2019/01/28 のログ
ジナイア > 陽が落ちる間際まで、戦闘を続けていたらしい。魔族側には夜目が効くものも、また闇こそ得意であるものが居たであろうから、必死の後退戦だったであろう――それでも砦まで押し寄せられなかったのは、『それなり』の備えあっての賜物だ。が―――

「…こうなってしまってはな……」

冷たく転がっている兵は、人間側が圧倒的に多い。出撃の方の『備え』に、聊か手抜かりがあった様子は否めない……しかもよくよく見れば装備もお粗末なもので……彼らの姿自体が、戦に消化されたあとの、澱のようにも感じられる………

ご案内:「タナール砦」にイーシャさんが現れました。
イーシャ > 戦場跡には死を無念の気配が蔓延し、それこそ生命すら感じさせない。
空気すら凍てついている夜空の元では、より一層と。
だがそんな中にあって、不意に人の気配を感じられたか。
特に気配を消しているとか、警戒しているとか、そういった気は感じられない気配。

「…ジーナ?こんなトコで何してるのさ?」

唐突に掛けられた声は、彼女も知る若々しい声。
それも彼が言い始めた愛称での呼び方をして声を掛けてくる。
顔見知りのミレーの青年は、なぜ彼女がこのような場所にいるのだろうかと、小首を傾げて見つめている。
月夜の元、死臭立ち込める戦場跡に、赤の瞳が映える黒猫というのは、不吉感があったかもしれないが。

ジナイア > 掛けられた声に、弾かれたように翠の双眸を転じる。
特に警戒をしていた訳ではないが…怠っていたようだ。苦笑めいた笑みを零してから、それが聞き覚えのある声と姿であることに気づいて、数度瞬きをした。

「…イーシャ?……キミか」

黒い闇に溶け込むような猫耳と特徴的な赤の瞳を、少し眩しげに見ながら、ゆっくりと彼へと向き直る。

「久しいな……いや、まあ例の『物見遊山』だよ…」

そうしてキミは?と首を傾げた。フードの合間から、黒髪が零れ落ちる。

イーシャ > 「うーん、観光するのに向いてるとは思えないんだけどなぁ
もっとこう、楽しいところ行くべきじゃない?」

本当に物見遊山なのかと、いぶかしそうに彼女を見つめてくる。
いくら並みの観光地に飽きたとはいえ、戦場を散歩するのはいかがなものか…みたいな感じだ。
まぁ、彼女も理由があってここにいるのだろうが。

「俺は…あれだ、死体漁り…みたいな」

こんな場所で笑えない冗談を笑いながら述べて。
王国軍からギルド経由で入る仕事の中には、戦場跡に向かい使えそうな物資や戦死者の身元確認といった、汚れ仕事が舞い込むことがある。
今回もそれでわざわざこんな血なまぐさい場所に訪れたわけだ。
よく見れば、他にも同じ依頼を受けた人々が、ちらほらと現れ始めるところだった。

ジナイア > 彼の言葉に苦笑いを再び浮かべる。実際のところは、王城勤めの友人の耳目代わりだったが…此処を選んだのは自分の意志だ。

「『楽しい所』は、ほぼ一通り巡らせてもらったからね…
今まで『魔族』等と関わることが無かったから、どんなものかと思って…」

もの好きなんだ、と付け加えてくすりと笑う。
そうして彼の返答に首を傾げたまま考える風でいると、周囲に現れた気配に気付いてそういうことか、と微かに頷いてまた微笑った。

「成る程…色々な仕事があるものだな……」

寒い中大変だな?とこぼす声が、白くけぶって天に昇っていく。

イーシャ > 「そんなに遊びまわってたのか…
魔族と関わりたいからって、こんな所じゃなくてもいい気がするけどなぁ」

広大な王国のアクティビティをほとんど網羅したのか、とも思える彼女の発言に、羨ましいやら呆れるやら。
楽しいところを巡ったから、危険なところに足を運ぶあたり、彼女もなかなか血の気がおおいのかもしれない。
魔族については、青年としてはなんとも言えず。
とはいえこのような場所で出会いを待つよりも、王国に潜む魔族でも探した方が、なんだか探偵みたいで楽しいのではないか。

