2018/09/30 のログ
ご案内:「タナール砦」に仮面の魔将さんが現れました。
■仮面の魔将 > 夜のタナール。
不気味な雄たけびとともにあらわれる第七軍『不夜戦列』。
最早何度目かも分からぬその襲撃に、砦の守備隊は迅速に情報を連絡する。
『――戦争の時間だッ!』
魔将の号令のもと、不死者達は再度雄たけびを上げる。
今宵も生ある者を貪り、己たちの同胞とする為に。
ご案内:「タナール砦」にアーヴァインさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」からアーヴァインさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 組合長がティルヒアへ出向いている最中の出動依頼が飛び込み、集落は慌ただしくなる。
指揮を執れるのも自分だけの中、師にかなり強引な応急処置を身体に施して貰った上で、展開を急ぐ。
砦の向こう側から大きな鳥達が無数の群れを成してやってくるのが、彼にも見えるだろうか。
隼の方は砦周辺で籠状のものを投下し、一旦旋回して砦より先には出ようとしない。
籠の方は風の力で減速しつつ、地面を滑るように着地すると、乗り込んでいた少女達が魔法銃を携えて一斉に砦の中を目指す。
6人一組になった少女達が砦内へ展開していく最中、別働隊の少女達も展開する。
前哨狙撃隊の6人一組グループが二班、砦の左右を回って茂みや稜線、岩陰に木陰も使い、身を低くしながら猫が如く俊敏に駆け抜ける。
目指すは左右で使えそうな狙撃ポイント、まずはそこを抑えられるかが肝心だった。
『スノウフルーフ隊は地上攻撃準備をしつつ、最高度を維持してください。リトルストーム隊は人員の展開、回収の準備を。クリムゾンクレスト隊3名は砦を超えて、敵の偵察を。ある程度見えたら直ぐ逃げてください』
普段なら偵察は隼の方に任せることが多いが、既に敵がいると聞いての行動。
トップスピードと攻撃性のある彼等の方が、現状は適任と考えれば、鶏冠を被った大きなマシコが3羽、群れから飛び出して砦の向こうを目指す。
とはいえ、あまり孤立はしすぎない程度、程々の距離感を保ちながら敵陣へと近づいていき、背中に乗る少女が地上の様子を獣の瞳で見下ろした。
攻撃されれば直ぐ逃げれるように、退避の心構えは常にしつつ、展開と様子見に初手を費やす。
■仮面の魔将 > 目視確認。
どうやら敵は籠城策をとるようだ。
なら、こちらのやる事は変わらない。
『攻撃を開始しろ!』
迫るはグール、スケルトンの軍団。
ゆっくりとした進行だが、とりでからの飛び道具にも怯まず城壁へ進む。
同時に空にはドラグニールが展開。
アンデッドワイバーンに乗ったアンデッドナイトが飛行し、砦の上空を取ろうと侵攻を開始する。
■レナーテ > 『骨っぽいのと、死体っぽいのが遅いけどワラワラしてるよ。あと、何か気持ち悪いドラゴンっぽいのに乗ったのが居る。こっち来るっぽい』
鳥達の念話の領域を使い、偵察に出た少女が状況を伝えていく。
一旦戻るように少女達に伝えると、最高度を維持するエナガ達の方を一度見上げた。
自分達よりもかなり高い位置に居るため、はっきりとは見えないが、白い羽が夜闇ではなく雲に溶け込みそうだ。
『スノウフルーフ隊は砦左右へ展開してください、そこから地上を移動する魔物へ攻撃を。リトルストーム隊は彼等の援護をお願いします』
左右へと移動していくエナガ達は、指定ポイントまで移動すると、そこで翼をバタつかせながら滞空していく。
ひゅおっと冷気の交じる吐息を小穂す彼らから魔力が溢れ出すと、周囲に冷気の球体が幾つも浮かび上がる。
そして、そこから放たれるのは冷気で圧縮して作られた、大きな無数の氷柱。
