2019/11/20 のログ
ご案内:「タナール砦」にゼロさんが現れました。
ゼロ > タナール砦と言う場所は激戦区である。
 魔族が、人間が、その場所を手に入れるためにたびたび相争う場所。

 そして、今それは――――。

『第二部隊!左翼より回り込め!』
  『第五部隊、状況開始!』 『衛生兵!』

 『魔法部隊!詠唱始め!』

 戦闘の真っただ中である。
 魔族が占領をしているその砦を取り返すために第七の師団を筆頭に人間が攻勢をかけているのである。
 その中に、当然と言えば当然、少年も組み込まれている。
 とは言え、少年自身は、小隊などの振り分けはされておらず遊撃を任務として組み込まれた。
 少年は、その現場指揮官の指示に従い、動く事にする。

 遊撃といわれたが、其れは所謂一つの邪魔するな、と言うものである。
 何故ならば、少年は将軍により任務を与えられている身であり、それと同時に部隊の配置がないので、指揮系統に組み込めないのである。
 それと同時に、一般の兵士と比べて身体能力が違いすぎ、さらに、部隊運用の訓練を施されていない。
 所謂一つの扱い難い兵士であるから、遊撃と言う名の放置を選択したのだろうその指揮官は。

 少年はその指揮官の意図をどうとらえたのかは黙するが、動くことにした。
 正面突破と言う、一番敵の抵抗の大きく、被害の起きやすい場所。
 正門の前に、鈍銀の鎧の兵士は、まっすぐ歩いていく。

ゼロ > 「――――」

 少年は無言で近づいていく。
 当然門の前には、門を守るための魔族が居るのだ、そして、当然の如く、敵意と殺意をこちらに向けてくる。
 それに対する少年の感情は―――無。
 敵と言う認識ですらなく、仮面の下にある少年の表情ですら、無。
 彼らが攻撃のために手を振り上げると同時に、少年は彼らに向かい、踏み込んでいく。
 石畳がびしりと砕ける音、そして、鎧を着た少年、その重量の侭に、魔族に体当たりしていく。
 少年の鎧を含めた重量は重いと言えるだろう、そして、その加速は、隼の如く、一瞬でトップスピードへと、慣性を乗せ、そのままぶつかっていくのだ。
 そして、ぶつかる直前にさらに、踏み込んでからの加速。
 門番として立っていた魔族がボールのように跳ね飛ばされ、砦の壁に叩き付けられる。
 それに追尾するように少年は走り、壁にぶつかった魔族に再度体当たりする。
 ごしゃ、ともめしゃ、とも、めぎょ、とも、何とも言えない音を響かせながら、壁に貼り付けになり、死んでしまう魔族。
 それを成した少年は、魔族の首を短刀で搔き切って念を押し、振り向いた。
 魔族の血があふれそれを全身に浴びながら、次の獲物―――、二人組の魔族の片割れに向き直る。

 一歩、一歩歩いたかと思えばすぐに加速し、二体目へと、肉薄するのだ。

ゼロ > 異様な光景と言えるのだろう、近づいていく兵士は、仮面で顔を隠し、全身鎧を身に纏っている。
 本来であれば、動きが阻害されて重い鎧、鈍重だというイメージを全く感じさせない動きで一体を屠った兵士。
 その魔族が何を思ったのかは、当人のみが判る事だろう、だが。

 ―――ジャキン。

 少年が短刀を構える、走る動きが加速して行くのだ。
 魔族が魔法を放つ、その魔法を少年は短刀を振るい魔法を切り裂いていく。
 魔法が爆散を熾し、その中を潜り抜けて近づく少年兵。
 銀閃が走り、一閃、二閃………、三、四、五、六、七。
 一閃毎に切り裂かれ、追加で、蹴られ、魔族が倒れ伏すのだ。
 少年は、重々しく閉じられた扉に向かい、扉を掴む。

 ――ぎぎ、ぎぎぎぎ、と大きな扉が開いていくのである。
 腕力のみで、仕掛けのある扉を、強引に開いていく少年。
 その間も、師団の攻勢は続いていくのだ。

ゼロ > 扉の奥には、果たして魔族が大量に居た、流石に戦闘の音を隠しているわけでもないし、気が付くのだろう。
 ただ、仕掛けのある扉を一人で持ち上げる少年に度肝を抜かれたか、此方を見ているだけであった。
 そんな中に少年は飛び込んでいく、扉が閉まっていく。
 手近な魔族を殴り倒し、ナイフで刈り取っていく。
 投げ飛ばして他の魔族にぶつける、魔法を同士討ちさせる。

 そんな風に、少年は暴れていくのであった。
 それが陽動となったかは、少年には判らず、只々、狂った機械のように暴れ、殲滅していく。

 その結果がどうなったのか知るのは、後の者のみ―――。

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。