2020/09/15 のログ
ご案内:「タナール砦」にクルチザンヌさんが現れました。
■クルチザンヌ > その日、タナール砦の真夜中
月明りで砦の輪郭が明暗でくっきりと浮かび上がる日だった
火明かりすら必要としないような、月の触れる場所
逆に火明かりが無ければ奥が見えないかのような、砦の内部
然し其処は霧が深く漂う場所
なぜこうなってしまっているのか わかる者は今はいない
奪い、奪われる場所に漂う霧は砦の内部を覆い、思うが儘に漂っているかのようにすら思える
悲鳴も憐憫もなく、気が付けば砦の中は火明かりを残し、何もいない
其の漂う霧があるのみ
時折小さな笑みが、天井や、陰りから聞こえるのみなのだ
■クルチザンヌ > 誰かが招いてしまったのか、それとも離れた側にいた兵の一人を魅了したのか
招いてしまえば後の祭り
不屈な勇者を悦び、悲嘆にくれて自害する逃走者に苦み走る顔を浮かべる
そんな時間があったかもしれない
然し今は、この月明りをたっぷりと浴びた砦の中で、形を成さず、漂い、思うが儘に揺蕩う
外に出れば月明りが気持ちよく、中で漂えば安寧の闇
下手な屋敷よりもこの闘争と血の匂いが取れない場所は夜族のような自分勝手な生き物には、相性が良い
そして誰もいないと知れてしまえば、砦に最初に入り込む猛者などいるものか
奪うなら誰かがいる 誰かがいるなら奪われる
どちらでもない空席という未知の恐怖を、幸運と捉えるか、疑心となるか
―――嗚呼でもどちらであろうと……
―――招かれていない客がきたら、面白いと思うわ……。
■クルチザンヌ > やがて夜が明けるまでの何が起こったかを知るのは砦にいた者のみ
霧は収束され、月が消える前に空高く蝙蝠の振れが横切っていく
日向の中で砦に残されるよりも、別の陰りの中でくつろぐか
それとも日の昇る間に、どこかの陰りで眠りにつくのかもしれない
残るのは空席となった砦のみ。
ご案内:「タナール砦」からクルチザンヌさんが去りました。