重力と風の力を帯びて加速、緩い照準誘導を行いながら、進行する不死の軍団を頭上から攻撃しようとする。
死傷に至らずとも、質量の大きい氷での攻撃であれば、地面に串刺しにして縫い付けることも、衝撃でバラバラにすることもできるはずと狙ってのことだ。
彼等が展開する合間も、こちらも次の手を重ねていく。
『クリムゾンクレスト隊は、敵の竜騎兵を攻撃します。各位、イグニッションブースト準備を』
りょうかーいと間延びした返事が戻る中、マシコの軍勢はそれぞれ竜騎兵へ正面から迫るように加速していく。
風の気流を後ろへと圧縮して押し流し、それによって前へ前へと加速していくのだが、竜騎兵との距離がある程度狭まれば、そこに火を放つ。
パァンッ!! と無数の炸裂音を響かせながら、鳥達は風と炎の気流をまといながら音速の領域へ一気に飛び込んでいく。
一瞬にして、彼等の脇を通り抜けるように音速飛行をしようと狙うのには意味がある。
通り過ぎた瞬間に発生する、激しい気流は翼で滞空する存在には、耐えるための足場たる空気を滅茶苦茶に掻き乱し、衝撃でバランスも崩すことになるからだ。
上手く行けば、きりもんでそのまま落下するなり、耐えるのに翼を痛めて飛行能力を低下させられる筈と進行の妨害が始まる。
『皆っ、大地系か氷系、なかったら炎系の弾丸で足狙いだよ!』
『次々撃って撃って撃ちまくれぇ~!』
城壁の上へ駆け上った少女達は一斉に魔法銃を構える。
先日の戦いからも、とにかく進行を遅らせことが大事だと念頭に置き、魔法弾ではなく質量弾の指示が飛び交う。
射程に入ったところで、火打ち石や黒壇を用いた大地魔法の弾丸がアンデッドの足を狙う。
膝や腰、足の甲など、とにかく動けなくできそうなところを狙って飛び交う。
炎系も、熱を圧縮した熱線状の弾丸でそれらを狙い、他の弾丸の阻害にならないように徹する。
ただ、6人組の中でも、剣を携えている少女達は別であり、剣を銃のように構えながら、申し訳程度に魔法弾を放って、衝撃で動きを止めることを狙う。
止まれば別の娘が撃ち抜くことで、確実なダメージを狙い、地上の連携行動も繰り返されていく。
■仮面の魔将 > 頭上からの攻撃。
それに地上では連携をとった弾幕での制圧射撃。
所詮は脳を持たないアンデッドどもだ。ただ侵攻し、そして撃たれ地に伏す。
――だが、問題は別の所にあった。
『――ちっ、消滅しないせいで次の奴が召喚できねぇじゃねぇか』
アンデッド軍団の展開には限度がある。
主であるロザリアの魔力による軍団はほぼ無限。尽きる事はない。
だが、主の魔力を水晶の谷にある魔力水晶を経由して送信している以上、送信器の能力に限度がある。
よって、展開できる軍団の数にも制限がある。戦力にならなくなったアンデッドは、とっとと土に還ってもらわねば次の戦力が生み出せない。
『――構わん、ファントムを出せ。崩れかけのアンデッドどもは全て吸収しろ!』
続いて出てくるのはゴーストの集合体。
それは斃れるアンデッド軍団の上へ到達すると、その身体を吸収、咀嚼し、さらに巨大になっていく。
おまけにこいつは物理攻撃が効かない。さて、どうする事やら。
一方で空の戦いでもアンデッド軍団は不利だった。
何せこちらの武器は槍。空中でも銃を使える相手には歯が立たない。
『――出番だお前ら。上空を狙え!』
出てくるのは魔将直卒のレギオングール。
熟練の戦士のアンデッド達は、手に持つ銃のような筒を空中に向け、マシコたちへ向かって銃撃を開始する。
■レナーテ > 『レナちゃんっ、何か奥から変なの出てきたよ!?』
『おばけ?おばけっぽいなんかっ!』
次々とアンデッドを地面に縫い付けていく中、後方から出てきた何かがその図体を大きくしていく。
それを見やりながら、念話の領域へ支持を求める声が聞こえれば、地上を一瞥していった。
