2018/11/10 のログ
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 今日の砦は、辛うじて人間側の手に落ちていた。
その表現すら適切とも言えないほど、内部では阿鼻叫喚の地獄絵図となっていたが。
魔族の軍勢と正面衝突した王国の軍勢の被害は大きく、奪還には成功するも、軍として成り立たぬ損耗を受けてしまう。
その状況へ救援の命を飛ばされた民間軍事組合の部隊は、すぐさまに出立し、砦へと降り立つ。
大きなエナガと隼、そしてマシコの三種三様の眷属達が周囲に集まると、それぞれに懸架されていた籠から少女達が降り立つ。
同時に突入してきた堅牢な馬車からもその姿は飛び出すも、ミレーの少女達の動きは、訓練をなぞるように手際がいい。
『動ける人はこっちだよ! こっちきたら座って!』
『止血薬と包帯もっと! 担架もっ!』
止血、体温維持、意識がない奴は静かに運ぶ。
戦場へ赴くことになった少女達に教え込まれた、応急処置三箇条。
それに従い、負傷兵の分別と共に応急手当に奔走する。
自身で動く事が可能であり、意識もハッキリとしているけが人は骨折なら添え木を、出血なら止血処置と、次々に応急処置を繰り返していく。
重傷ともなれば、肉が抉れ、血に塗れた死にかけといったところか。
同様に止血を施し、続けて大地の魔法が得意な少女へと処置を任せ、治癒の魔法で体力を補う。
呼吸を絶やさせず、体の熱を下げぬように維持しつつ布で包むと担架に載せてエナガ達の元へと、慎重に運ばれていく。
緩やかに揺らさずに飛ぶことが得な彼等の籠の中で横たえ、状態を支える少女が乗り込むと、次々に飛び立つ。
それでも、王城にある軍の医務棟へ運ばれても生き延びる率は少ない。
そこらで血の香りが広がっていく中、自身は他の少女達と砦の壁の上へ登っていた。
魔族の国側の地平線の向こう、そこからやってくるかもしれない魔族の軍勢に目を凝らしながら。
(「撤退が終わるまで、攻め込まれないことを祈るしか無いですね」)
元々手数の少ない軍勢故に、維持する戦いは得意ではない。
先手必勝、奇襲不意打ち上等の電撃作戦で圧倒し、危うくなればさっさと逃げる。
それなのに、守りを固めて撤退までの時間稼ぎという逃げれない状況というのは、あまりよろしくない。
険しい表情をする中、頭上をマシコの姿が通り過ぎていく。
偵察に魔族側の方へと入り込むように高く飛び、遠い先まで敵の様子を探る為だ。
そんな鳥の姿を見上げると、改めて内側の惨状へと振り返っていく。
動けるものは馬車へ限界まで詰め込み、次々と発車。
一部の隼を残して、偵察を主体とした彼等も籠を使った搬送に幾羽も空気を叩いて空へ舞い上がった。
航空戦力も低下していく中、今はひたすらに敵の姿に神経をとがらせる。
ご案内:「タナール砦」にレルタさんが現れました。
■レルタ > 地獄絵図。この砦ではさして珍しくもないが、気分のいいものではない。
自分が危なくなればとっとと逃げてしまうからでもあるのだろうが。
被害甚大。継戦は、難しいか。重傷者が運ばれていく。軍医たちの懸命な働き。
ああ。
こんな事が日常である場所に、新しく出来た家族に内緒で来て。
「次にまとまった数で攻撃を受けた場合……これは、撤退する勢力含めて呑まれますかね」
最悪の場合を、ぽつりと。
■レナーテ > 『大丈夫大丈夫、痛いのはまだまだ元気な証拠だよ?』
『これでよしっ、血は止まったから、ちゃんとした手当は戻ったら受けてね?』
治療が終わる度に励ましの声を掛ける少女達は、大丈夫だと微笑む。
病は気からというが、傷とて似たようなもの。
心が弱れば、生きる活力は失われていき、いざ逃げる時にマイナス要素となってしまう。
少しずつ、少しずつ励ましの声が重なる中、すとんと壁から飛び降りた自身の耳に響く声。
少女達と似たような声色にも聞こえるが、言葉遣いや雰囲気が異なった。
声の主へと振り返れば、小さな子供の姿へ足早に近づいていき……視線を合わせるようにかがんでいく。
苦笑いを浮かべながら片手を伸ばすと、言わないで欲しいと言うように、人差し指を唇へ縦に重ねようとした。
「そうならないようにする為に……私達が来ました。ずっとは無理でも、少しぐらいならちゃんと時間を稼ぎます。皆で逃げますよ?」
そうでしょう?というように周りの少女達へ振り返り、目配せして微笑むと、察したように一人が立ち上がる。
『帰ったら戦傷を勲章代わりに、娼婦を引っ掛けたくないのか―!』
『そうだそうだ、帰んないと保証金もらい損ねるぞーっ!』
帰れば戦傷勲章、わずかとは言え戦傷保証金が国から支払われ、再就職に向けた動きもできる。
