目に分かる以上の猛威というのは、往々にしてその爪牙が統制を失うのを恐れられる。
是非もない。竜騎士達が従え、あるいは心を通わせている竜のうちの数体は、地方で害を成していたこともあるものだ。

何もかもを請け負うことはしないし、できない。
そも、〇〇だからあれは駄目だ、見劣りすると見誤るものは特に前線指揮を行うものから弾いている。

「魔術でどうにかなるから、と軽んじる風潮もあるかもしれないわね。
 勘違いも甚だしいわ。一番確実なのは人を遣ることなのにね。

 解せないなら分かっている限りでやりようはあるわ。
 砦を抜かれる、先に行かれることがあれば、他の師団だって動く。
 ようは他が持ってないものを押さえている、と。ちらつかせてあげればいいのよ」

自分が意味を見出さないものの価値を弁えてる者を、どう動かすか。結局それだ。
砦を突破させる非常事態は、それこそ国の一大事だろう。
非常事態に関して切って捨てるものを拾いたい、得たいものを動かし、代価を吐き出させるのだ。
それで、傭兵などの追加兵力を賄える。

「あら、帳簿の扱いも得意なの? だとしたら、あそこも良いものを拾ったかもしれないわね。
 
 是非お願いね。後々のことを考えたら、慈悲を下す方がまだ優しいかもしれないし。
 ――いいわよ。一人で良いなら、見繕って持って行っていいわ」

数字を扱える、詳しいものは何かと使い出がある。
魔力補給源の予備として徴用されたのだろう。砦を奪還時、状況をよく分かっていないモノを捕虜にしている。
思考探査の尋問も終えている。問題はあるまい。

そう判断しつつ、こっちよと言い添えて天幕に向かおう。
其処には魔導鉱石を燃料にした炉を据えた簡易厨房を据えている。砦内の厨房は清掃、消毒を終えていないためまだ使えない。
運び込ませた水を沸騰させて清めた湯や煮炊きの類は、このようにして賄う必要がある。

ルイン > 時折に街中の治安活動に竜などを使えないかと思うことがある。
しかし逆に大騒ぎになってしまうと判るので提案はさすがにしない。
ただ時々に竜という強大な力があればもっと平和じゃないかと思うこともあり。
どうして強力な師団が全てを請け負わないのか、その辺が実はあまり理解していなく。

「魔術でできる事なんてちょっとの事ですよね。
人で遣るのが一番の近道で確実ですよ。

そういうものなんですね。勉強になります」

話を聞けばわかっていなかったこと、疑問が解消されていき。
国の一大事となればそれ相応の手段を用いるのだろうと。

「得意ですよ。最近は各師団の補充品の確認もしてたりしてますから。
そうですね…その方がいい時もありますね。
本当ですか、ありがとうございます!」

何気に補充品も確認していると口にしてしまい。
捕虜となっている中には可愛いと言える姿もちらほら。
持って行っていいと言われれば瞳を輝かせる姿は不法侵入者の頃と変わっていなく。

誘われ天幕についてはいれば簡易厨房が見え。
どうして砦の物を使わないのだろうと考えるも直ぐにその理由を察し。
天幕内を見回して椅子を見つけると、どうぞと側に寄せて。

アマーリエ > 使えそうな別口の知り合いがない訳ではないが、目に見える脅威がうろつくというのは、何かと差し障りがある。
政治的な判断も市井の感覚の問題として、容易にできないものだ。
王家に翻意あり、と。処断されてしまうのも厄介だ。
別段やっても良いとしても、そうすることで我が身一つだけでは収まらない。
金と権力だけ余分に持っている者の御機嫌伺いとは、つくづく面倒なものだ。

