2018/09/21 のログ
ご案内:「タナール砦」に仮面の魔将さんが現れました。
仮面の魔将 > タナール砦の夜。
機兵の対応に追われ守備が手薄になったその夜。
仮面の魔将は再びあらわれる。

『――戦争の時間だッ!!!』

仮面の魔将 > だが守備兵もよく耐える。
敵の召喚魔法に対抗すべく聖水を利用し、アンデッド達をたくみに城壁に近づけない。
召喚されたアンデッドはすぐさま聖なる力と炎で処理。
今宵は守備兵の方が魔将を上回るかに見えた。

『――あれを用意しろ』

魔将は静かに言う。

仮面の魔将 > 用意されたのは、デュラハンと呼ばれる戦車に乗った首無し騎士の一団。
アンデッドとしては中級だが、その力は並みの冒険者を凌駕する。
その一団に、仮面の魔将は命じる。

『あれがゴールだ――ブチ破れ』

魔将が指差すのは砦北門。
デュラハンたちは戦車を駆り、一斉に砦に向かって突撃し――

城門の前で自爆する

仮面の魔将 > デュラハンは止まらない、尽きない。
たとえ聖なる光で焼き尽くされようと
たとえ弓矢で射抜かれようと
たとえ魔力を失い霧散しようと

次から次へと城門へ突っ込み、到達したデュラハンは魔力を暴走させ自爆する。
自我を持ったアンデッドによる自爆特攻の連続。
それが魔将がタナールの王国軍に向けて仕掛けた一手だった。

ご案内:「タナール砦」にロザリアさんが現れました。
ロザリア >  
仮面の魔将が率いる軍勢──
その攻砦戦を空から見下ろすエメラルドの双眼

「………」

小さく嘆息する
やれやれ、と言った風情で

小さなその影はゆっくりとその地へ、今まさに進軍の指揮を取るその者のところへと降り立つ

「──随分と勝手をしているようだな」

小さな鈴の音のような声は、怒号犇めく戦争のど真ん中でも不思議とよく通った

仮面の魔将 > 魔将はその声にゆっくり振り返る。
不気味な仮面は外す事なく。

それでも主の前であるからなのか。
乗っていたナイトメアから下馬し、ゆっくり一礼してみせた。

『――よぉ、こんなとこまで何の用だ』

しかし、発せられた声は態度とは真逆。
物好きな事だと、まるで揶揄するような声。
それは、魔将がこの主・吸血鬼ロザリアに対し複雑な立場である事を示していた。


城門は半壊寸前。
砦では怒号が響きながら、このまま破られるよりかはと王国軍が出撃し、デュラハンの前に立ち塞がる。
戦闘は佳境に入ろうとしていた。

ロザリア >  
「何の用か、だと?」

僅かに苛立ちを覚えたような声色
その眼を細め、目の前の男を射抜くように見据える

「魔族の国にも領土が在る。此処を遊び場にする魔王どもも少なくはない。
 ──拾った犬といえど牙を剥き放題にさせておけば吾の沽券に関わるというものであろう」

再び嘆息し、その細い肩を竦めて見せる

「それに、どの道貴様は王国に踏み入ることなどは出来ぬ。いくら砦を落とそうとも。
 アイオーンの恩寵残る彼の地に闇の軍勢で攻め入る等、愚の骨頂であるぞ」

暗に言っているのだ
貴様のやっていることはすべて無駄である、と

仮面の魔将 > 『そうか、そりゃ大変だな。外交頑張ってくれよ、我が主?』

笑いながら言ってのける。
牙を与えたのはお前だ、俺はそういう存在なのだと。
かつて人間であった時ですら、その野心の赴くまま、魔族に牙を突きたてていたのが自分だ。
ましてや不死者となった今、なんの遠慮をする事があろうか。

『――それが、お前らの最大の間違いだ。アイオーンの恩寵が健在だった頃から今まで、200年の月日が流れた。
その加護は今、どうなってる?』

魔将は言う。
アイオーンの加護は魔族の存在を抑え続けた。
その加護は絶対のものとして、魔族の力を撥ね退ける。

だが、「加護の存在そのもの」は絶対ではない。
現に、かつてよりもその加護は弱まっている。

今日は加護があった、明日はあるのか?
明日も加護があったとしよう。では明後日は?
一年後はどうだ?
十年後は?
百年後も、アイオーンの恩寵は人間を護っているのか?

