2019/01/04 のログ
ご案内:「タナール砦」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…しかしまあ。此処に幾ら金をつぎ込んでも無駄銭な気はするが。此方としては、擦り減ってくれる分には有難い話だがな」
何度目か。或いは、何十度目かの主の交代劇。
死屍累々と人間と魔族の死体が山と積まれたこの砦に、大量の馬車を連なって武具の納品。そして、王族の一員として将軍達の鼓舞へと訪れた。
年若く、少女めいた風貌の己に笑顔で功を労われた将軍達の締まりの無い顔は思い出しただけでも反吐が出る。
とはいえ、底の抜けた桶の様なこの砦に金をつぎ込んでくれるのは此方としても有難い話。数百万ゴルドにも及ぶ今回の発注によって、実家はホクホク顔である。
「珍しい魔族でも居れば土産に持ち帰りたいところだが……死体か慰み者しか残っておらぬかもしれんな」
制圧したばかりという事もあって、そこかしこで兵士達が歓喜の雄叫びを上げ、兵舎の裏では既に捕らえた魔族の凌辱が始まっていた。
是非も無しか、と小さく溜息を吐き出し、兵士達の喧騒から逃れる様に砦の裏門へと歩みを進める。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 喧騒と狂乱が支配する砦の中央から離れれば、意外な程静かなものだった。
敵味方の死体が無造作に転がったまま、巡回の兵士の姿も無い。一応、砦の裏門は固く閉じられているものの、些か無用心とも言える塩梅だろう。
「こんな事だから、取って取られてを永遠と繰り返している様な気もするが…」
とはいえ、此処が戦場である限り、己の財は潤い、国家は疲弊していく。今更義憤に燃えて王国を勝たせてやる義理も無い。
大地に突き刺さったボロボロの剣を引き抜き、刃毀れしたその刀身を見て肩を竦めると、剣を放り投げて漆黒に染まる夜空を見上げた。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 時折、獲物を見つけたと言わんばかりに兵士達が近寄ってくるが、此方の身形を見て回れ右して立ち去っていく。
その様が面白くて、思わず笑みを零す。
「別に女に飢えている訳でもあるまいに。態々此方まで足を伸ばしてくるということは、あぶれたか外れくじを引いたのか…。少し可哀相ではあるかな」
次に訪れた時にまだ砦が王国の手中にあったなら、武器と一緒に娼婦でも引き連れてきてやるべきか、と兵士達に僅かな憐憫の情を抱きながら吐息を吐き出した。
冬空で白く色づく吐息が、まるで紫煙の様にゆらゆらと夜空に吸い込まれていく様は、地獄めいたこの場所に相応しくないな、と少し情緒的な思考を走らせて――