「何より、妨害をされた日には目も当てられないもの。
 一番確実なのは、人を出すこと。それに尽きるわ。

 潔くない人の汚さを利用するとはいえ、あんまり好きじゃないケドね。こういうのは」

えてして、志高いものも斯様にして貴族の扱いに長けて塗れてしまう。
哂えないわねと、嘯かずにはいられない。
わざと曖昧にして気が向かないコトには人を出さない、要請に応えない時もあるが、手段を択べない時はそうする。

「じゃぁ、知っているかぎりで色々聞けそうね。
 手土産の分だけちょーっと、イイ話を聞かせてもらうわ。こういう話って色々と馬鹿にならないのよね」

補充品も、と聞けば、猫が獲物を見つけたときのように面白げに目を光らせる。
ちょっとしたギブアンドテイクという訳でもないが、引き換えにするならきっと、差し支えない限りで聞けるだろう。
向こうにもむこうなりの機密があるだろう。抵触しない限りで聞ければいい。

第十師団管轄で抑えている茶葉の類は知っているかもしれないが、粗末ではない。
店でも遣るならば出せるくらいの質だ。天幕に置かれた椅子を引いてもらえれば、有難う、と言いつつ座そう。
あとは手を叩き、兵を呼んでちょっとした茶会に勤しむとしよう。

希望通りの補充があとどれくらいだけで届くか、あとは何事もないことも願いつつ――。

ルイン > 大本は人は試練で強くなると天使時代に考えていたので脅威がうろつけば逞しく規律正しくなる。
そんな考えが未だに多少残っており、安全になるならば多少の危険は許容範囲、後の責任までは考えてしなかったりし。
金と権力に無縁なだけに彼女の面倒と思う事に縁がなく。

「妨害は……ありますよね、私も時々それで面倒ごとを持ちこまれますから。
やっぱり誰かが確認するのが一番ですよね。

私はそういうのは苦手です。何度か騙されちゃってますから」

人を見る目はあるつもりだが駆け引きは人並み。
貴族の扱いなどさっぱりで出来て冒険者の一部程度だけ。
人の利用もあまり得意ではないと…。

「言えない事以外だけですよ?
でも……またお土産を頂けるならちょっとだけ奮発しちゃいます」

猫が獲物を見つけたような目をされるとしまったという顔。
しかし知り合いだし言えない事以外ならと、お土産の事もあり了承して。

第十師団が抑えているお茶にも興味はあり味わえると思えば自然な笑顔。
彼女が椅子に座れば別の椅子に座ってちょっとしたお茶会に。

そこでつい何度か口を滑らせ補充品の詳細やいつ届くかを口にしたりとしてしまって。

ご案内:「タナール砦」からルインさんが去りました。
アマーリエ > 「自分達が出来ることを向こうが、敵が出来ない道理が無いもの。
 出来ると分かったら、対処をされるのは当然よね。

 ……――そのための対策と訓練は積んでいるけどね?」

予算繰りのためのあいさつ回りなど、辺境とはいえ地方領主の子である身分以上に面倒事に鍛えられた。
権力と金は切っても切れない。無ければ頭を下げて掻き集めるしかないのだ。
おかげで憂さ晴らしの種に困る。自分好みの女を捕虜に出来るのであれば良いのだが、これが難しい。

魔術による通信、念話を傍受されずとも妨害されるのはざらだ。
手信号での意思疎通にも限界がある。あとは各個の判断と、想定を踏まえての訓練の反復。
それが数を抑えた、押さえざるを得ないからとはいえ、精鋭としての強みである。

「ありがと。勿論、それで良いわ。
 聞ける範囲で聞いたものをどうするかは、あとは私たち次第だから」

こうしたお茶の類は将だけではない。第十師団麾下の兵たちにも等しく出している。
日々の訓練と戦場の厳しさは、何もないままでは乗り切れない。
兵を養うためにも、軍費に割く糧秣類の割合は大きい。

補充品の具合など、興味深い話を聞きつつ、茶を飲み交わし――。

ご案内:「タナール砦」からアマーリエさんが去りました。