先程までの魔物とは系統が異なる様子だが、それこそ相手としては一番やりやすい方だと思えば指示を飛ばしていく。
『大地系、氷の弾丸が聞かないなら自分で行ったとおりのオバケです。魔力弾、炎系で対処を』
任せろと言わんばかりに景気の良い返事が変えると、少女達は銃口に青白い魔法陣や赤の魔法陣を浮かばせる。
青白い方は、魔力を圧縮した魔力弾。
エネルギーの集合体であり、直撃した瞬間に魔力が実体のない対象にもエネルギーとして破壊の力を伝えられるはず。
赤は変わらぬ熱線の弾丸と、炎の弾丸。
当たれば焼き尽くす熱と炎が、同様にエネルギーとして破壊を伝えようとするはず。
そして、大きくなったことも良いとは言えないかも知れない。
細かい照準をつける必要がなくなれば、無遠慮に連射を繰り返し、チャンスが有れば破壊力を強化する魔石を用いた増幅弾で攻勢を強め、ファントムを蜂の巣にせんと攻撃していく。
『何か、銃持ったの出てきたよ?』
その報告をしたのは、最初に展開し、茂みに伏して単眼鏡で様子を伺っていた狙撃班だ。
最大望遠にあわせて確かめつつも、持ち方や大まかな形状からそれを判断していく。
そして、それが空へ向けられた瞬間、レンズを覗き込む少女達は息を呑む。
『クレスト隊っ、下から撃ってくるよっ!!』
その声に呼応し、急旋回の軌道で一気に加速していく。
それこそ、明らかに射撃の瞬間を察したというのが分かるほどの動きでバラバラの旋回で照準をずらしてしまう。
もとより、通常飛行でも竜とは異なり、空気を翼で叩いて飛行することは少ない。
飛翔という言葉のとおりに空を滑り、その速度は通常でも音速の半分が出ることもあるのだ。
重力に引っ張られる鉛なら、余計に届くには難しいだろう。
『っ! 狙撃班は増幅弾で遠慮なく、向こうの射手に炎系を撃ち込んでください』
念話の領域から届くダイレクトな命令に、狙撃銃を携える少女達は狙いを定める。
通常射程を通り越すかもしれないことを考え、有効ではなく、最大射程で届かせる狙いへ切り替えた。
レティクルを上気味に偏差をとり、魔力を一気に充填すると、赤い魔法陣が砦の左右に小さく光るのが見えるだろうか。
直ぐにそれは消えるが、代わりに真っ赤な火炎弾が飛翔し、彼等のもとに届く頃には弧を描く軌道に変わるだろう。
何かにぶつかれば、周囲に瞬時に火炎を撒き散らす炎の弾丸が二つ。
左右から襲いかかり、レギオン達を面制圧しようと不意打ちを仕掛ける。
■仮面の魔将 > 一斉放火でファントムは沈黙。
最後に凄まじい爆発をして消え去るが、遠距離攻撃相手ではたいした効果もないだろう。
だが、本領発揮はここからだ。
『――サモン・アンデッド』
倒されれば補充できる。
そのまま召喚をすれば、再び同じ場所へ現れるアンデッドの大軍。
一歩、また一歩と、銃弾をものともせず、ゆっくり城壁へと近づいていく。
だが、レギオングール達の反応はそのようなものではない。
まるで戦闘で陣形を整えるように――『身体が覚えているかのように』。
相手の砲撃に対し、レギオンたちは一斉に『盾を構える』。
ボロボロになってなお、魔王の一撃すら防いだその方陣による防御陣形は衰える事なく。
射撃の合間を縫い、盾の隙間から砲撃が弱まった隙を突いて銃撃を続ける。
『――よく訓練されてやがる』
狙撃種や鳥達を見て魔将は呟く。
■レナーテ > 『んにゃぁっ!?』
『うっふぁっ!?』
大爆発にピンッと耳と尻尾を立たせながら、猫のように驚きながら壁の裏にしゃがみ込む少女達。
大した損害はこちらには届かなかったが、度肝を抜かれ、鼓動を昂ぶらせながらそろりと壁の上から猫たちが顔を覗かせる。
そしてそこには、再び復活したアンデッド達。
『また骨と腐ってるのでてるよっ!?』
『っ!? 一旦、さっきと同じ迎撃をしてください。限界線は前回と同じ300mです。砦内に残ってる王国軍の方にも、撤退の指示を』
