2019/08/04 のログ
ご案内:「タナール砦」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 戦場の夕暮れ
昼の風一つない空気が少し冷やされ、戦場でさえも逞しく自生する夏草を揺らす風がゆるりと吹き始める頃。
砦に幾つか立つ物見の塔の上に、黒髪を微かに嬲られながら赤銅色の肌の女がひとり、現れる。
顔に落ちかかるそれを手で押さえると、地平線へと翠の双眸を細める。
決戦の場は遠いようで、風に乗ってさえ争いの音は届かない。
(もうそろそろ、限界だろうな…)
砦の兵力をほぼ吐き出した戦闘は、正午前から行われていた。
決着が着こうとも着かずとも、何等かの手を打たないといけないだろう。
視線をすこし上げれば、見事に赤く焼けた天。
果たして、それは夕日だけのせいかは判然としない…
ふと溜息のようなものを零して、石造りの塔の部屋を振り返る。
狭いその部屋には幾つもの小さな窓と、女が居るバルコニーで取り囲まれている。
風通しは悪くないが…今はそこに居るべき歩哨さえ駆り出されたようで、人ひとりいない。
此処に昇るまで兵の一人も見なかった。
恐らく、肝要な他の場所に詰めているのだろう…願わくは。
ご案内:「タナール砦」にダグラスさんが現れました。
■ダグラス > 砦の防衛をかけた決戦のために兵を借り出しているせいでいつも以上に人気のない内部。
傭兵として依頼を受け、訪れてすぐに部下を援軍として送り出し。
逆に人手不足となり奇襲を受けた場合に奪取されないよう、腕の立つ傭兵は何人か防衛に残ることになった。
正直戦場で暴れるよりうまみは少ないが、リスクも少ない傭兵向きの仕事ではある。
「奇襲さえ、なければだが……」
砦の城壁のうえで遠く決戦が行われているであろう場所を睨みながら小さくつぶやき。
ため息交じりに頭を振りながら巡回先の見張り塔の中に入っていき。
部屋の中を見ればこの地方では見かけない肌をした女がいることに気が付き。
確か珍しい武器を持つ傭兵だったことは覚えているがちゃんと会話したことは無かったはずだ。
「異常はなさそうか?」
相手に声をかけながらそこから見える外の景色を一緒に眺めて。
■ジナイア > 再び外へと視線をやり、少しずつ強くなってきた風にまた翠を細めたところ
背後の部屋へ誰かが現れる気配…おかしくはない。
寧ろ、只の来客である(筈)の自分がここで見張りもどきをしている事の方がおかしかった。
そうして気配には振り返らず、声を掛けながら隣に並んだ所で漸く、声の主へと視線をちらりと向けて
相手に見覚えは無かったが…口調から、そこそこ上官としてここに居るのだろうと踏んで
今更自分が一兵卒ではないと、訂正することもなくまた、かの地平線へと翠を引き戻した。
「ああ、異常はない。
――しかし寧ろ、何か有った方が兵士たちには良いと思うんだけどな…」
視線はその儘で『どう思う?』というように首を傾げた。女の耳元で金の輪が揺れる。
■ダグラス > 「さぁな、俺はただの傭兵隊長だから一兵卒の感情はわからん。
それに今、襲撃を喰らったら死なないにしても守り切れるかは不透明だからな」
腕を組み、外に視線を送りながら相手の質問に答える。
実際仕事であるうちは多少不利な状況でも戦ってやることはできる。
だが、命までかけるほど依頼主に義理があるわけでもないのだ。
己が命を懸けることがあるとしたら理由は一つだろうと顔を相手に向けて。
「まぁ、どちらにせよアンタみたいないい女がここで戦死しないようにはしてやるつもりだがな」
口元に軽く笑みを浮かべ。
軽い口調で言いながら肩をすくめてみせる。
■ジナイア > 相手の軽口に、熟れた唇がくすりと笑む。
隣の男へと、翠の視線を横目に放って
「―――何事も、引き際が肝心だと思うんだ。
もし結果不利な状況になったなら、この砦だって放り出して逃げればいいと思わないか?」
言ってからまた、視線を夕焼けへと戻した。
相変わらず、一見長閑に夏草が揺れるのに溜息を零すと、男へと向き直って
「―――傭兵隊長と言ったな?
