2019/09/23 のログ
ジナイア > 尚も暫く、丘の向こうを透かすように見つめていた女の黒髪が、また強く吹いた風に吹き散らされる。
うっすらと、戦場ならではの焦げた匂いと、血と泥の匂いが入り混じって運ばれてきて、鼻腔を擽っていく。
女は少し眉を顰めると、翠の視線を空へと転じた。
相変わらず欠けた月は闇の中で輝き、星々はちかちかと瞬きを繰り返している。

―――丘の向こうの相手に焦がれて夜明かしをするつもりなどは到底ない。
(…流石に、そこまで物好きでもない)

ひとつ、自嘲して
女は砦へと踵を返し、またゆっくりと歩みを進めていく。

――――砦へと戻ればカタブツの衛兵隊長にたっぷり嫌味を言われ
或いは、いつか本当にそんな『物好き』を演じてみてやろうか、等と思ったとか―――

ご案内:「タナール砦」からジナイアさんが去りました。