消耗戦へともつれ込むのは一番やりたくない流れである。
少数精鋭であり、且つ粒の育ちを大事にしているこちらとしては損失はしたくない。
つまり、削り合いは一番避けるべき戦い方となる。
損失を伴わない限界線を伝えると、少女達は同じ様に質量のある弾丸で足止めを狙い、再び最高度からは、エナガによる氷柱攻撃が降り注ぎ、彼等の動きを封じに掛かる。
『うっそぉっ!?』
『ぁーもー……自信無くしそうだよぉ』
前回の戦いでも狙撃を担当した少女二人からすれば、不意打ちの炎攻撃の失敗は、かなり落胆する結果となる。
砲撃に近い弾丸が盾に防がれると、その表面を流れるように炎が広がって防がれてしまう。
元々、この手の面制圧はおまけ程度にしか出来ないが故に、防がれればこの通りの結果だ。
それよりも、反応されて防がれたのが二度目なのが、狙撃手としての誇りをじくじくと痛めつける。
ガコンッとボルトを引いて殻を排出すると、改めて増幅弾を装填するも、がっちりと守られている合間を抜けて狙撃するには距離が少々遠い。
『ごめん、ここからだと直撃ど真ん中難しいよ』
『分かりました…位置を変えつつ、相手の様子見を。まずそうなら遠慮なく逃げてください』
切り札である装備を使うという手段も考えられたが、それはまだ使うには早い。
これは使うべきタイミングが決まりきった武器故に、敵を殲滅するだけでには使えない。
前哨行動を命じつつも、安全重視の行動を取るようにも重ねておく。
そそくさと少女達は身を低くしながら次の茂みへと移動していくと、再び伏せながら単眼鏡で遠くの敵陣の様子を伺う。
『当たらない様に気をつけてね!』
『その……前に、私……吐く、かもぉ……っ』
竜騎兵の周辺を音速で飛び抜けた後は、速度を維持したまま飛翔し、側面攻撃を狙って飛び続ける。
加速し、減速し、そして加速と繰り返す鳥達は、不規則な動きで飛び回りつつ、竜の翼や顔面、特に目や口と言った脆そうなところを狙おうとしつつ、魔法銃での攻撃を繰り返す。
だが、それだけの行動を繰り返せば、騎手たる少女達の三半規管は滅茶苦茶に掻き回される。
後方に待機する数名と入れ替わりながら、鳥達は飛び回り、空でゲロを吐かないように戦い続けていく。
翼や胴体に、多少の被弾で体力を削られながらも血の気に滾るマシコ達は、通り過ぎざまに炎をぶつけようとしていった。
■仮面の魔将 > とはいえ、素の能力が違いすぎる。
アンデッドは無限に沸くが、所詮は対応能力の無い脳まで腐った連中だ。
ただ進み、喰らい、貪るのみ。
再び足を撃たれ崩れると、またファントムがゆっくりと浮いて前進してくる。
とはいえ、今度は前線まで距離があるゆえ、アンデッドを吸い込む事は出来ていない。
ドラグニールの方も同じで、高速で飛び回る飛翔兵に対応できていない。
槍を振るうも大ぶりで、当たるものでもなく、次々と側面攻撃により落とされていく。
『――対空戦闘のノウハウまで叩き込むのは無理ってもんだな』
仕方が無い。こちらに近づけないのが精一杯だろう。
盾を構えたレギオングールたちが弾幕を張り、せめて魔将に飛行兵達を近づけんとする。
戦いは千日手に入ろうとしているだろうか。
■レナーテ > 『またオバケだっ』
『回路が、焼き付きそぉっ!!』
無限湧きの効力は、装備の方へ負荷として現れる。
再びファントムへと切り替え、アンデッドを吸い込もうと近づいてくるなら、ひたすらに魔法弾と炎と熱が撃ち込まれていく事になる。
だが、魔術を簡易化するために施された術式の回路は、魔力が流れる度に負荷を受けていく。
幾度も繰り返し、増幅弾で過負荷までかければ、そのうち撃てなくなるのだ。
先の展開で運び込んでいた予備の銃も数十あるが、多くはない。
