2020/06/03 のログ
ご案内:「タナール砦」にセレーネさんが現れました。
■セレーネ > 終わりのない攻防が続き、今日も剣戟や爆発音が鳴り響く国境の砦。
日激化する戦闘によって占拠している陣営が変化するその砦は今、マグメル国内で立て続けに起こった戦乱やトラブルに乗じて魔族側の根城となっていた。
国に置いての重要な防衛拠点である以上、即座にこの拠点は放っておく事はできない。アスピダへ向けている戦力を補う為冒険者や傭兵達を招集し奪還を目論む。
そしてその陣営の一角に冒険者を一度引退した女の姿もあった。
「邪魔よ……とっとと退きなさいな」
女の周りに浮かぶ複数の腕が女を中心に公転し群がる魔族達を吹き飛ばしていく。
本格的に前線を離れしばらく経っていた彼女にとって血を滾らせる戦闘は嘗てを思い起こさせるようで、イキイキとした表情で防衛壁を単体で突破していく。
ご案内:「タナール砦」にルリアさんが現れました。
■ルリア > 各陣営の兵が命を削り合う戦場の只中にあって、その魔族の女はひたすらやる気がなかった。
渋々受けた防衛任務だが、このようなまっとうな戦いはルリアの求めるものではない。
一応向かってくる敵は適当に腕を振るい吹き飛ばし、隠蔽しながら浸透しようとしている者には派手なだけの攻撃をぶつけて友軍に存在を知らせている。
受けた指令はこなしているが、こんなもの何も楽しくもない。
まあ普段好き勝手しているのを黙認されている手前、最低限の働きは見せておこうという程度のモチベーションしかなかった。
「ああ嫌だ嫌だ……。こんな暑っ苦しい事なんかしてないで、砦なんか明け渡してしまえばいいのに……」
前線で火花を散らしている味方が聞いたら果たしてどう思うか。
とはいえやる気が出ないものは仕方がない。
せめて面白そうな捕虜でもいればよかったのだが、ルリアの趣味に合う者もおらず。
最低限の仕事として居座った地点に敵が侵入しないようにしながら、戦闘の終わりを待ち焦がれていた。
だがそんなルリアの前に、単独で迫る人間の姿が。
戦士としては少々とうが立っている女のようだが、それが逆にルリアの興味を引いた。
とりあえず、他の雑兵では相手になるまい。
退屈で灰色だった時間に血が通っていく感覚を得ながら、ルリアは女を迎え撃つべくようやく構えらしい構えを見せた。
「悪いけど、ここは通行止めよぉ?
尻尾を巻いて逃げ帰るか、裸で土下座でもして許しを乞うか選ばせてあげるから精々無様を晒しなさい」
片腕を掲げ、何か攻撃の素振りを見せながらもすぐには仕掛ず露骨すぎる挑発。
口調は相変わらず気だるげではあるが、口元に嘲笑と愉悦の混じった笑みを浮かべていて。
頭の中は、中々の実力者に見えるこの女をどう陵辱してやろうかの算段を初めていた。
■セレーネ > 有象無象を弾き飛ばし防御壁を殴り壊しながら単身で進軍し後続の道を作る。軍属ならば許されない突撃に自己陶酔めいた感情すら懐きながら進行速度を緩めず攻め込んでいく。
やがて、砦の一角へと辿り着いた女の進路を立ち塞ぐように降り立ったのは一人の女魔族の姿。
大きな二本の角に過剰な程セクシーなドレス。戦場に似つかわしくない姿ではあるがその姿やこちらを挑発するような立ち振る舞いからは今の戦況に対する余裕のようなものすら感じ取れた。
「あいにく通行止めの道を開通工事してるのよ。貴女こそ潰されたくないならとっとと手下を連れて逃げ帰りなさいな」
そう言葉を発するやいなや女の背後に浮かんでいたゴーレムの腕に魔力が迸る。2対の巨腕は女魔族を捉えようと四方から飛びかかっていく。
■ルリア > 警告ではなく挑発。
当然敵も止まる訳もなく、そのまま攻撃を仕掛けてきた。
迫りくる圧倒的な質量。
しかしそれが届く前に、ルリアも迎撃の動きを見せる。
掲げた腕、そして足元。
その影が文字通り伸びて、更に空間に立ち上がり立体の像となるとルリア自身の腕の延長のように振るわれゴーレムの腕を受け止める。
「悪いけれど、逃げるって何のことかしらぁ?
