2018/07/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「あ~あ~ったく……ひでぇ有様だな……――」

砦から、魔族側の陣を眺めつつ、男が呟く。
野営の灯りがまたその数を増やしていた。
戦況は俄然魔族有利――魔族の国へ侵攻した王国軍の有力師団が敗走したという噂は、どうやら真実らしい。
魔族軍の砦への攻撃は、日増しに激しくなっている。
さりとて、ここを放棄するわけにもいかない――いつだって消耗戦は辛いものだが、文字通りここは最後の砦なのだ。

「……ったく、こうなりゃ魔族の側にでも寝返っちまおうかな――」

人間側が支配する砦の歩哨に立たされた男が、誰かに聞かれたら物理的に首が飛びかねない台詞をこぼす。
かつて魔族を含めた種族混成部隊に身を置いていた男にとっては、異種間の争いというものにさして矜持を見出すことができないのである。
さりとて、人生の半分以上を戦場で生きてきた身――この世界から離れることも、もはや不可能であった。
事実、血生臭い芳香や、命の取り合いをしている時にこそ、生き甲斐を感じてしまっている――

エズラ > 「ん~……――!」

不意に、男の両目が細められる。
奇妙な違和感を感じ、こめかみに指を当てる。
しばらく何ごとかごにょごにょと呟き――遅れて遠視の魔術が発動。
双眸が淡い光を帯び、夜陰を見通した。

「こりゃ~やべぇ!」

斥候――と呼ぶにはいささかその数が多い一段が、音もなく砦に向けて侵攻を始めている。
どうやら、夜目の利く種族で構成されているらしい。
自分もかつて、こういう夜襲を繰り返し実行したことを思い出しつつ立ち上がり――


「砦中に知らせろ!襲撃だ!」

怒号を張り上げ、物見櫓の仲間に伝達――今夜も長い夜になりそうである――

ご案内:「タナール砦」からエズラさんが去りました。