2019/12/01 のログ
ご案内:「タナール砦」にアルナさんが現れました。
アルナ > 「ふうう、ぅ……おなか、すいたですの……ぉ」

今日は人間側が制圧しているらしい、砦の奥に並ぶ牢獄のひとつ。
黒くてごつい虜囚の首輪を填められた白い娘がひとり、緊張感のかけらもない声を洩らしていた。

そもそも、戦闘要員ではない。
かてて加えて、果たして魔族に分類されるものなのかどうかすら怪しい。
なのにうっかり好奇心を発揮した結果、まんまと捕らえられてこのありさまである。

捕虜ならばいつか助けも来るかも知れないし、最悪尋問とか何とか、
とにかく構ってもらえる目もあるだろうけれど。
己には助けも来ないし、何を聞かれても答えられない。
ということは、構ってもらえないということで―――つまりは、暇だった。
いや、暇なのはべつに良いのだが――――

「ごはん、欲しいなぁ」

呟く己の腹あたりから、くるくると鳴る虫の声。
冷たい床をものともせずに座り込み、廊下に面した鉄格子へ縋りついて、
誰か、美味しいものを持った人でも通らないかな、という風情。

アルナ > じっとりと視線を向けていても、構ってはもらえないと察知した。

ならば、こんな所は早々に出るに限る。
ということで数刻の後、ここに捕らえていた娘の存在を誰かが思い出した時、
牢の中はきっともぬけの殻であろう。
かわりに白い小さなウサギが一羽、兵士の足許を潜り抜けて行く。
あとには黒い首輪だけが床に転がり――――。

ご案内:「タナール砦」からアルナさんが去りました。