2020/07/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にイリシアさんが現れました。
■イリシア > (人間の国と魔族の国を分け隔てる一つの壁
タナール砦。
ここは国によって作られた騎士団、またはならず者たちによって作られた防衛隊と魔族より攻め入る軍隊が日々戦う戦場であった。
今日もまた、そこでは一つ戦闘が起こっていた。)
「---…うらぁ!!」
(自分の身の丈と同じ大きさの大鉈を振り回す一人の魔族。
毛皮を服にして着用しており、頭からは大きな牛の角を生やした女。
ミノタウロスの血を引いているその女の名はイリシア。
今、複数の騎士に囲まれるも余裕そうな顔をしながら手に持つ鉈を眺める。)
「ふーむ…良い数だねぇ?
これだけ居れば、武器の試し切りに丁度良いって話だよ…。」
(女は鍛冶屋を営んでおり、自分の持つその武器が戦闘に使えるかどうかの確認のため、あえてここにやってきた。
案の定、侵入を防ぐための騎士団と遭遇したことにより、丁度良いテストが出来たのでた。)
「ほら、あんたら!かかって来な…。
本気で来ないと、死んじまうよ?」
(余裕そうにしながらも再度鉈を構えるミノタウロスの女。
緊迫した騎士たちとは打って変わってかなり楽しそうにする、女は一体どれだけ暴れるのだろうか。)
ご案内:「タナール砦」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 「……うわぁ、これはまた……」
冒険者ギルドからの緊急依頼で、男はタナール砦に来ていた。
この場所は、男にとっても思い出の場所ではあるのだが。
今現在、男の目の前ではトラブルが発生しており。
「……しゃーない。お仕事お仕事、っと」
騎士たちの中にまぎれていた男は、ため息を吐きつつ、前へと出る。
明らかに萎縮してしまっている騎士たちの肩に手を置き。
ちょっと失礼、などと言いながら。
「はいはい、どいたどいた。
ど~見てもアンタらじゃ勝てそうにないからね。
ここは冒険者にお任せあれ、ってね」
実に気楽な様子で最前線に出ると。
男は、騎士たちにそう言い、下がることを命じる。
最初、騎士たちは面子もあり、難色を示していたが。
冒険者を犠牲に状況を変えられるのなら、と考えたのだろう。
程なくして、一度撤退していく。
「……さて、と。
……アンタ、相当に強いねぇ。
あのままだったら、あの騎士達、全滅してたんじゃないかな」
目の前に立つ一人の女性に、男は笑顔で声をかけ。
懐から取り出した細巻に火をつけ、ぷはぁ、と煙を吐く。
見た目は冴えない中年執事、という様子だが。
男は全く萎縮せず、相手をまっすぐに見ていた。
■イリシア > 「そらよ!!」
(無理やりにでも攻め、数で押しつぶそうとする騎士たちだが、そんなものはすぐさま身をかわして、大振りに鉈を振り回し、吹き飛ばす。
甲冑が歪み、盾も意味を無くすほどにボロボロになるような一撃であった。)
「まーったく、人間たちの武器は脆いねぇ…。
アタシの一撃喰らっただけでお釈迦なんて…意味ないよぉ?」
(見下すかのような挑発する口調。
ニヤリといたって変わらない余裕な顔をしながらも様子を見てるとひとりの男と対面することになった。)
「おや?新手の登場かい?
