2019/07/29 のログ
ご案内:「タナール砦」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…全く。酷い時に訪れてしまったものだ」
タナール砦へ兵士を率いて乗り込んだという顔見知りの貴族を訪ねて訪れた夜。寝室で読書に耽っていれば、悲鳴と怒号が砦に響き渡る。窓の外から覗き込んだ砦の正門付近では既に戦闘が始まっていた。
息を切らせて部屋に飛び込んでいた兵士に状況を尋ねると、内部から開け放たれた門から魔族が押し寄せ、現在侵入を阻止すべく戦闘を行っているとの事なのだが。
「…成程。状況は理解した。君は直ぐに侯爵殿の部屋に向かいたまえ。私は多少魔術の心得がある。己の身くらいは守れるさ」
穏やかな口調で兵士に声を掛ければ、暫し迷った仕草を見せた末に頷いて部屋から飛び出していく。貴族としては平凡、と評価していた侯爵も、意外と人望はあったのかもしれない。
「……まあ、馬車では逃げ切るのは難しいだろうしな」
特段侯爵に恨みも無ければ敵意も無かったが、進んで守ってやる義理も無い。非常事態を知らせる鐘の音と、兵士達の怒号が響く中身支度を整えて砦の屋上へと歩きだす。
少年の背後からは、無骨な甲冑を身に纏った騎士が影から生える様に湧き出し、その背後を守っていた。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 来客用に造られた建物から本陣である砦へ向かう最中にも、戦況が悪化していくのが目に見えて分かる。
既に正門から魔族がなだれ込み、戦いは中庭へと移り変わっている。が、押し寄せる魔物を防ぎきれず、既に一部の魔物は砦へと侵入している様だ。
「……侯爵は馬車迄辿り着けるだろうかな。死んで欲しい訳では無いのだが」
既に警邏の兵士まで駆り出しているのか、外から響く怒号の中、無人と化した廊下をのんびりと闊歩する。
背後に従えた騎士——を模造した己の召喚物——の足音が、ガシャシャと響いていた。
「…しかし、上手い事やったものだ。破壊力に欠けてはいるが、素早い種族が揃っている。正門さえ突破すれば、浸透する魔族を止めるのは難しかろう。寧ろ、よく正門を突破……ああ、内部から開いたのだったな」
先程窓から見掛けたのは、ゴブリンなど小型で俊敏な魔族ばかり。オーガや魔術師の様な破壊力を持った魔族は見掛けなかった。
彼等だけでは正門を破るのは難しいだろうが、幻術師か淫魔の類でもいたのだろうと小さく苦笑いを零す。
そんなのんびりとした思考を続けながら、目指すは砦本丸の屋上。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > やがて、階下の喧騒を他所に辿り着いた屋上。
吹きすさぶ夏夜の風が心地よい。血生臭くなければもっと良かったのだが。
「……侯爵殿は無理そうだな。残念な事だ。此度の代金は、幾分割り引いてやらねばならぬな」
砦の裏門から走りだそうとした馬車が、魔物の群れに取り囲まれていた。
僅かな溜息と共に夜空を見上げて魔術を起動すれば、現れるのは漆黒の身体と翼を持つペガサス――の紛い物。
その背中に跨ると、主の意を受けたペガサスは闇夜に紛れる様に舞い上がり、血だまりに沈む砦を後にした。
その背中に捕まりながら、次はもう少し落ち着いた時に訪れたいなとぼんやり考えて居たり。
ご案内:「タナール砦」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。