「割はいいけどあんまりおすすめはしないよ、服を念入りに洗濯したり、お祓いとかしたくなるから」

冗談めかして言いつつ、足元の亡骸をちらりちらりとチェックしていく。
他の人々は使えそうな装備を回収したり、あるいは金目の物を懐に仕舞い込む不届き者すらいて。
青年の言う通り、仕事としてはずいぶん汚れているほうだろう。

ジナイア > 『若者』らしい発言にくすくすと笑う。大よそ彼が好きそうな賑やかな場所は自分には不向きで、眺めていただけで腹が膨れてしまったのだ。

「何、そうなったらそれで面白いかなと思ってね…」

白い呼気を目で追ってから、腕を抱くようにして『仕事』をする若者を興味深げに眺める。そうしてまた、少し首を傾げて

「そちらの方が余程、お祓いが必要な仕事のように思えるがね…
よくある『仕事』なのかな?」

イーシャ > 「ジーナってやっぱり、武闘派っぽいんだねぇ」

魔族と出会ったら何をするのか、相手にもよるだろうがわざわざこういった場に来るあたり、闘争を求めていたのかも。
だが数時間前まで争っていた以上、しばらくは派手なことは起こらなそうだ。

「戦争する度にこういう仕事が出てくるけど、そんな綿密な仕事じゃないよ。
身元確認たって、砦に帰ってこなかった人数分なんだし。
それにあんまり時間掛けすぎるのも危ないしね」

最近は、小競り合いの頻度も多くなったことで、こういった仕事も増えてきた印象があるとも。
とはいえそこまで徹底された職務でもなく、同僚たちは目的を果たしたのか装備を抱えて砦の方へと戻り始める。
少々引き上げるのが早いと思うかもしれないが、闇夜の森の方から、死臭に群がる獣や魔獣か、遠吠えのような鳴き声が近づいてくるのが聞こえてくる。
そういったものと出会う前に、撤収したわけだ。
青年も早々に来た道を戻ろうとして。

「ジーナも一緒に離れたほうがいいよ」

ジナイア > 「素行が悪くてね…」

そう言って少し肩をすくめた。こうして戦場をうろつくような女だ。今更取り繕う気も無い。

青年の言葉を聞いて、取り澄ました顔のまま翠の双眸を瞬いて、視線を下に落とす。
『冒険者』と呼び名されている人々が、どんな仕事をしているのか…多少興味が湧いた。恐らくは『御綺麗』な人々の尻拭いが多いのだろうと想像はつくが…偶には冒険者のふりをしてみるのもいいかもしれない…

そんな考えはおくびにも出さず、掛けられた声にまた視線を跳ね上げた。

「…ああ、そうだな」

特に用事も無いし…何よりも寒い。再び、注意深く足を踏み出し

「…キミは、砦に引き上げるのかね?」

そうして何となく、の質問を投げかけた。

イーシャ > 「武闘派っぽいとは言ったけど、ジーナは品があると思うよ。
俺みたいなミレーにも分け隔てないし」

彼女が言うほど、素行不良とは思えずくすくすと笑い。
言葉使いはともあれ、彼女の振る舞いの品性は自分とはずいぶん違うものだとも思う。
そんな彼女が冒険者をやってみようか、なんて考えているなど思いもしてない。

「あ~…いや。
俺はほら、コレだから…
外にあるテントがいいとこかなぁ」

砦に引き上げるかという質問に、ばつが悪そうな青年。
自身の特徴である猫耳と尻尾に触れながら、苦笑いを浮かべた。
この国でのミレーの扱いというは、こんな辺境の地であっても変わらない。
魔法があるので暖には困らないのもあって、本人は気にしていないようだ。