他の騎士団の様子から見て…どうやら、また別の輩みたいじゃないか…。
しかし、あんた…アタシと対面するにしたって、その軽装…魔術師かなんかの類かい?」
(余裕そうに細巻を吸う男を相手に女は表情を変えることはなかった。
騎士たちを指示して退かせ、前に出て来るこの男、只者ではないのは分かっていた。
すぐさま動けるようにはしているが、戦闘意志は今も続いている。)
■セイン=ディバン > 「……うっわぁぁぁぁ……」
騎士たちをかき分ける途中、女性の声が聞こえ。
た、と同時に、騎士が何人か空を舞った。
死んではいないかもしれない。だが、良くて重度の骨折。
悪ければ寝たきり生活かもしれない。
「……武器とか防具の話じゃなくって。
そちらさんの腕力の問題だと思うけれどもね」
最前線にたどり着く直前、聞こえた女性の声に。
男は、ぼそ、と呟きつつ、やれやれ、とため息。
これは、相当報酬を割り増ししてもらわなければやっていられないかもしれない。
「まぁそんなところ。
新手、っていうか。さっきから、アンタの戦いっぷりは見させてもらってたけどね。
いんや。冒険者だよ。魔術はちょっとしか使えない。
この服装は……まぁ、趣味と実益を兼ねてる、ってところでね」
相手と会話している間に、騎士たちの撤退が完了したのを確認し。
男は、深く息を吸い、大きく煙を吐き出した。
「で、だ。アンタ、見たところ一人だ。
おまけにどこを見ても意匠も見当たらない、ってことは。
別にどっかの魔王軍所属とかじゃないだろ?
ここは、オレと一騎打ちってことで。
あのヘタレ騎士どもは見逃してくれないか?」
にへら、と笑いつつ、男はそんな提案をする。
男、いまだ武器も取り出さず、構えも取らず。
しかして、相手に対する恐怖は見えず。
どうかな~? なんて、軽薄な笑顔と声でうかがっていた。
■イリシア > 「ああ、そうかい。
まぁ、どういう装備であろとも…出て来るには、それなりの覚悟があるってことで、アタシは受け捉えているからねぇ?」
(どうであれ、自分にも勝機が見える相手に足しては前に出て来るのがこの世界に生きる者の考え。
だからこそ、どういう装備であっても、前に出る事には、少しでも勝てる自信があると言う事だ。)
「ああ、そうさ。
アタシは魔族の国で鍛冶屋をしていてねぇ?丁度、愛用の鉈が出来たもんだから、試しにと思ってここに来たってわけよ。
あんたら人間からすれば、大分迷惑な話だろうとは思うけどさ?」
(反省の色は無い。
相手の迷惑になることは分かっていたが、自分の目的のために出会ってしまった運命。
そこは受け入れろと、かなり無理やりな考えだ。)
「…はっはっはっはっはっは!!
あんたとアタシが?まさか、趣味だけの服装のあんたにそんなことを言われるとは…一興だよ!
これは酒のつまみにでも思い出してやろうかね?」
(大口を開けて笑う女。
少なからずとも武器も構えない相手が嘗めた口を聞かせるのは滑稽に思えて来る。
それを面白く思わないはずがない。)
「ああ、いいさ。
そこの坊や共の武具は分かった…今度は…あんたの番だよ!」
(そう言うと、立っていた地面を掘りおこす勢いの一歩を踏み出し、男の前へと移動する。
すでに大鉈を構えており、その軌道が丁度真っ二つにするかのような軌道であった。
人の肉を軽々し斬れるであろうその大鉈を男に向けて振ろうとしていた。)
■セイン=ディバン > 「そこのところはご心配無用。
戦場に出て痛い目見てから『装備が悪かった』なんて言わないさ」
まぁ、普通に考えればそんな反応だよなぁ、と男は思いつつ。
両手を広げてから、胸元へと手を添え、一礼をしてみせる。
手加減はいらない、という意思表示。
「へぇ……鍛冶屋……鍛冶屋?
