2019/11/17 のログ
ご案内:「タナール砦」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 空気がしんと冷える、冬の兆しを感じさせる夜。
奈落を思わせる真っ黒な夜空に白々と穴を穿つように月が浮かび、星々は遠慮がちにちかちかと光っている。
その月光が降り注ぐ光のなか、丘にくろぐろと聳える砦。
魔族と人間が代わる代わる陣取りを繰り返しているそこは今は篝火ひとつなく、秋草が揺れるなか空気と同じくらいにしんと静まり返って無言でそこに鎮座していた。

不図、その砦の歩哨へ小さな灯りが現れる。
照らされた姿は、赤銅色の肌に長い黒髪の女だ。
女は手にしたカンテラの灯りを少し掲げ、歩哨の左右を見渡すと溜息をつく。

(行き違いか……)

届け物を頼まれた昨日くらいまでは、この砦は人間側のものであったはずだ。
果たして今には遺棄されている。
恐らく責められて人間側は退却を余儀なくされ、そうして魔族側も占拠する手勢は残っていなかったということかもしれない…
通ってきた砦内を漂う空気には焦げ臭いものがあった。
どちらの仕業かは知れないが最終的に砦全体に火をつけられ、漸く収まったところ、とも思える。

「……大変だな」

長い間焼かれ、直されを繰り返しているのだろう。
年季の入った歩哨の石の手すりに指を滑らせれば、ざらざらとした感触と共に、指先は微か黒に染められていった。

ご案内:「タナール砦」にガリアさんが現れました。
ガリア > (――其れは、決して稀な光景ではなかった。
一日のうちに、其の所有権が何度か移る事も在る激戦区
占有した翌日に魔族の襲撃を受け、無尽の砦と化すなんて事は
此れまでにだって数え切れないくらいに経験して来た

――嗚呼、それでも。 砦全体を火で覆ったらしき、残臭は
何度嗅いでも、良い気分には為らない物だ。)

「―――――……生存者は…無し、か。」

(少なくとも、軽く見た感じは、だ。
魔族の残党が占拠している可能性も大いにありえたが
今の所、其の臭いも、気配も感じられない
勿論だからと言って油断が出来る訳でもない、が、兎も角
砦の内部を見てみない限りは、話にならないだろう

――先客が訪れてから、少し遅れて、砦に近づく影。
歩哨を照らすカンテラの明かりへと、敢えて気配を隠す事無く歩み寄り。)

「――――……まァた、野暮用か?」

(響かせた声は、少々怪訝な其れも混じったろう。
何で又こんな所に居るのだ、と言う質問も兼ねた声を
さて、相手が覚えているかは、判らないが)。

ジナイア > 滑らせた指を翠の瞳で見て、歩哨の先へと踏み出そうとした脚が止まる。
近づく気配の方へとカンテラを掲げ、こちらも気付いていることを知らせながら、微かに訝し気にそちらを見遣って――――
やがて、灯りに這入りこんできた姿に軽く目を見開く。数度瞬きをしながら声を訊いて、熟れた唇が微笑んだ。

「…まあ、そんなところだよ。
 奇遇だね。久しぶり、だな?」

いつか、別の戦場で出会った青年。その時も少し、小言を貰ったのではなかったか。
くすり、とそのまま笑み零して掲げていたカンテラを下へ下ろす。
そうして暗闇に目を慣らす様にゆっくりと瞬きをして、いつかの金色をその闇の中に見つけよう。

「あれからも戦場を飛び回っていたのだろうけど―――元気にしていたかな?」

あの雨の夜のあと、まともに会話する間もなく別れた。
彼が常日頃、どういう生活をしているかは知らないが、得てして『こういった場』からは離れられずにいただろう、と推測して言葉を掛けた。

ガリア > (何時かの時ほどに棘が在る感じでもないだろう
多少なりと相手の立場や事情を知っているから、と言うのも在るだろうが。
まぁ、兎も角――随分と、久しぶりの再会が、こんな場所だ。)

「……まぁ、何とか生き延びちゃ居るさ。
そっちこそ、元気で何よりってトコか?」

(カンテラの明かりが地面に近くなれば、互いの上半身を照らす明かりも乏しくなる
けれど、己が眼は問題無く相手の姿を捉え
そして相手も、己が金の目を、きっと暗闇に捉えるのは容易だろう。
其の傍へと歩み寄って行けば、相変わらず相手の方が多少高い目線で。)

「……今は小康状態で、こっちの兵も様子見。
魔族側も撤退したばかり…と言うか、燃えてる砦を如何こうする気もなかったみてぇだしな。
……そんな場所に、今度は何の用件だ?」

(元より今は、お互いに戦力を充当している所だろうか。
無論、自分の様に単独で様子を実に来る連中が居ないとも限らないが
其処の所は何とも、だ。
だから、例えば偵察、でもなければ、此処に彼女の用件が待って居るとは考え難い
肩を竦め、相手の眼を僅か見上げれば――ただ、言葉自体はぶっきらぼうだが
別に「とっとと帰れ」と言う様相では、無さそうか)。

ジナイア > 素っ気ないが、親しみのあるような言葉にまた唇が笑みを形作る。
息災か、との問いに微かに頷きながら近づいてくる金色を、懐かし気に目を細めて見つめた。
下からのカンテラの明りで、ちらちらと燃えるように光るそれを。

「何事もないなら良かったよ。私もご覧の通りだ。
 昨日の内に、ある将軍への伝言を預かったのだけどね。砦を遺棄してしまった今、果たして意味のあるものかどうかは解らないけれども」

言いながら、腰の裏を探って小さな封書を取り出す。こぼれ出た宛名の将軍は、果たして今も息をしているのかどうか。
一瞬、それを眺めてからまた吐息と共に元へと仕舞い込む

「そう言うことだから、今はちょっとした廃墟見物、というところかな…
 ―――キミは?魔族側に占拠される前に、仕掛けでもしに来たとか?」

言葉と共に首を傾ければ、黒髪が零れ落ちて耳元で金の輪が揺れた。
ともすれば、手伝うよ、とでも言いそうに
いつかの好奇心を湛えた翠の瞳が、笑い含みに彼に注がれている。