2018/10/05 のログ
シュティレ > 「強欲、ですからね。人間というものは、あれも欲しい、これも欲しい……その結果が、この繁栄なのでしょう。
後は、驚異になるものに対し、解決しようとする自己防衛も強いのでしょう」

珍しいものが欲しい、力が欲しい、なんにつけても、『自分』に満足をしない、だからこそ、更なるものを永遠に求め続け、発展していくのでしょう。
その速度が異常だからこそ、私たち血族は、彼らに関わりなくとも、目の敵にされ、襲われたりもするのでしょう。
妹の視線を追うように私は、人間たちを見下ろしています、戦の趨勢は、いつの間にか人間の防衛成功で終わりそうな雰囲気でした。

「ええ、良い見本がそこにありますわ。貪欲に上を目指した結果。

大丈夫です、ちゃんと一般的に流通している料理でおもてなししますから。
この国と、魔族の国で出るようなもので出しますから、好き嫌いはないと思っておきます。」

自分のために作る料理はありますが、人のために作る料理は久方ぶりのことです。
腕が錆びていないかどうか、しばらく練習しないといけませんね。
彼女の好き嫌いのないと言う言葉に安堵のため息を吐き出して、私は何を作りましょうか、と思考を這わせました。

「私も大好きです、ニア。これから、ゆっくりと家族として生きていきましょう。」

まだ、知り合ったばかり、姉妹になったばかりですし、もっといろいろ、いいところも、悪いところも、知りたく思います。
だから、ゆっくり家族として、と表現しました。
時間をかけて、一緒にいたいと思える娘……妹です。

「だめです、私が私を許せませんから。
甘えさせますけど、時には、厳しくもしますから。
ニアの為に、ちゃんと先に存在するものとして、義務が発生しますので。」

ええ、姉になるのです。
だから、ダメなものはダメ、ちゃんと叱ることのできる姉になります。
私のために、彼女のために。
甘やかしも、厳しさも、両方持って私は私として姉になります。
でも、今は優しく、甘く。彼女を癒してあげましょう。

ニア > 「それだといいのか悪いのかわからないわね……
…繁栄には犠牲がつきものってことかしら……残酷…」

でも、力が欲しいとかお金が欲しいとか
もちろん、彼女にだって覚えはあるけれど…
そんな簡単な感情で全てを壊してしまおうと、そんな風に考えることのできる人間に恐怖を覚えた。
そんな相手から金品を巻き上げ、復讐のつもりをしている自分は、奴らよりも臆病なのかもしれない。

「…でも、美しさや素敵さを求める貪欲なら、汚らわしいとは思わない。
それも立派でとても素敵なことだと私は思う。

ならよかった…
楽しみにしてる……」

自分のために料理を作ってくれる。
そんな相手ができただけでも今日は最高の1日だろう。
それはそれは、もう…感激で涙を零ししまいそうなほど嬉しい出来事だ。
しかし、ここで涙を見せることはしなかった。
せめて、今は笑ってこの人と一緒にいたいと思ったからだ。

「……っ、うん」

家族という響きに、ニアは俯き
今日1番の笑顔で微笑んだ。
そして自ら求めるように、彼女はシュティレの唇へ自身の唇を落そうと…
顔を近づけた。

「……自分にも厳しいのね。
…わかった。頼りにしてるわ…お姉ちゃん」

駄目と言い切る相手に敬意を込めて
名ではなく関係を求めるように、口にした言葉はとても子供っぽい声色だった。

シュティレ > 「良い、悪いの括りには出来そうもありませんね。彼らとの感覚が違いすぎますし。
弱肉強食……と言う、全てに当てはまる原初の理論でしょうね。誰かを踏み台にして、誰かが繁栄するという。」

動物でも、知的生物でも、それはやはり逃れられないものなのでしょう、筋力とか、権力とか、そういった違いがあれども。
強いものが、弱いものを捕まえて食う……それだけのことなのかもしれないと私は思いました。

「ニアが自信を持って誰かに紹介できる姉でいないと、ね。
それに、私たち血族は、美麗を良しとする一族ですから。

ええ。ええ、今から何を作るか……悩ましいです。」

何がいいでしょう、彼女は私の作る料理を食べてくれるかが不安です。私の知るコース料理がいいのでしょうか、それとも気軽に食べられる方がいいでしょうか……。
気軽いほうがよさそうです、コース料理とかは彼女、恐縮してしまいそうです。
家庭料理、いくつか調べないといけませんね。