まじか。こんなところで鍛冶屋に出会えるとは。
……あぁ、いや。それは人間サイドもお互い様だと思うし」
戦場に立つ以上、どんな目に遭っても文句は言えない。
敵を倒すのに、侵攻も防衛も、罪の重さに違いはないのだ。
手に武器を持った以上は、傷つく覚悟が必要だ、と男は考える。
「わぁ、笑われた。
そう? 一興? まぁ、笑ってもらえたのならいいんだけど。
……アンタ、酒もイケる口かぁ」
呵呵大笑、という笑い方に、男は逆に苦笑する。
コレに関しても、準備万端、という装備の相手から見れば。
吹けば飛ぶような装備なのだから、見下されても仕方ないかな、とも思うが。
「ほいほい。じゃあ殺り合おうかねぇ。
……っとととっ!」
細巻をぽ~い、と投げ捨てると同時に。
相手が踏み込んでくるのが見えた。
実直なまでの真っ向勝負。分かりやすい気質だな、と男は思いつつ。
口内で呪文を唱える。
『身体能力強化……第二段階!』
男の習得している【身体強化・大】の呪文により、男の身体能力は大幅に強化される。
増大した筋力でもって地を蹴り、相手の一撃を回避した男は。
そのまま相手の周りを旋回しつつ、懐から愛用の銃を取り出す。
間髪いれず、リボルバーの弾丸六発を一気に連射し。
相手を制圧しようとするが。
■イリシア > 「おらぁ!!」
(男へと向けて降った鉈は外れた。
当然だと思える結果だ。この程度でやられては興ざめであるからな。)
「ハッ!まぁ、この程度は序の口だな?
普通なら、ビビッて足がすくんで動けやしないし…。」
(自分よりも大きく機動力のある相手に足しては足がすくむのが人間の特質。
その瞬間は何度も見たことがった。
それ故に、そうでない相手と対戦するのであるならば、その程度無ければと思った。)
「ほぅ、身体強化かい?」
(自分の能力を高める魔術を使用する男を見てはなるほどと言う関心の目。
そうなれば、おそらく避けることに専念する事だろと読んだ。
その後、懐から取り出した拳銃の弾がこちらに飛んでくる。
距離としては当たる距離だが、自分と男の間に手を出し、飛んでくる弾丸を取っては距離を離す。)
「…へぇ、飛び道具かい?
でも、こんな玩具じゃ、アタシは倒せない、よ!」
(距離を取るもまた近づき、同じく上からの鉈の斬りかと思いきや、鉈を軸にして男を足払いにしようとする。
回避する足を無くせば、手段が限られると思い、そのまますぐに体勢を整えて、踵落としを男の腹に向けてふりおろそとする。)
■セイン=ディバン > 「うぉぉっ、まるで暴風だなぁ!」
男としては、余裕を持ってかわしたつもりだったが。
実際は、かなりギリギリと言える距離感だった。
もしも身体能力を強化していなかったら、直撃だったかもしれない。
「まぁ、ね。オレが使える数少ない魔術の一つさ!」
早速タネを見破られるが、男はそれを不利になった、とは思わない。
たとえば、攻撃系の魔術なら対策を打たれるかもしれないが。
身体強化はあくまでも男自身の強化の術。
相手が魔術解除を出来ない限り、男の優位は崩れない……ハズだった。
「……はいいいいいいいっ!?
ふ、フツー銃弾を掴み取るかぁ!?」
目の前で、放った弾丸がキャッチされて、防がれた。
さすがに、素手での防御はされたことがなかったので、男は驚愕してしまうが。
そのスキを突かれ、再度肉薄されれば。
「ぐっ……!
あぶ、あぶ、あぶねぇっ!」
鉈での攻撃に備えていれば、足払いを見事に喰らい、男は地面に転がることになるが。
強化した反応速度と筋力により、踵落としだけは何とか回避する。
しかし、足払いの威力は凄まじく。
強化したはずの足は、ずきずきと痛みを訴えていた。
「ったく、メチャクチャだな……!
なら、これでどうだ!」
このままでは分が悪いと踏んだ男は、更に懐からアイテムを取り出し、地面へと叩きつける。
瞬間、黒煙が一気に広がり、男は煙の中へと身を隠す。
煙幕により相手の視界を奪い、奇襲する作戦であるが。
さて、相手に通用するか否か。
■イリシア > 「ハッ!なめんじゃないよ!