再びファントムの対応が終わる頃には、小銃ではなくリボルバー型の予備の魔法銃を抜く少女の姿もちらほら見え始めていた。
『ドラゴン、落とせてきたよっ』
『あまり勇んで孤立しちゃ駄目だよ、ちゃんと距離感忘れず!』
機動性と射撃の合わせ技で、竜騎兵を沈めていくも、孤立すれば不意打ちで落ちるリスクも増える。
攻撃すれば、必ず一度は周りを見渡して距離感を確かめ、次の行動に移り、一定間隔を忘れない。
王国から金をふんだくって増員した価値は確りと見せつけながらも、将軍への接近を阻む射撃もあって、それ以上踏み出せずに飛び回る。
『多目的船の砲撃も、展開するまでにこちらの維持力が持たないですね……撤退しましょう。速やかに撤収です』
狙撃班を待機させたのも、最大の面制圧装備である、多目的線からの魔力砲弾を用いた砲撃を行うための観測目的もあった。
しかし、発射可能な位置へ移動し、魔力の充填、発射までかかる時間を、安全に耐えきれるほど相手の戦力は弱くも少なくもない。
渋い表情で念話の領域で総員に伝えると、まずは狙撃班から下がっていき、茂みから静かに砦を超えた王国側へと走っていく。
その合間も300mの境界線ギリギリまでの応戦を繰り返す少女達も、そこを超える手前になると、次々と砦の内側へ飛び降りて、王国側へと走っていくのだ。
その後は撤収用の籠に乗り込み、隼達が掴んで飛び立つだけのこと。
その殿を務めるように、マシコ達は飛び回り、竜騎兵の迎撃に当たり続けた。
勿論、その少し後ろで旋回軌道で飛びながら、様子見に徹する自身も引くわけには行かない。
■仮面の魔将 > ようやく物量戦の効果があらわれはじめたか。
とはいえ、随分と進軍速度を遅らされてしまった。
この分では砦の中の王国軍の戦力はとっくに撤退しているだろう。
アンデッド達に進軍を命じながら魔将はぼやく。
『――やりにきぃな』
こうも時間稼ぎに徹せられると、こちらも打てる手は少なくなる。
新たな攻城用のアンデッド運用を考えるべきか。
ドラグニールも敵の機動力に翻弄されロクに働けず。
レギオンは魔将の防衛から離れて追撃する事もせず。
ゆっくりと、確実に軍団は砦へ向かう。
■レナーテ > 『撤退、てったぁーいっ!』
『急げ急げっ!』
ぴょいぴょいと飛び降りていくミレーの少女達が、彼の想定を肯定していく事になる。
最後の班が撤退用の籠に乗り込み、飛び立ったところで撤収完了の確認が始まっていく。
各班全員と念話網をつなげているわけではなく、班のリーダーか連絡役を筆頭にして、網をつなげていた。
故に、各班に全員いるか、撤退したかの確認は少しだけ時間を有する。
『……全班撤退完了です、最後にイグニッションブーストして撤退します』
『全力てったぁいっ!!』
竜騎兵の追撃を振り払うように、飛び回るマシコ達が一斉に音速飛行へと突入して王都側へと飛び込んでいく。
クリムゾンクレストが全羽戦線を離脱していくのを目視したところで、自身も後に続くようにひいていく。
その結果、砦には静寂と撃ちまくられた増幅弾の薬莢、慌ただしい兵士達の足跡だけが残り、人間は誰一人残っていない。
砦の所有権は今宵、彼へと渡るだろうが、こちらも仕事を熟した。
その結果を胸に、少女達は次に繋ぐための撤退へと消えていく。
■仮面の魔将 > ――後に残るものは何もない。
生者が居ない砦に居るのは死者のみ。
ならば、こちらは次に繋ぐものすらない。
ただ、伽藍の堂を占拠しただけ。
『――撤退だ』
追撃するのも馬鹿らしい。
完全なる『負け戦』を腹立たしく思いながらも。
魔将はアンデッドを全て地に還し、自らも魔族の国へと撤退する。
ご案内:「タナール砦」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」から仮面の魔将さんが去りました。