まさかこんなチンケな攻撃から逃げろって事ぉ?」
影を伸ばし攻撃を防いだルリアは、戦いというよりもこれから舞いでも披露しようかとでもいうべき構え。
まるでこの程度戦いにもならないとでも言いたげである。
更には鼻先で笑い飛ばし、余裕と嘲笑をこれでもかと見せつけている。
■セレーネ > 「なるほどね、さっきからこっちを挑発してるだけはあるわね…」
先程まで戦ってきた相手なら間違いなく押し潰せていたであろう攻撃をうっとおしい虫でも払うかのように防がれた事に驚きはするもののそれで攻撃の手を弱めるという選択肢はない。
「そうね……じゃあこれならどうかしら?」
片手に携えた魔導書の1ページに魔力を通せば4対の腕は消え、今度は更に大きな1対の腕が地面ら出現する。それは魔力出構築された大槌を携えると魔族の脳天目掛けて思い切り振りかぶって。
「逃げなくてもいいわよ。こっちとしては戦いが終わるまでそこで止まってもいいの「」
■ルリア > 「あらあら。
これは怖いわねぇ」
腕を影で防いでみせれば、更なる質量をもっての圧殺攻撃。
しかし言葉とは裏腹にルリアの余裕と嘲笑は崩れない。
ルリアとしてはこれを馬鹿正直に受け止める必要はない。
跳躍でもして逃れてしまえば済む事だが、ここはあえての意趣返しを選択した。
四肢から伸びる影を、太く巨大な一本の触腕のように束ねあげる。
それを鞭のように振るい、振り下ろされた大槌を正面から打ち合った。
「でもまあ、このぐらいなら動く必要もなさそうねぇ」
魔力比べであれば、ルリアとて得意分野。
多少は出来るようだがただの人間に負ける気はしなかった。
しかしもっと罠にかけたり、策を弄する事も出来たのにあえて正面勝負を選んだのには理由がある。
それはそうやって打ち負かした方が面白いから。それに尽きる。
大槌を迎撃する影の触腕を振るいながら、同レベルの攻撃を五回は連続で振るえる魔力を既に次の攻撃術として準備。
無論、迎撃に成功して相手の隙をついたとしても簡単には決着はつけない。
あくまでも拮抗を演出した末で、無様に這いつくばらせるのが目的であった。
■セレーネ > 相手に直撃した攻城槌はそのまま結界術を刻み込み、敵を長時間そこへ拘束する。数的不利を打開する為に冒険者時代に編み出したこの連携に信頼とある種の誇りを女は抱いていた。
しかし――――
「はぁ……、はぁっ……、ッ、しぶといわねぇ。いい加減に…ッ」
ゴーレムの剛腕が唸りをあげれど同じく地から生える影の腕によって攻撃は尽く弾かれる。
互いに引かぬように見える打ち合いが数分も続いた頃だろうか。ついにその戦いに限界が訪れた。
人間と魔族の絶望的なまでの魔力の差。それはボロボロになった女のゴーレムの腕に対して魔族の影は未だ傷つく様子すらない。
消耗戦での敗北を悟った女は残った魔力を自らの肉体に込め、ゴーレムが最後の一撃を振るうタイミングで生身での不意打ちをかまそうと地面を蹴って肉薄する。
■ルリア > 一見互角の魔法戦。
しかし常に余力を残しているルリアに対し、生身の人間ではその勝負は分が悪かったようだ。
その証拠にゴーレムの腕は崩壊とまではいかないまでも、明らかにダメージを受けてている。
それに対しルリアは接敵時点からの余裕を崩さず、魔力の影を振るい続けていた。
「中々やるわねぇ。
嫌いじゃないわよぉその愚直さは」
そういう相手程屈服させるのが楽しくなるというものだ。
果敢に戦いながらも徐々に勢いを削がれていく人間の戦士の姿に、サディスティックな愉悦が湧き上がってくる。
そんな打ち合いを繰り返す内に、ゴーレムにもいよいよ限界が見えてきた。
もう次の攻撃は打てまい、というその腕をそれまでと同じように打ち払う。
しかし、その隙を狙っていたのだろう。
ゴーレムを用いず、生身でそのまま肉薄していきている姿に気づいた。
基本は魔力戦、特に不意打ちやなぶり殺しを好むルリアは正面からの白兵戦は得意とはいえない。
だがそもそもの地力が違う。
熟達の剣士が相手となればともかく、人間の魔術使いを相手にして白兵戦で負ける気などさらさらなかった。
おそらく相手も、ルリアが魔術に特化した使い手と思っての決死の肉薄なのであろう。
なので、少しの間その思惑に乗ってあげる事にした。
「クッ!?囮にしたっていうの!?
小賢しいわねぇ……!」
ゴーレムの腕を迎撃した後に、驚いたような素振りでセレーネに向き直るが遅い。
そして慌てた様子で影ではなく、実体の爪をそのまま刃物のように伸ばして、勢い任せな大振りななぎ払いで迎撃しようと動いた。
無論慌てているのも肉薄に気づかなかったのも演技である。
その気になれば影を使い拘束も反撃も出来る中で、少しだけ相手に希望をもたせるための性悪な演技でしかない。
ご案内:「タナール砦」からセレーネさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からルリアさんが去りました。