アタシはこう見えて、何年も武器調整してんだ!飛ぶ道具相手なんざ、もう、目が慣れたっての!」
(魔族の森でもそういった類の行動をする生物も居た。
そのため、目がすでに慣れており、軌道を読み取っては対応することができる様になっていた。)
「ッ!やっぱし、その能力強化じゃ避けるのに精いっぱいって所だね!
それじゃ、いつまでたってもアタシを倒せないよ!」
(踵落としを避けれ、舌打ちをするも避ける行動だけであり、身体強化の面を考えて近接を行わなければ勝率は無いと読み取り挑発した。
その後、また道具を使い黒煙が舞う。
毒ガスか何かの類かと思い、口と鼻を隠して息を止めるも、ただの目くらましの様だ。)
「チッ、姑息な手を使って…邪魔くさいんだよ!」
(鉈を頭の上で平行にするとそのまま両手で回す。
初めは遅くとも、次第に速くなり、イリシアの周りに竜巻が起きては黒煙を吹き払い、視界を良好にしようとする。)
■セイン=ディバン > 「それにしたって、銃弾相手に怯まないのはおかしいだろ!?」
いくらなんでも、まったく臆さずに防御するのは異常と言えた。
それは即ち、相手が相当以上に戦い慣れしていることの証拠でもあり。
「言われずとも! それくらい分かってるっての!」
ごろんごろんと地面を転がり、距離を取り。
男はそう吐き捨てると、煙幕を炸裂させる。
そのまま、煙の中に潜み……。
『身体能力強化……第三段階!』
更に身体能力強化の呪文を重ねがけし、強化率を跳ね上げる。
これで翌日以降は筋肉痛確定だが、今はそんなことを気にしている状況でもない。
相手が鉈を振り回し、煙を吹き飛ばそうとしているのを見て。
男は、一気に行動を開始する。
「だぁっ、っらああああああああああっっっ!」
気合を入れながら、相手に向かい、突撃する男。
そのまま、全脚力でもって相手にタックルをかます。
狙いは相手の腹部。両腕を広げ、相手を転ばせようと。
自身の体重すべてを乗せて突撃する男。
■イリシア > 「…そこか!!」
(魔術詠唱を聞き、相手の居場所を見つけるも遅かった。
相手は既に準備の整っている体勢であり、すぐさま腹部を掴まれてタックルを仕掛けられる。)
「チッ!この力…さらに強くしやがったか…。」
(自分も倒れまいと足を地面に接して踏ん張るも押され続ける。
砂埃が立つ中、タックルのせいで大鉈を落としてしまうが、一度力を入れてその場で踏みとどまる。)
「…武器を落としまったよ…。
丁度良い…あんたとアタシとの…力比べだよ!」
(抱き着く男の手を払って手を掴む。
その後は純粋な力比べ。
ミノタウロスの血統らしく、力強い握力と押しが男の腕にかかり、こちらが優勢であるならば、関節を曲げ、腕二本を引きちぎらんとばかりに関節を折ろうとする。)
■セイン=ディバン > 「……気づくかっ!」
詠唱はかなり小声で行ったにも関わらず。
位置に気づかれた男は、一瞬突撃を躊躇するが。
この機を逃してはマズいと判断し、回避よりも攻撃を優先する。
「ぐ、お、おぉぉぉぉっ……!」
常人なら吹き飛び、マウントポジションが確定する勢いのタックル。
だが、相手はそれをこらえて見せる。
鉈こそ落とさせたものの、見事に耐えられる状況。
男は、更に力を込めるが、声はかなりキツそうだ。
「じょ、上……等……!」
手を払われ、力比べの体勢になる。
男自身、三倍強化の時の能力には自信があったが。
相手の力はそれをはるかに上回り、男の腕が、ぎちぎちと不快な音を立て始める。
「がぁ、あ、あぁあああああああああぁぁぁぁっ!
