2018/06/27 のログ
■影時 > 「面倒だが、出しゃばっちゃあ……ああ、いや、面倒だ。後始末のさらに後始末なんざ、請け負ってねぇぞ俺は」
野戦の後の撤収作業等は昔取った杵柄もあり、お手の者である。
しかし、この手の後始末の作業についてどれだけ心得たものが居るだろうか?
海水を被った土地の復旧、整備となるといよいよ、水脈の具合も確かめた上での灌漑すら必要になることもある。
少なからず知っているからこそ、言えることがある。
知識があるからこそ、諜報等の目的を果たすために分け入った土地に混じり、警戒心を無くす一助にも出来る。
気を紛らわせよう。纏う外套の下、腰裏の物入れに手を入れて煙管を取り出す。
薬効を持つ煙を出す薬草を煙草代わりに詰め込み、かちかちと火打石を使って火を灯そう。ぷかりと煙を吐けば。
「……ンー? 前に聞いた声だぞ。
あー、たしか、あんたはこの前の。火を放つなら、こっちだ」
ふと、聞こえてくる声に樽から身を離し、煙管を手に聞こえてきた方角へと歩もう。
騎士に声をかける姿に確かと記憶を漁りつつ、こっちだとばかりに手招きしてみせよう。
■紅月 > 騎士に訊いたら、野なら焼いて良いらしい…『野』なら。
いっそ砦の中も焼きたい…あんなの(フナムシ)だらけの仕事場とか怖い、超怖い。
ああいうのは自然の中だからこそ許されるのであって、家の内では御免被る…切実に。
「…ん、うん?
あれっ…あ、あのときの!
うわぁ久しぶり、改めて甘味ごっそーさん!」
げんなりしていたら、聞き覚えのある声。
視界に入った男が甘味仲間とわかれば嬉々と駆け寄ろうか。
「草の旦那も仕事かい?精が出るねぇ!
…で、何から始めるよ?
私は火が出せるのと、間欠泉が出せるのと…後はまぁ、一応、穢れ祓いは出来るからボチボチ協力できるかとは思うんだけど」
明るく声を掛けた後、声を潜めて話す。
相手が己の本性を知ってるからこそ…つまりは、上手く使えと。
名も知らぬ相手に、さすがに特級クラスの技能までは明かさないが…それでも今は味方であるし、何よりこの男が嫌いではないのだ。
■影時 > 流石に砦の中までは焼けないのだろう。
つくづく汚辱は焼却したいが、被害を被っていない施設や物品等は少なからずあるということか。
若い騎士はともかく、歳のいったベテランの騎士等となれば、如何ともし難い顔つきになるだろう。
かくいう己もまた、死臭に加えて汚臭まで漂う職場なぞという修羅続きは御免被りたい。
「嗚呼、やっぱあの時のか! 妙なトコで会うなァ! 良いってことよ。
と言っても、ここは地獄の一つ隣となりゃ……いつぞやみてぇに奢ってやるにも儘ならんがなぁ」
直ぐに引っ張り出せるとすれば、油紙で包まれた固く焼き締めたビスケットくらいだろうか。
菓子として食べる類のものではない。スープや唾液でふやかして食べなければならない、順然たる保存食の方だ。
左手で持つ煙管を弄びつつ、駆け寄ってくる姿に空いた手をひらひらと振ってみせよう。
「――心得ているなら、話が早くてイイねェ。
火も水も出せるならいいが、今まず必要なのは火だ。この磯臭ェのをなんとかしなきゃならん。
ここにな、匂い消しの香がある。こいつを焚きながら、汚物を砦が焼けねぇ程度に灰にして回るか。よろし?」
ならば、と。良いことを思いついたといった顔つきで、ニィと笑って楽団の指揮者よろしく煙管を振る。
直ぐに燻った灰となった火種を足元に落とし、更に降って冷めたとなれば元通りに仕舞う。
近場を通りがかる現場指揮官然とした騎士に幾つか話をして、砦内に踏み入る許可をもらうとしよう。
■紅月 > 「あっはは!
今日は私が持ってきてるから一緒に食おうよ、東の食材や調味料にツテが出来てね…今日のオヤツは水まんじゅうと水羊羹!
…ま、手作りだから期待はせんどってね?」
ほくほくと語る東洋話。
やはり同郷だと思うと、ついつい絡みたくなる。
…とは言え、美味しい話もこれだけ臭いと幸せ度半減なのだが。
「おお、魔と骸だけ焼きゃあいいんでしょ?