「素敵です、ニア。もっと、その笑顔を作れるように、私も協力しないと。」

彼女は、可愛らしく笑ってくれます。その笑顔は輝かしくて、私は目を細めてしまいます。
眩しい、いいものを見せてくれる彼女、その笑顔を守りたい、そう思います。

「そうでなければ、私の血族は務まりませんから。私の職務としては。堕落した血族の誅伐。
人にも、自分にも厳しくしていないと、務まりません。」

そういえば、と手袋に包まれた右手を見ましょう。
醜く焼けただれたそれを、これを見せたら、悲しませてしまいそうです。
けれど、見せてあげなければいけませんねと、私は小さく苦い笑みを浮かべてしまいます。

でも、今は甘えてくる小さな妹を抱きしめ、頭を撫でて後でにしましょう。

ニア > 「…人間は悪い者ばかりじゃないしね……
まあ、それは魔族もそうなんだろうけど…」

その違いこそが、争いの原因なのかもしれない。
だが、それも個性と受け入れられれば悲しい惨劇は怒らないのに…
酷く胸は痛むものの、自分の力ではどうすることもできない問題なので、スルーしなければ…

「もうとっくに自慢の姉だけどね…
確かに、血族って皆綺麗な人ばかり……やっぱり血を吸うと美しくなれるものなの…?

私は何を作ってもらっても嬉しいよ……」

シュティレの不安は大して気にしなくてもいいものだろう。
彼女は意外にも何でもよく食べるので、よほど酷いものじゃなければ質はあまり求めない。
それでも、やっぱり誰かが作ってくれたものは美味しいというのだけは解っていた。

「ふふっ……ありがとう。ほんとに、ありがとう……」

この笑顔は本気で心を開いたものにしか見せることはないだろう。
弱さも辛さも、そして幸福も
全てを含んだこの笑顔が向けられることの意味は「絶対的な信頼」なのだと。

「凄く厳しいど、かっこいい……
そういうところ、嫌いじゃない……」

シュティレの手を見た。
それはひどく痛々しく、でも…きっとそれもシュティレの誇りなのだと思ったら、目を逸らすことなくしっかりと見つめていた。
逆に、そんな相手を守りたいとも思ってしまった自分は、一体何なんだろうか……
幾つか複雑な感情が残るものの、今宵はすっかりと姉に甘えまくった。
そして、二人して向かうは新たな生活の始まりへと…
そんな二人の行く先を、戦場で争う者達は見送ったのであった────

シュティレ > 「個としては、判り会えましょう、しかし、種としては、そうもいかないのが、世の常。」

そう、ヒトと友人になったら、悪魔に取り憑かれたと、ヒトである友人ごと滅ぼしに来ることも記憶にあります。
種として理解が貰えなければ、結局……という話になるのでしょう。
彼女の優しさはそういうことにも心を痛めてしまうのでしょう。

「いいえ?いいえ。違います。
綺麗にあろうと、日々心身を鍛え、身だしなみに気を払ってるのでう。
私の血族は生きながらえるのに血を吸う必要はありません。血族に迎え入れるときにのみ、首筋に口づけるのです。
食事ではなく、求愛行為、もしくは、生殖行為ですね。

それなら、ええ。分かりました。」

彼女は何を作ってもらってもいいとのこと、それなら、迎え入れるのですから、と私は手を握りましょう。
フルコースです、ええ。心も、味覚も、お腹も満足してもらうなら、それが一番なのです。
料理の味ではなくて、格式を心配していたのですが、彼女は大丈夫とのことなので、遠慮なく腕をふるいましょう。

「何度も、お礼は言わなくても大丈夫です。一言で、充分あなたの感謝は届いておりますから。」

嗚呼、彼女の素晴らしい笑顔に、私は見惚れてしまいました。そして、目を伏せて、笑みを返して答えるのです、
この先の彼女に幸福あれと、心からの想いを持って。

「詳しい話は、また、後にしましょう。
 今日は、一度、荷物を取りにお戻りなさい?
 私の家の場所は富裕層の―――――」

私は、私の家の場所を伝えましょう、そして、彼女が今住んでいる場所に置いてある荷物を取りに行くように。
共に住まうのだから、部屋をもう一度清掃し直しもしないといけないでしょう。
そして、共にマグメールへと戻り、その入口で分かれるのでした。

そんな、一つの夜のお話―――――。

ご案内:「タナール砦」からニアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からシュティレさんが去りました。