……し……『身体能力強化……第、四、段階ぃぃぃぃぃ!』」
このままでは腕が千切れる。
そう判断し、男は限界を超えた魔術の重ねがけを発動する。
さすがに、三重発動はやったことすらない。
心臓がバクバクと破裂しそうになりつつも。
男は、相手の手を押し返していくのだが……。
「……くっ……!」
そこが、限界だった。相手のことを、押し切るまではいかない。
せいぜい、五分の状況に持ってくのが、本当に精一杯。
男の呼吸は乱れ、汗が滝のように流れていく。
もしもこのまま、相手が時間を稼げば。
魔術の効果切れがじきに訪れ、男の敗北は確定するだろう。
■イリシア > 「ほらほらどうしたんだい!?武器を無くしたんだ、体を強化したあんたとは互角じゃないのかい!?」
(武器を持って人はやっと上に立つことができる。
そのため、無くなった今は相手とほぼ互角と言えるはずだ。
だが、様子を見るに相手とは互角の力加減ではなかったようだ。
第四段階にしてはいるものの、耐えるのみの相手を見てはフッと小さく笑う)
「良い根性だねぇ?武器もなしにここまで生きたんだ、相当やるみたいだ。
だから、終わりだよ…。」
(そう言うと、男の手を離して前蹴りを放つ。
みぞおちの所ジャストに大きな足の一撃を放とうとしたのだった。)
■セイン=ディバン > 「い、いや、アンタ、分かってて言ってる、だろ……!」
男はもう限界マックス。
対する相手はまだ余力アリ。
そう、この時点で、決着は着いていたのである。
「……くっ……なっ!?
ガフッ……!」
完全に油断していたタイミングでの蹴りの一撃。
男も、慌てて後方に跳躍するものの、遅かった。
鳩尾に一撃。イイのをもらってしまい、男の体が思いっきり吹き飛ぶ。
再度、ごろごろと地面を転がり、止まったときには。
「……ゲハッ、カハッ、グッ……!」
男の身体強化は解除されており。
男は、痛みによって、咳き込み、体を折り曲げていた。
■イリシア > 「フッ、あんたの様子からして…アタシとの力比べには耐え切れなかったから…蹴らせてもらったよ。」
(勝負は分かっていたからこそ、不意打ちの反応を知りたく、前蹴りを行った。
結果的にはもろぐらいして、倒れるだけであった。
落とした大鉈を回収して倒れた男に近寄ると、その様子を確認するべくその場にしゃがんだ。)
「どうやら、あんたの魔術はもう消えちまったみたいだね?
こうなりゃ、あんたはいよいよただの人って所みたいだねぇ?」
(クツクツと笑うイリシア。
ここまで耐えたのも中々だと思い、男の戦闘力には一つ目を付けていた。)
■セイン=ディバン > 「ゲフォッ、グ、クッ……!」
何とか呼吸を整えようとする男であったが。
無茶な魔術の多重使用で、体の回復力が衰えてしまっている。
少しずつ、本当に少しずつ息が整うものの。
すでに相手は、男の傍に、鉈を持ったまま近づいていた。
「……は、ぁ、あっ……。
あぁ、まぁ……そういう、こと、だなぁ……」
相手の指摘に、男は苦笑しつつ。
一度、大きく息を吐く。
「……まぁ。騎士どもの撤退も完了したし。
オレとしては、任務成功、って所だし。
そう、悪い結果でも、ない」
負け惜しみに聞こえるだろうが、実際のところ。
男が受けた依頼は、『騎士団の救援』でしかない。
この相手を倒したり、殺したりする必要などなかったので。
男としては、十分な結果と言えた。
「一つ、言わせてもらえば。
オレぁ、アンタのことを殺す気はなかったし。
殺されるつもりも、ないんだけどね。
……って、こんな姿勢で言っても、説得力ねーか」
ごろん、と大の字になりながら。
男はそう言い、相手を見る。
■イリシア > 「なんだ、あんたの狙いはアタシの首かと思ったら…そうじゃないのかい…。」
(騎士団とは別の人間なのはわかっていたが、しかし、狙いは同じではないことには意外であった。)
「ハッ!アタシを殺す気が無いなら、アタシにはいつまでたっても勝てやしないねぇ?