まだだ、まだ終われないだろうと、墓場は遠いとソプラノの声が心地よく、欲望混じりな励ましを送れば、僅かに笑いもおこるか。
それは困ると、宿屋の店主でもしようかなどと、呆れたように笑いながらも、前を見据えようとする声が。
■レルタ > 生きようという気力。生きようという反骨。生きようという欲。
どれもが必要だ。どれもが。足があろうがなかろうが、命という大地に足をつけて。
死んでたまるかと踏ん張っていく。それこそが必要だ。
自分にはなかったから、いま、生と死の間にいる者たちへの呼びかけ。
生と死の狭間にいるものたちの意欲の声。
それが、なかった自分には、とても、それらが綺麗なものに聞こえる。
長身の、ミレーのお姉さんがこちらへやってくる。
……まずい。どうにも、集団行動には慣れていない。
だから、率直なことを言ってしまった。
『もしそうならみんな死にかねない』という、現実という絶望を突きつける言葉を。
言ってしまった。
「申し訳ありません……撤回します。まだ此処には我々が居る以上、そんなことは起こり得ません」
目線を合わせてかがんでくれたお姉さんに、強い意志の瞳で頷く。
皆が生きようとしている。
そこに水を差す馬鹿な子供では居たくない。
「皆さんのように、元気に。 元気に行きましょう。自分にも、時間稼ぎ程度は可能です」
■レナーテ > 最悪を想定すること、それは指揮を執る時に大切になると組合長からも、参謀からも習った事。
それに気づいた少年は、幼いながらに気づきが良いということだ。
けれど、最悪は部下の前で基本的には言葉にしてはならないもの。
彼の声が聞こえた兵士達の表情が一瞬青ざめたかもしれないが、帰って怪我の分だけ保証は貰おうという意地汚さを吐き出せば、それも吹き飛んでいく。
奴隷のどん底から這い上がった娘達が宣うのだから、人間が出来ないはずはないのだと、暗に背中を押しながら。
「はい、その通りです。ここにいる皆も数は少ないですけど、ちゃんと魔族の軍勢を抑えた事のある優秀な娘ばかりです。だから大丈夫です」
前向きに言葉を変えていく彼に、金色をゆっくりと細めて微笑うと、ぐっと背を伸ばすようにして身体を起こす。
自身も戦うと、気合十分の言葉には流石に苦笑いを浮かべてしまう。
「ありがとうございます。でも……君はまだ小さいから、ちょっとの怪我で大きく響くから、無理はしないで欲しいです」
カラフルな外套の下に隠れた身体がどうなっているかは知る由もなく、見た目相応の少年兵だと思っていた。
故に、危険な最前線へ彼を連れて行くには憚られるというもの。
代わりにというように、防壁の上で小銃型の魔法銃を構え、遠くを見張る仲間の少女達を指差す。
「あの娘達と私が突撃してくる軍勢を止める予定です。でも、抜けられたら……まだ戦える人たちと一緒に、逃げる人たちへ行かないように守ってあげてください」
防衛網を抜けてきたネズミの対応、それを怠ればこれだけ手厚く処置した兵士達も深手を負ってしまうだろう。
けれども、最前線よりは危険度は下がり、重要度もある戦場の部分。
それを彼に伝えると、応急処置に賑わう一角へ指先を向け直す。
まだ動き回れる手負いの兵士達が処置を終え、防具の血を拭いながら準備を整えていくのが見えるだろう。
誰が為に、彼以外にも断固たる意志を燃やす兵士はまだ残っている。
(「それにしても……こんな子まで最前線に放り出すなんて」)
兵士に年齢制限など殆どないであろうが、それでも小さな子を抱えるほど、王国軍は手数に困っているのか?
そんな事を考えながら彼を見つめる表情は、先程までの笑みと違い、何処か難しそうに考え込む様子が見える筈。
■レルタ > 一人だったから。一人でしか動かなかったから。だから、思ったことに素直だ。
戦場において、楽観論よりも悲観論。指揮官に必要なのはそちらだ。
だが、1兵士たちがそこに陥ってしまえば、もはや戦えない。
自分が指揮官の器ということでは断じて無い。
チェスの盤上をみて「こっちが負けそう」ということをただ言ったにすぎない。
そこに。今は、此処に、多くの、生き抗おうとする者たちが居るということを認識せずに
ただただ言葉を吐いた、ただの馬鹿な餓鬼なのだ。
生きているのに。生きようとしているのに。
歯ぎしりをする。自分はこんなにも愚かだったのか。
……お姉さんは、自分が戦う意志を見せたことに、苦笑い。
それは、まあ、常識的に考えてそうだろう。6,7才ぽっちの身長の者に何が出来る。
近接戦闘?バカを言え、押しつぶされて終わりだ。
魔法による法撃戦?その程度の年かさでどれほどの修練を?