よろし、よろし…指揮は任せた」
今日の飯が美味しく食えるなら、今なら何でもできる気がする。
いっそ男に後光が見える気さえする。
すたすたと半歩後ろをついていこうか。
砦の入場許可自体は、紅月が臨時治癒術師の身分証を持っているから存外すんなり出るんじゃなかろうか…普段は重傷メインで治してるから、顔を知らない兵士も当然居るだろうが。
■影時 > 「ほほぅ、良いねェ。……地獄に仏という譬えがあるのを知っているだろう? 俄然期待もしちまうというものよ」
東洋がらみの諸々の調達については、若干ながら己も伝手が出てきた。
郷に入っては郷に従えと、その土地の食事と水に慣れる努力はしてはいても、時折故郷の味を求めるのは仕方がないことだ。
舌と脳髄に幾度もなく染みこんだ味というのが、どうしてもある。
保存食など、味わいも何もへったくれもないものに慣れてもいるが、こんな修羅場だ。
手作りである以上、作る際に味見もした上で評価していると考えれば、おのずと期待は生じるものである。
「そういうこったな。――深井戸が掘れればいいが、身体を洗う水にもこの先困窮するからなぁ。此れは後で考えるか」
この分だと、井戸も無事であるかどうかも怪しい。
地下の水脈の具合も出来れば確かめた上で、必要であればそれなりの対処を上申でも陳情でもすべきだろう。
現場の指揮者に話を通し、己の雇い主、あるいは飼い主から預けられた仮の身分証を呈示の上、連れ立って砦内に入ろう。
「……嗚呼、そういや名乗って無かったなァ。俺は影時という。お前さんは?」
中も散々たる有様だ。
目につくところは掃除されていても、転がった箱のやら樽の裏など、念のため焼き清めておく必要があるだろう。
早速とばかりに懐を漁り、紙を張って固めた球体を幾つか出し、そこかしこに転がそう。
思い出したように名乗りながら、その上で火ィ頼む、と告げよう。火をつけるべき品は他でもない。匂い消しの香だ。
殺虫、消毒の薬効も混ぜた大気より重い煙は低く、地面に沿って滞留し、集まっていた毒虫を殺す用に足ろう。
■紅月 > 「…ぷっ、はははっ!
止しとくれよぅ、仏とか…どっちかと言えば羅刹女だって!
でもまぁ、そんなに期待してくれんなら…昨日の夕飯の肉じゃがを進呈しよう」
思わず腹を抱えて笑う。
いやいや、いやいやいや…私なんかと一緒にしちゃあ、さすがに仏に叱られそうだ。
ちなみに我が肉じゃがは煮崩れを気にせず染み染みに煮込む派だ…酒のアテには実に良い。
米はあるかって?…握り飯で我慢しな!
「井戸なぁ…こんだけ魔族領側が穢れてると、それを吸った地下水は大分心配よなぁ。
…やっぱり後で水脈沿いに間欠泉出してみるかね」
水がなきゃあ人は生きられぬ。
いやさ他の生物もそうであるが、人は特にな気がする。
私の出す間欠泉は…本来ただの地下水を吹き出させる水魔法であるが、火の加護の熱と大地の加護のミネラルですっかり温泉水になってしまっている。
念のために浄化の魔法で清めてから飲み水にした方がいいだろうなぁ、なんて漠然と考えて…正直、失敗魔法だから黙ってりゃよかったかなぁと後悔もしてみたり。
さて、砦内であるが。
…時々カサカサ聞こえるのが絶妙に嫌だ。
「私?私はコウゲツ…紅の月、でコウゲツよ。
…男の姿にもなれるんだけど、そちらではアカツキと名乗ってるね。
何かあったらどっちかで探せばいいよ」
半ば無意識にキョロキョロと見回しつつ歩き…たまにポトッとか音がすると、ついついビクついてしまう。
さっさと片付けてしまおう、本当に、切実に。
『火ィ頼む』と言われれば、待ってましたとばかりに鬼火たちを喚んで一つ一つ確実に着火させる。
…後は、やつらが滅ぶを待つばかり。
■影時 > 「は、ッ。そう来たか。
だが、有難ぇ。酒は持ってきてるから、一緒に喰わせてもらうとすっか」
成る程、云われて見ればそう見えなくもない。
しかしながら、こんな酷い光景で貴重な甘味にあり付かせてくれる者を鬼女呼ばわりできるものか? 否、出来ない。
心を殺して刃を振るう忍ではなく、心のままに振舞う抜忍なれども、恩に仇を返す不義理はできない。
見栄えは喰わせてもらう以上、気にしない。男が作る飯なんぞ、見栄えは考えないものの代表格だ。
生憎米はないが、酒ならばある。
「地続きでありゃぁなあ。今、一番気になるのは塩がどの辺りまで沁み込んでいるか、だ。
石灰を撒いて土に混ぜて、水を流して土壌自体から変えなきゃならんコトもある」
間欠泉の術で出す水が温泉水となると、また幾つか考えないといけないことがあるが、流石に不毛の地で立て籠もるにも限度がある。
補給線を絶やしてはいけないのは勿論ながら、周囲の土壌等に残留する影響などを考えると、水を操る術は考え物だ。
「……うへぇ。こりゃいかんな。まだまだ残ってるか?