アタシに勝ちたいなら、死ぬ気でやらないと…。
それに、アタシだって、何も殺すことが目的じゃない、あくまで武器の調整さね…。」
(その場で胡坐を掻き、鉈を指ではじいて強度を確認する。
人間を殺すことはただの武器の調整。
殺さなくていいような状況になれば、そうすることはないのだから。)
「ま、あんたをこのまんまにしてもアタシはどーでもいいんだけどね?
けど、久しぶりに素手を使ったからな…ちょっとは楽しめたさね…。」
(一応、作業の中で行ったことのため、こういう時に楽しさを思い浮かべると、ついつい気持ちがそちらに行ってしまう。
それ故に、鉈の出来栄えの確認をする気持ちはなくなっていた。)
■セイン=ディバン > 「冗談……。極悪人でもない相手の首なんて、狙わないっつー」
そもそも、男は冒険者。
騎士団とは関係がないし、したいことをし、したくないことはしない人間だ。
「……つぅっ、手厳しいなぁ……。
だって、アンタを殺す理由がないし。
アンタには、二、三、頼みたいこともあるしな……」
ちょっとずつ体力が戻ってきているものの。
まだまだ、全快ではない状態に、呻く男。
近くに座る相手を見ながら、男は、ずりりりり、と。
弱弱しく上半身を起こし。
「……ちょっとは、か。それは、悔しいなぁ。
少しは自信があったんだが……」
しょぼーん、と。落ち込むようなそぶりを見せる男。
そのまま、相手の武器を見る。
大きく、大雑把な武器だ、と言うことも出来るかもしれない。
だが、男は、その大きな鉈の全容に。
どこか、相手の生き様のようなものを感じ取ることが出来た。
いい武器だな、と思ってしまい。男は、つい笑顔を零してしまう。
■イリシア > 「はっはっは!
人間共はすぐ異形を見れば、やれ狩りだ、やれ排除だと悪に見るけど…あんたは違うみたいだな?」
(偏見的思考を持っていたために、全く違うことを思う男相手大笑い。
それでも、その方がわかりやすく、用事も収まるし良いとは思った。)
「自信を持てるぐらいに褒められたきゃ、アタシの首にでも傷を杖けて見た。
そうしたら、あんたの力量も良いと思ってやってもいいさね。」
(ニヤリと笑う女。
落ち込む素振りにはどうにも笑いを起こされてしまう。
期待をしたいのだろうと思うと、それはそれで素直だなと思い、その素直さに一興思ったからだ。)
「それで…アタシに二、三、頼みがあるって…なにさね?
初めて会って、拳を交えたけど…アタシは気にしないけど。」
(頼みたい事があると言う男相手に片眉を上げる。
初めて会った相手に頼み事、それにも興味があった。)
■セイン=ディバン > 「……ま、こう見えても。
オレにも色々と事情があるもんで」
普通の人間なら、魔族には敵対するのだろうが。
この男の場合、単純にそうはならない。
それもこれも、事情があってのものなのだが。
「首に、ねぇ……。
なんていうか、めちゃくちゃ難易度高いな、それは」
しれっ、と相手は言うが。
男の場合、手加減が苦手なタチなので。
大抵は、今回のように普通に負けるか。
相手の命を奪うか、になってしまうので。
その辺り、難しい。
「あぁ、うん。そうね。
まず一つ。アンタ、義手、っていうか。
この場合、義腕とでもいうのかな。
そういうのって作れないかな?」
相手に促され、男はそう切り出す。
当然だが、男の両腕は健在。
だが、男の表情は真剣そのもので。
「あともう一つ。ある意味ではコッチのほうが大事なんだけど。
……アンタ、オレに抱かれてみないか?」
そのまま、まさに真剣、という表情のままで。
男は、そんなことを口にした。