だから、お姉さんの苦笑いは正しく、また、その後の言葉とともに、自分に怪我をさせまいとする、正しい大人の姿。
そう。正しい大人だ。自分の体をこうした、狂った大人ではない。
自分の体が広く人に知れ渡ることは、あまりいいことではない。
今までも単独の伏撃や狙撃を続けてきた。
しかし、お姉さんたちが前衛戦力としてそのまま展開されれば、必ず被害が出る。
ならば嘘をつく必要もある。
「お姉さん。周囲のやるきの兵の方。僕は両手にまじないをされていて
片手ずつ、溜め込んだ魔力を打ち込むことができます。
敵前衛の位置が確認出来次第、位置を伝えて下さい。
一泡吹かせます。この状況でやる気はあっても、嘘はつけません」
ああ。結局。この程度の保身にはしるか。僕は。自己嫌悪だ。
■レナーテ > 小さくとも才がある子は強い事も知っているが、同時に年齢という絶対的な部分に準ずる身体の耐久力は覆せない。
まだまだ育ち盛りな少年が一太刀浴びるだけでも、殆ど行動不能となると考えていた。
被弾率が高い最前線より、動き回って戦い、且つ逃げる味方を狙う敵の背後をつけるリスクの低さ。
戦力の評価はなるべく正確に、教えられた通りに従った結果である。
そして、彼の宣言に他の兵士達は、一泡吹かせてやれと剣をかざして雄叫びを上げるが、壁上の少女達は戸惑いながらこちらを見やった。
(「……分かってます」)
そのまま彼が前に飛びしやしないかと、どうしても不安なのだろう。
しかし、勢いの腰を折るのも良くないと思えば、がんばりましょうと笑顔で締めくくりつつ、壁上への階段へと彼を導いていく。
折返しの階段を登れば、戦場にしては妙に可愛らしい服装の全容と、揺れる裾からシトラスの香りが零れ落ちていった。
「順番が色々おかしくなっちゃいましたけども……レナーテです、チェーンブレイカーという組織の秘書をしてます」
最近は何でもやらされてますけどと、冗談めかして微笑む中、周りの仲間達は小さな彼に、ちんまい子がきただの、可愛いねぇだのと、小柄な姿に笑みをこぼしながらスカートから伸びる尻尾を踊らせていた。
それでも気は緩まず、上空で偵察飛行をする仲間が敵の姿を捉える。
自分達にしか届かない思念の通話チャンネルに響いた声に、ぴくんと尻尾が跳ねると、一斉に少女達が銃口にメイスのようなアイテムを差し込み、それを暗い地平線へと向けていった。
「あそこ……あの大岩の裏側から来てるみたいです。頭が見えたらやっちゃってください、その後は私達が面制圧していきます」
視線を合わせるように屈むと、彼の目線をなぞるようにして魔族の領地側へ指先を向けた。
丁度地平線にかぶさる大きな岩が有り、そこの左右は林に囲まれ、道が狭まっている。
故に敵も、ギリギリまで近づいて一気に駆け抜けるつもりなのだろう、頭が中々見えない。
だが、それが見えれば戦いの火蓋は切って落とされる。
夜の戦いは、始まったばかり――…。
■レルタ > 子供を前に出したくない。その理由はよく分かる。
全てのスペックが低いのだ。それこそ、なにか人外の加護を篤く受けた英雄でない限りは。
常識的に考えれば、前に出ることは、死を意味する。
だからこそ、優しい大人であるお姉さんは、まず最初から自分を兵と数えようとしなかった。正しい。人としても、兵としても、将としても。
周囲の兵士たちの意気軒昂な雄叫び。気持ちがいい。誰かと戦うとはこういうことか。
此処で飛び出しては、なかなか、こう、心配ばかりさせるだろう。
自分のフルスペックで轡を並べるならば、引っ掻き回してやれるのに。
自分はどうして、こんなときに保身を考える。誰かから王城へ報告が行き、捕らわれるのを怖がっているからか?
だから、この場にいる誰かを命の危険に――
いや、やめだ。やると決めたことは、やる。
「僕は……レルタです。フリーで傭兵登録をしています。レルタ……姓はありません」
僕も、結構何でもやらされています。なんて笑顔を返して。
周囲の人達から色々とつっつかれると、ちょっとこまって顔が赤くなる。
そして、お姉さんが何かを捉えたと、動作から推測。
「なるほど。あの多岩 あれが防盾にもなっているわけですね。なるほど、イラつきますねえ」
丁寧な言葉からやや汚い言葉。戦場流のジョークとかはこういうものだと学んだので言ってみる。
たしかにあの岩は近い。あれを盾として、ギリギリまで。
そうか。そういう腹なら、一泡吹かせてやる――
ご案内:「タナール砦」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からレルタさんが去りました。