ジナイア > 「外国人だからかな…贔屓目に見えるんだろう」

基準が違うんじゃないのか、と足を運びながら微笑う。そうして彼の返答にその足を止めて翠の双眸を向けた。

「コレ?……ああ、ソレかね…」

何の問題があるというのだろう?と心底不思議そうに首を傾げる。拍子に零れ落ちた黒髪を耳に掛けながらすこし、考え込む視線を下に落として

「…その、帰る前で良いんだが……また耳と尻尾を触らせてもらえないだろうか……」

ゆっくりと彼に視線を戻しながら、少しだけバツが悪そうにそう、頼む言葉を口にした。

イーシャ > 「ほらほら、褒めたんだから素直にありがとうくらい言っときなって」

確かに物事や常識の基準や文化は国によってまちまちだが、それはそれだ。
卑屈めいたことを言わなくてもいいよと、けらっと笑ってみせた。

ミレーについてはしばらくこの国に滞在していれば、様々な待遇で扱われている姿を目にしただろうか。
遠く離れた異国人から見ればおかしな文化だと、そう思ってもらえるだけでうれしかった。

「おおう、唐突に来たねぇ…
ふふっ、いいよ…ジーナの触り方上手だし」

砦の方へと歩きながら、彼女のばつの悪そうなお願いにきょとんとして。
耳と尻尾の触り心地を気に入ってもらえたならと、喜んで承諾した。
とりあえず、砦の前にいくつか配置されている仮眠用のテントに入り込んで、暖を取ってからだが。

ジナイア > 素直になれ、という青年に数度目を瞬いてから、くすぐったげに笑み零した。

「わかったよ…ありがとう」
遠い国で、若者からご高説賜るとは変な感じだな…などと思う。
視線を落とし、彼を追う様に再び足を慎重に踏み出しながら白い呼気を吐く。

「すまないな……乱暴にはしないように、気を付ける」

中々他に機会がなくてね…と、言い訳めいた言葉を付け足した。

イーシャ > 「そうそう、可愛い顔見せてくれると、こっちもテンション上がるし」

ご高説、というほど仰々しいものではなかったが、素直になるのはいいことだし、気持ちもいい。
若者だからこその、露骨な言い方も含めて。

「いうほど乱暴なんかしてなかったよ~」

前回、猫耳尻尾を満喫したときも、ペットを愛でるかのようにずいぶん優しくしてもらったので、心配はしていない。
テントの中へ向かった二人は、魔術によって暖を取りつつ、毛並みを堪能するほんわかとした時間を楽しんだことだろう。

ご案内:「タナール砦」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からイーシャさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――ある意味、この状況はいつものことだ。

この地域を取る、安定を図るには常日頃より血と肉、そして何よりも財貨を支払うことが要求される。
血で血を購うことすらあるような処だが、今回の攻略戦は思った以上に難航していた。
勿論常日頃より容易いことではない。
御山の大将を気取るような手合いであるならば、上空ないし地中からの奇襲、襲撃で片付ける。
敵の一兵も残さない。捕虜も残さない。持ち帰る土産は何もなく丹念に鏖殺する……つもりだった、が。

「何処の手合いか知らないけど、学んできたということかしらね」

空に欠けた月が掛かる夜、タナール砦の王国側の門を望む丘陵に王国軍の幾つか幕舎が張られている。
さらにそれらを見下ろせる小高い丘の一つの上に、ぶらりと足を運んでは遠くに砦の光景を見遣って慨嘆の息をつく。

上空の竜を迎え撃つためのバリスタ、投石器の類は実のところ厄介ではあるが対処できないワケではない。
その手の事態を見越した魔法、ないし類する特殊能力を持った竜とその乗り手の組み合わせだ。
如何に脅威であっても、散漫たる有様であれば防いだうえで強行突入を図ることは難しいことではない。

ただ、問題は数だ。砦の胸壁上にずらりと並べられた据え付け型の弩の数々に思わず閉口する有様がここにある。
防がれるならば、許容限界を超えるまで只管に撃ち込み続ける、といった意思がありありと垣間見える。
十分に引き付けて、一斉射で強引に竜騎士の防御や攻城兵器類を破壊する。知恵のない魔物の手管らしからぬ手管だ。