2019/01/23 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > 全く――病み上がりだというのに、寝ている暇がないというのは如何ともし難い。

現状、動員できる部隊がないとなれば、空いている部隊に白羽の矢が立つ。
運用としては道理だ。この点については反論の仕様もない。
地勢の問題として件の地が重要な場所であるというのは、従来からも何度も取り沙汰されている。
問題と言えば、今回のお鉢が回ってきたというのが自分達であるということだ。

「……最早手筈通りにも近いけど、改めて全体に周知。

 内部に物資の蓄積はしない。全て王国側の場外に運び出して。
 それと兵の皆には悪いけど、この砦に居る間は携行食と保存食をメインで考えて頂戴。
 魔族領側からの襲来で防衛できないと判断できた時点で速やかに撤退。王国側の後方で陣を敷くわ」

今回は大きな戦らしい戦もなく、この砦を奪い返す事が出来た。その点については安堵する。
砦の胸壁、魔族の国側の方角を見詰めながら伴う騎士の一人に慣れた風情で言葉を送る。

中庭の方を見下ろせば、見えうるだろうか。
乗り入れた馬車に砦内の倉庫に備蓄されてた物資が梱包され、積まれてゆく姿が。
溜めるべきものを外に出す。いつでも運び出せる、最悪焼き捨てることも是とするのは敵に奪われた場合の対処だ。
昨今、再奪還した際に倉庫を検めると荒らされた物資が散見すると言う報告もある。
ともすれば下手人を見つけ次第、切り捨ててもおかしくはない仕儀である。

アマーリエ > 「調べものに勤しむ時間もないったら、ありゃしないわ。
 もっとも、調べても見つからない可能性が高いことを考えたら……か」

そう嘯きつつ、装備を確かめる。
身のあちこちが軽いのは、従来より纏っていた鎧の一部を外し、簡略化したからだ。そして何よりも盾を喪失していることが大きい。
守勢の意味を考えたら実体を伴う盾の安心感は大きいが、今後の戦いを考えると如何に堅固な盾でも十分ではない。
抜かれる可能性があることを思えば、結界の媒体とできる最低限程度で事足りうる。
何より、対魔王戦をも考えると、それこそ古代の逸話に語られる位の不滅の武具とも云うべき代物でも不足だろう。
それならばいっそ、魔力で構築した結界術や竜鱗を騎竜の契約のもとに錬成し、即席の盾をでっちあげる方がいい。

「まあ、いいわ。手筈は済んでいるわね?」

そう声をかければ、魔族の国側の城門の前に空中から二本の太い杭が突き立つ。
上空を周回する騎士が駆る竜から投下された、先を尖らせたうえで聖別済みの丸太である。
重々しい音ともに破城槌にも使えそうな代物が突き立つのを見て、左腰に佩いた剣を引き抜く。

緩やかに身を回し、足元に切先で円を描いたうえで低く呪を紡ぐ。
不死者等の力の源となる土中の穢れを中和し、悪意を以て襲来する者に対しての力を減じるための術だ。
長い時間持続する類の物ではない。善くて、自分達が逗留している間であろう。
描いた円状を剣を緩やかに振るい、舞うように歩を重ねながら祈祷めいた言葉を連ねて儀式を行う。