2019/08/05 のログ
ご案内:「タナール砦」にディールさんが現れました。
ディール > 怒号が聞こえ剣戟、打撃、重低音が無数に響き渡る戦場。
――炎が爆発した時の振動が、風の刃が魔物を切り刻む音が。
立ち込める血の臭い、肉の焦げる。あるいは人ではないモノが焦げる異臭が立ち込めている。

表立って砦での戦闘が続き、負傷者の一部は此処、野戦病院よろしく医務室という札が下げられた一室に集められる。
何故己が此処にいるかといえば。――単純にご機嫌取り且つ、目立った動きをした為に清流派に目をつけられたのが遠因だった。
故に。こんな己らしくもない場所で、人の命を助けるなどというキレイゴトを引き受ける羽目にもなる。

「――チッ……。コイツを噛め。その間に終わらせてやる。」

助手、というより手助けする軍医は数名、数えるほど。
回復魔法は揃いも揃って、負傷者の体力を使って傷を塞ぐレベル。
つまり負傷者の体力が追いつかない深手にはどうにもならないのだ。
よって。先ず負傷の軽い人物から手当てを行うという行動になっていた。

今、目の前の騎士に噛ませているのは毒草だ。
体が痺れる――命には別状がない毒草。麻酔剤の在庫も薬物の在庫も薄い砦である以上止むを得ない処置。
呻き声すら上げられないほどに涎をたらす騎士に、薬草のペーストを傷口に宛がい、包帯で簡単に締め付け固定させる処置。

「命を廻せ、傷を塞げ。」

低い声で呟くと一時的に騎士の顔色が悪くなり――その後ゆっくりと血色が戻っていく。
傷口は3箇所、薬草ではどうにもならない場所だけその魔法で傷を塞いでいた。
後は騎士の体力勝負だ。他の軍医に回してから次の患者へ。

――負傷者の一次切り分けが己の仕事に自然となっていた。

ディール > 戦況に興味は無い。勝とうが負けようが己にとっては如何でも良いのだ。
人が負けるなら其れも良し。勝つならばそれはそれ、という程度の認識。
目の前で負傷している騎士、瀕死の重傷故に己では手に負えず、隔離部屋に搬送される騎士を見ても同じ。

ある意味で情が無いのは、決して悪い事だけではなかった。
薬物の在庫も高が知れている。使っても助からない人物に使う位ならば。その後来るだろう、それを使えば助けられる騎士に回すという判断。
当然ながら一部の騎士からは非難がましく見られる。が。

「お前は、助かる見込みがほぼ0。
そうだな、神とやらの思し召しで急にこの場にその傷を何とか出来る人物が来る。
そんな奇跡に縋り、命を長引かせ、苦痛を長く味あわせろと言うのだな。

もっと高位の回復魔法を使える人間を回さなかった上を恨め。
または――これ以上の負傷者が出る前に決着を着けて来れば良い。
退却なり、追い返すなり、な。」

自分はあくまで医者だ。医者としてのスキルしかこの砦では見せていない。
前線など行く心算もなければ、人にこれ以上の手を貸す義理も無い。
打算だけの行動なのだ、あくまで。

ご案内:「タナール砦」にリヴィアさんが現れました。
リヴィア > 傭兵として雇われた若い女が負傷して運ばれてくる。腕に覚えはあったが腹部の古傷が開いたらしい。
「塞いでくれ。すぐに前線に戻る」
医者にそう頼む目には、死に急ぎにも似て烱々とした光があった。

戦況は、彼女の知ったことではない。だが目の前の敵を殲滅する仕事を請け負った以上、手を抜くつもりはなかった。

「そう深くはないが失血がある。手当を、頼めるか」

女らしくはない口ぶりで尋ねるが、顔つきも身体の流線も女のものには違いない。

話しているそばから、足の力が抜ける。うまく立てないのを不思議がるような仕草を見せるが、すぐに己を叱咤して立ち上がろうとし。

「どうか、治療を……」

目の前に立つ白衣の軍医に、深く頭を下げた。