2020/07/10 のログ
■シュティレ > 暫くして、彼らは―――魔族の軍は砦に到着しました、そして、始まるのは蹂躙劇といって良いのでしょう、弱々しい、ヒトの兵士達、熟練した騎士ではなく、それこそ適当に集められただけの彼らは、彼らなりに必死で戦っているのが見えます。
弓で射かけてみたり、槍で突いてみたり、しかしそれに統率はなく、指揮官すらいないのが判ってしまいます、それを、私はこの秘密の窓で眺め、唯々、紅茶を啜るだけです。
「―――あら。」
思った以上に、紅茶の味が良く、目を細めます、ここで死んだ彼―――今はスケルトンですが、もしかしたら、彼は紅茶などを入れたことがあったのでしょうか?
素敵な紅茶、私は、紅茶を入れろという命令だけで、手間などはあまり気にしておりませんでした、骨になっても技術は残るのでしょうか。
私は、何も言わずにただただ、立ち尽くすスケルトン―――骨の彼の方を眺めます、相変わらず、何も言いません。何か言うように命令もしませんし、そもそも、喋る器官がありません。
なので、直ぐに私は彼への興味を失い、戦場へと、騒々しいだけのそれ。
諍う事に、何の優雅があるのでしょう、遊惰すら、見えません。
ヒトは、これを研鑽し、今の地位にいるのです、悲しいことに、野蛮な方が、強い、それはどこの世界も、同じなのでしょうね。
静かに私は争いあう人と、魔族を眺めて、紅茶をもう一口。
視線を、離します。
瞳を閉じて、紅茶の香りを、味を、堪能するのです。
■シュティレ > ――やはりというべきなのでしょう、ヒトは一人、また一人、と倒れ、逃げようとし、蹂躙されていきます。其の様子は、見なくても判る位に、当然の帰結と言う状態でした。
静寂が、砦に戻ってきます、誰もいなくなり、魔族が闊歩し始めます、生きているものを捕まえ、嬲り殺し、女がいれば、犯し。
ヒトも、魔族も、どちらも行っていることを、当然の様に行っているのが判ります。
目を瞑り、お茶を楽しんでいれば、過ぎるとは思って居ましたが、思った以上に私は堪え性が無いのでしょう。
正直に言って、この蛮行は、好きではありません、居たい、とも思いません。
やはり、王都の方か、魔族の国の方に良き、お茶にしていればよかったという後悔が一つ。
少しばかり珍しい物を見つけて舞い上がってしまったのでしょう、反省せねばなりません。
紅茶を飲み終えて、私は物言わぬ白骨死体に、戻る様に伝えます。元の、死体へと。
カランと言う音がして、崩れる白骨死体、そして私は<領域>を決して立ち上がり、霧へと姿を変えて。
そのまま、誰に触れることなく、霧散するのでした。
ご案内:「タナール砦」からシュティレさんが去りました。