コウゲツ、だな。男にも化けらられるってのは器用だなァ。
分かった。宜しく頼む。――中に入るか。同じように煙焚いて、暫く待ってから焼きに行くぞ」
蟲退治だ。遣るにも躊躇う仕事であれば、遠慮なくやってやろう。
この分だと残留している食料もまともに喰えるものはあるまい。そう判断し得る状況だから、徹底してやる。
生き残りの蟲の動きを止め、鈍らせて窒息させる薬煙は人間が吸うには無害だが、煙たい中に潜る気にはなれない。
砦の中庭を話ながら突っ切り、あとは建物内に入ろう。地下倉庫がある辺りから片付ける。
同様に煙を焚き、暫く待って忍術で起こした風を送り込む。
強制的に排気すれば、その後中に入ってピンポイントで残留する蟲や腐り始めたものを焼却し、適宜浄化も頼もう。
合間に駄弁るのは、黙々とした作業をしていられないという気分からだ。
諸々片付けたのちに、食事にあり付かせてもらおう。
持参した酒をふるまいつつ甘味も嗜むとなるのは変わった味わいになるかもしれないが、一仕事終えた後の食事はきっと格別だろう――。
■紅月 > 「塩害は本当に…作物には打撃だからなぁ。
美味しい飯のため、頑張らねば」
魔の者は欲に忠実になる傾向が強い…三大欲求ともなれば、尚更。
紅月の場合は特に食欲が出ては、その為に努力を惜しむ気はない。
…後でこっそり、この土地の土にも氣をわけてやろ。
温泉水のそれは、あくまでもこの土地に元々あるそれが殆どだから…まぁ、塩ぶっかけるよりマシであろ、と。
どのみち血塗れ体液塗れの地であるし。
…たぶん、きっと。
それにしても、だ…あああもう背中が痒くなってきた!
しかし、しかしここで折れたらまた繁殖しかねん…それだけは、それだけはぁああ!!
「…か、カゲさんや、紅は気分が悪ぅなってきましたぞ…も少し粘ったら休憩挟みませぬか……」
時折、頼み込んで休憩入れてもらったり…煙に驚いた毒虫が跳ねて飛んできたのにビビり、影時を盾にして叱られたりしたのは別のお話。
…ただ、一仕事の後の酒の旨さは一入だった、とだけ。
ご案内:「タナール砦」から影時さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」から紅月さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にヒマリさんが現れました。
■ヒマリ > 戦の苛烈を極める砦。
その後方の後方に少女はいた。
胸、肘、膝など軽防具を身に着け、弓を背負った姿は有事を想定しているが、
同時に全線が危うくなれば早々と撤退するつもりの距離である。
少女は武勲に興味があるわけでもなく、今回随行せざるを得なかったのは評判の悪い王族に連れられてのこと。
どうも彼、以前から魔族の女に惹かれるという救いようのない性癖が見え隠れしている。
望遠で戦況を観察しながら、魔の女を見つけるたびに高揚し、生け捕りを請うのだ。
少女は辟易していた。
命を懸ける者がいる一方で、こんな状況でも腐った奴は腐ったままだ。
「捕らえるということは殿下の御所に置くということですか?
……あれは微笑むだけで男を掌握する魔性の者。内側から屠られまする」
それに生け捕りする余裕が王国軍にあるものか。
砦の上を白い鳩が飛ぶ。
少女が意識を集中させると、その空中の眼が見る景色が伝わってくる。
戦況次第では今にも撤退準備をするべきだ。
■ヒマリ > 戦況は今しばらく膠着状態。
魔族との戦が本格化して以降は砦の状況も少し変わってきているようだ。
下手にどちらかが動かないうちに、少女としては撤退を促したいところだが。
王族の顔色を窺いつつ、少女はもう少し、名ばかりの後方支援を務めることに。
ご案内:「タナール砦」からヒマリさんが去りました。