キミ自身、魔族を相手にしたことがあるのか?」
女の表情は淡々としているが、翠の奥には好奇心の光が煌めき、男の身なりを下からさらりと浚う。
口調はすこし、面白がるようでもある。
■ダグラス > 「そうだな。
実際この砦は何度も取り合っているから、今回捨てたところでまた取り返すだけだろう」
地形的に要所ではあるのだがいかんせん守りにくい土地にあるのだ。
無理に守り通すより、いったん捨てて取り返すほうが楽なこともあるだろう。
「魔族か?あぁ何度もやりあってきたぜ?」
いつまでも外を眺めていたところで状況が変わるわけでもない。
身体も相手の方に向けつつ壁にもたれながら、相手の問いかけには頷いてみせ。
その場でシャツを少しめくって跡が残る腹筋を見せて。
「こいつは魔族の魔法で切り裂かれた跡だな。
これは確か爪が貫通したやつだったか」
傷跡を指さしながら、その時の状況を相手に説明して。
「」
■ジナイア > ほう、と吐息のような声を漏らして男が晒した傷に目を細める。
同時、指先を其れへと延べて――触れる寸前でぴたり、と留めて
視線だけが、男を見上げる。
「触っても構わないか?
――私はまだ、一度しか相対したことがない。
それも、随分お手柔らかに対応してもらっただけでね…」
風が、更に強くなってくる。
もし触れるのを許されたならば、嬲られた女の髪が、男の肌を擽るくらいには近付くだろう。
■ダグラス > 「美人に触っていいか聞かれて断るような男ではないつもりだ」
相手に聞かれれば軽く肩をすくめて答え。
相手が近づき、髪が風でたなびけばそこから流れる女の香りが鼻孔をくすぐり。
「俺と戦うときは試合ではないからな。
往々にしてお互い命やら何やら大切なものをかけて戦ってるから必死なんだよ」
■ジナイア > またもや軽口に上目のまま唇が笑みこぼす。
「そうか…ならば、遠慮なく」
少し身を屈めて、傷口へ視線を這わせるのと同時、指先をなぞらせていく。
「…その様だな。随分と、深かった、ようだが…」
溜息のように言葉を零すと、屈めていた背を伸ばす。
翠の視線に少し気づかわしげなような光を浮かべ、真っ直ぐ男を見た。
「良く、助かったな。
しかもまだ、こういう場所に顔を出せるというのは…
争いが基本的に、好きな性質なのか?
それとも、その『大切なもの』のせいかな?」
そういってまた、嬲られる黒髪を抑えながら首を傾げる。
夕焼けが砦の石壁を赤く、照らしていく。
女の頭越しに空を見れば、藍色が混ざってきているのに気付くかもしれない…
■ダグラス > 「まぁな、だがこの程度じゃ俺は死なないな」
相手の細い指が触れれば少しくすぐったく感じ。
それでも相手が触りやすいように鍛えられた腹筋が浮かぶ腹を好きに触らせて。
「争いが好きというのもあるが、俺はただの傭兵じゃないからな」
夕日に照らされて、翡翠を思わせる瞳に藍が混じるのを見下ろせば。
やはりこの国の女にはないような色気を感じ取る。
横目で太陽を見ればすでに地平線へと落ちつつあるようだし、勝っても負けても今日大規模な襲撃を受けることは少ないだろうか。
「今は陸にいるが本業は海賊でね。
誰かの大切なものを奪うのが俺の仕事なんだよ」
■ジナイア > 海賊、と唇が形を紡いで、軽く目を見開く。
そうして触れていた自分の指を見てから、その手を軽く握って熟れた唇が笑む。
「『大切なものを奪う』仕事とはね。言い得て妙だ…
――物足りなくなって、ここに魔族の生命というものを奪いに来ている、ということか?」
そう言って髪を抑えたまま岩壁の上に腕を凭せ掛け、男の肩越しの藍と赤を映す翠の双眸を細める。
風は勢いは落ち着きつつあるが、肌の上を滑って行くそれは僅か、体温を奪っていくようだ。
「――あまり、海とは馴染みが無くてね。
陸の上と勝手は変わらないものかな」
そう、女が問いかけた時。
他の物見の塔から何やら鋭く上がった声。