『何故試さない? 何故諦める?
アイオーンの加護なぞ、絶対のものではない!
十年後か、百年後か、千年の未来か!
その加護が消えれば、魔族がこの大地の支配者となるだろう。
その日まで、何故試し続けない!?
俺達には、無限の時間があるだろうが!!!』

ロザリア >  
「……」

三度、今度は大きな溜息
基本的には面倒事を嫌う城主である
特に個性の塊のような魔王どもと細かい話をするなど、面倒の極地でしかないではないか

「人の地で今信仰されているのは吾らの神ヤルダバオート。
 信仰を失った神の力などは当然薄れ、加護は霞みゆく…そのようなことは吾とて知っている」

でなければそもそも力を抑えられた状態といえど、王国の領地に足を運ぶことすらもできない筈
しかし、話の焦点はそこではない、とロザリアは言葉を続ける

「吾は人間を忌み嫌っているが同時に大事な食料でもあるのでな…。魔族がこの地を支配どうこうなどということに興味はない。
 ──貴様がそういった性分であるのは理解っていたが、な。
 吾の魂縛りの上でまで暴れまわるとは些か想定外ではあった。
 ……もう良い、好きにするがいい。ただし──」

ふ、と小さく息を吐く

「貴様は放し飼いの犬とする。
 他の魔王共に難癖をつけられても吾は貴様を保護などせぬぞ」

仮面の魔将 > 『そりゃありがたい。
折角もらった第二の身体だ。せいぜい暴れてやるさ』

呵呵大笑しながら言ってのける。

城門の方は決着がついたようだ。
デュラハンに対し防衛線を敷いた王国軍に対し、レギオングールたちが一斉に銃を斉射。その戦列に風穴を開けた。
そして、その穴に対し突っ込んだデュラハンたちが自爆。戦線は崩壊する。

『――あぁ。先に謝っとく。他の魔王を打ち滅ぼして領地が増えちまったら、お前の面倒が増えるからな』

己の負ける事など考えもしない。
人間であった時ですらそうだった。
ましてや、かつての退魔の戦歴とこの不死の力を得た自分ならば。
そこらの魔王程度に負ける気など、欠片もしなかった。

ロザリア >  
「…好きにしろ、という言葉は誤りであったな。…勝手にするがよい」

覇権にも支配にもさしたる興味はない
もう少し扱いが良ければ戦利品──美味な血を持っていそうな人間の献上なぞをさせようかと思っていたが、
この狂犬の気性ではどうせその前に食ってしまうとしか思えない

「貴様のような者を飼っていたマグメール王国軍とやらはさぞ苦労したのであろうな」

言われたい放題でいるのも気分が悪い
皮肉めいた言葉をその背へと投げかけ、その戦列へと視線を移す

──アンデッドの軍勢自体は自分自身の保有するものである
しかしこういった使い方をするなどということは全く考えつきすらしなかった
人の身で、魔族を討伐し続けた経験と知恵の為せる技か
その采配、その部分だけは、素直に感嘆を覚える

仮面の魔将 > 『人間だった頃によく言われたもん、だ……』

「貴方のせいでとんだ苦労を背負った」
「お前はいつもそうだ、勝手をして」
「まったく、とんでもない時代に生まれてしまったものだ」

――懐かしい声が聞こえる。
耳の奥に、かすかに残った、美しい、鈴の音のような声。
魔将がつとめて忘れようとしていた、女の、呆れたような声。

もう、顔も思い出せない。
かつて、人間であった頃に、もっとも大切だったもの。

――その姿を垣間見てしまった魔将は、途端に不機嫌な顔になる。
仮面のせいで、誰にも見えないが。

『――出るぞ。直衛隊、俺に続けッ!!!』

大剣を持ち、ナイトメアに跨ると。
魔将は主との会話を打ち切り、自ら突撃を始める。

ロザリア >  
こういった、戦争の知識などは皆無に等しい
そもそも領地があるといってもほとんど自治に任せ、危険が及んだ時にだけ手助けをする、程度のもの
煩わしいことがなければ、ただひたすら自分の城に引きこもり魔導書を読み耽るだけの時間が続くような、そんなヴァンパイアである
それでも、理解る

「…将が自ら突撃してゆくなど、愚策ではないのか…?」

黒馬に跨がり先陣を切って突っ込んでゆく男を見ながら、怪訝な顔をするしかなかった

「…精々暴れよ。吾に不死者に落とされて尚縛られぬのであれば、
 その新たな肉体が朽ち果てるのもまた戦場なのであろう。
 ───つくづく、救えぬ男」

そう呟いて、少女の姿をしたヴァンパイアはその場から消え失せた───

ご案内:「タナール砦」からロザリアさんが去りました。
仮面の魔将 > もとより救いなど求めてはいないが。
それでも吸血鬼の言う「救えぬ男」という言葉こそが、魔将にもっとも相応しい形容である事は間違いない。

人族にあっては魔を断ち野心に身を滅ぼした
魔族にあっては人を滅し制覇に心を砕く

度し難い、救えぬ男は自らの手でタナールの守備隊を制圧する。
王国軍も慣れたものですばやく撤退するが、それを追撃する事は出来ない。
砦の向こうは、アイオーンの加護ある国だ

仮面の魔将 > タナールを制圧後、第七軍は王国へ侵攻しようとしてまたしても消え去った。

アイオーンの加護が尽きるその日まで。
魔将は再び戻ってくるために魔族の国へと消える。

ご案内:「タナール砦」から仮面の魔将さんが去りました。