その声に地平へと視線をやれば…くたびれた様子を隠すこともなく、のろのろと戻って来る軍勢が見えるだろう。
追われている様子でもなければ……引き分け――それも、あまり良くない形での――だったのだろう。
一時停戦の代わりに、何か、差し出したか……
「…キミの部下は?」
その軍勢へと顔を向けながら、視線を男へ。
気遣う色が、見えるのではないかと。
■ダグラス > 「はは、ここに来たのは取引がある貴族から援軍を依頼されたからだ。
傭兵業は古来から海賊の生業の一つなんだぞ?」
海の上で生き、略奪や冒険のために日々実践を繰り返す海賊は下手な兵士より圧倒的に精強に育つ。
その分リスクが高い仕事であることは間違いないが。
「まぁ、そうだな……船の揺れになれればそれほど変わりはないが」
相手の質問に答えたとき、相手の視線が地平線に向かったことに気が付き。
服を正してともにそちらに目を細めてみた後。
備え付けの望遠鏡を伸ばして戻ってきた戦列を確認し。
「ふむ、何人かいなくなっているが……概ね生き残ったようだ」
部下の死は日常であるため、相手が気遣うほど感情は表に出ておらず。
冷静に部下の顔を確認してからつぶやき
■ジナイア > 古来から、と訊くとそうなのか?と首を傾げて見せる。
そうして、男が部下の安否を淡々と呟く姿に…ふと、肩を揺らして可笑しげに笑みこぼした。
「はは…面白いな、キミ。
同じく戦場にも身を置きながら、暮らしから生業から…色々と、私とは随分、かけ離れているようだ」
凭れていた壁へと肩を預けながら男へ向き直り、明らかな笑みを浮かべて翠の視線を上げる。
その視線には、ともすれば好奇を通り越して好意の光さえ浮かべながら。
「私は『ジナイア』という。
生業としては今は旅人、かな…多少、武器も遣う。
キミは?」
女は黒髪を風に嬲らせるがままに、男へと首を傾げて見せる。
天の藍色は更に濃くなって、赤と混ざって辺りを紫色に照らす。
――間もなく、砦はくたびれ果てた兵士で満たされていくだろう。
■ダグラス > 疲弊しているとはいえ、兵士が埋まった砦に小粒な襲撃をかける意味も少ないだろう。
とりあえず今夜のところは静かな夜を迎えられそうだと小さく息を吐き出し。
「俺はダグラス。
一応、それなりに裏世界には顔が利くから困ったら探すといい」
相手の名前を聞けば自分も名乗りかえす。
先ほど話していたため仕事などは端折りはしたが、相手から好意を帯びた視線を受ければ目を合わせ。
「生き残りの数からみて引き分けといった雰囲気だが、ジナイアは今日のところどうするつもりだ?」
特に予定がないのであれば、もう少し個人的な話をしないかと誘うつもりで問いかけ。
■ジナイア > ダグラス、と唇で紡いで、続いた言葉には翠の双眸を細め熟れた唇が微笑んで見せた。
「ありがとう。こちらには疎いからな。
いつか、頼りにさせてもらうかもしれない…」
女はそう言って笑んだまま、ゆるりと両腕を抱くように組む。
部屋の中、階下からざわめきが昇って来る。
退去した兵の先触れがきたようだ……
その音にちらりと一瞬視線をやってから、また面白がるような翠の光を男へ。
「用事は済んだから、明日には発つが…
今晩は、キミの身の上話を聞くのも面白そうだ」
そう言って、壁から身を離すと部屋へと足取りを進める。
辛気臭そうな戦況よりも、男の方に余程興味がある、と振り返ってまた笑みを投げた。
■ダグラス > 「では、静かになれる場所で俺という人間を教えてあげるよう」
相手の返事を聞けば口角を上げて笑みを浮かべ。
階段から登ってきた伝令に一瞬視線を送った後。
軽く報告を聞いてから相手を伴ってあてがわれた部屋に向かうことにする。
ご案内:「タナール砦」からダグラスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からジナイアさんが去りました。