2018/05/22 のログ
ご案内:「タナール砦」にバルベリトさんが現れました。
■バルベリト > 「んーじゃ改修は今回俺の図面引きで。」
タナール砦、嘗てから取っては取られ取り返しのオセロ拠点。
砦とは言え、あくまで地上進撃をしてくる様な相手には砦としての効果は見込めるだろう。
だが、空を飛ぶ、もしくは空間を渡って来るような魔族には悲しいほど無力だ。特に、空間を渡って単騎戦力で制圧をしてくる魔王級が出てくればどうなるかは明白。
今回自分が担当しているのは砦の改修と防衛案の一部許可が下りた事から普請と増設。なのだが――小規模な襲撃が頻発されては工事もやり難い。
物見の兵を出せるほどの数の余裕も無い以上、暗視が利くミレー族や自分の当番に手伝うという奇特な一部騎士の探知魔術を借りての警戒。
襲撃の合間に工事、襲撃の合間に一部施設の改修、と。
正に寝る暇が無い状況が続いていた。
「とりあえず、迎え撃つ防壁じゃなく。単純に時間稼ぎ目的の迎撃、防衛柵。対空に魔術の投網を展開する魔法陣の準備な。」
■バルベリト > 時間稼ぎ、とするには理由がある。
敗戦の記録は大半が突出した戦闘力を持つ魔族が突如砦の内部に現れた事による指揮系統の崩壊が一番多い。
次点で物量策戦による防衛網の崩壊だった。
どの道維持し続ける事が困難ならば、手早く王都側に脱出出来る様に王都側の交通網と出入り口の整備を優先させた。
―――のだが。
防衛の為の準備に入ると必ずと言っていいほど小規模な襲撃が入り、邪魔をされる。
善くはない兆候ではあるので念の為に近くの拠点に応援を頼んでいるが――。
「まーた客かよ…非戦闘員は退避準備。信号隊は信号準備、色は間違えるなよ。」
小規模の魔族の襲来。魔族とはいっても、少数――に見える。地上からくる魔族は魔獣型の低級とも思われる群れ。
此方は門を閉ざせば時間稼ぎも出来るだろうが――空を飛ぶ魔物はそうも行かない。
弓は専門外だが、まぁ――なせばなる。
クィンクレイン・クロスボウ
地面にしっかりと固定させる事で限界まで弦を引き絞り、巨大な矢を打ち出すもの。攻城弓と大きく違うのは、一度設置してしまえば移動が出来ない不便さだろう。
だがその分、1発の矢の破壊力は増大する。破壊力のみならず、速度も、だ。
「んぉぉぉ…………」
距離を正確に伝える伝令。有効射程に入るまでの間、全力で――それはもう、木が軋み、外壁に固定している金具が悲鳴を上げるまで――。
力馬鹿ではあるがこういう場面では自分の腕力だけは自信に繋がる。
■バルベリト > 「っしゃあああああ!!」
声と共に放たれた矢。轟音と衝撃波を周囲に撒き散らしながら――目標の飛んでいた魔族に命中。
正しくは、命中する前にその衝撃波で吹き飛ばせる程の破壊力を秘めている。
そして当然、周囲に巻き起こるのは重量のある矢が生み出す衝撃波。
飛行体系の魔族は暴風とも取れる衝撃に体制を崩し――そこに城壁から、小規模な魔法が幾つか飛んでいく。
ある魔法使いは氷の矢を生み出し、翼を射抜き。
またある魔法使いはさらに風を生み出して、徹底して空を飛ぶ事を妨害する。
魔族は気分屋の傾向が強い。……と、思う。気持ちよく襲撃をさせない意味で迎撃の準備だけはさせていた。
―――遊びにきたつもりが、自由に遊べずしかも何か痛いし死ぬ。
そうなれば撤退するのが魔族だろうと自分の中で勝手に解釈しているのもあった。
「対空部隊はそのまま。投網は準備出来てねーから使うなよ。後危険距離に入ったら無理せず下がれ。」
魔法と、魔力が込められた矢。それらが一定数の魔族を迎撃した所で、次は地上組。扉は分厚く、重い鉄で出来ているが魔族相手にはそうは持たない。
出来れば落とし穴を完成させておきたかったが――間に合わないものはしょうがない。
城壁から飛び降りるようにして参戦できていれば格好いいだろう。
そりゃぁ見栄えもするだろう。
……怖くてそんな真似出来ないので、普通に階段使って正面扉前。
鉄で出来ている筈の扉が歪み、凄まじい重量感のある打撃音が向こう側から聞こえてきている。
こちらが準備する防衛は、簡単な仕掛けだけでいい。
間も無く、扉が破られる。だが、その向こうに何があるのかは空を飛んでいた魔族ですら見えなかった筈だ。
■バルベリト > 扉が破られた。
鉄の扉は十分持った方だろう。――此方の迎撃体制が十分に整う位頑丈だったのだ。
―――さて、魔獣諸君。君達の目の前には飢えた獣よりも厄介な物が並んでいる。
魔力を持たない人間でも魔法と言える程に強烈な火力を叩き出せる物だ。
弓?惜しい。爆薬?近い。大砲?遠ざかった。
「やっちまえー」
正解は、獣脂と炭を混ぜ合わせた特殊な可燃性の粘液。
べっとりと肌の表面に脂ベースの成分が張り付き、炭は熱を維持させ続ける発火剤の役割を果たす。
その脂玉が投げられ――魔獣の。魔族の肌の表面にべったりと附着していく。自分達のところまではまだ距離があるが、矢に括り付けて飛ばすなら距離を稼ぎつつ、それら発火剤を魔獣に大量にぶつける事も出来るだろう。
「安心しとけ。せいぜいミディアムレア程度の火力だからよ。」
その言葉と共に。開幕の合図を知らせる火矢が一本飛ばされる。
屋上の対空戦闘で火を使わなかったのは、極力火についての意識を持たせたくなかった為でもある。
魔獣が何かを察したのか。突進すべきか逃げるべきか迷っている内に始まるのは煉獄の檻の完成だった。扉から入り込んだ魔獣達は其処から出て行こうとするだろうが――。
「逃がす訳ねぇんだよなぁ。こちとら睡眠時間がっつり削られて腹立ってんだよ。」
グレートソードを片手で扱い――勿論魔法の補助付きだが。軽い調子で地面に刺す。
■バルベリト > 魔法についての原理は知らない。
詳しい理屈もわからない。ただ、身体強化と回復魔法と。
――この魔法だけは、理屈も理論も抜きにして扱える。ただ、自分がしたい事を剣を通じ。大地に呼びかける。
大地の記憶を呼び起こし、かつては魔王の一撃すら防いだとされる古代の城壁が存在していた記憶を呼び起こす――。
剣に薄く輝きが宿り、白銀の光沢は塵の様に地面へと浸み込んで行く。
「起きろ、仕事の時間だ先祖様。」
起動する呪文も本来は必要が無い。詠唱の必要も無いが――まぁ、気分だ。
呼び掛けと共に。扉のあった場所の前後を分断する様にして。そして火を体に張り付けた魔族の群れを囲い込む様にして。
煉瓦の様で煉瓦ではなく。素材すら不明。ただし、その防御性能は計測不能。
そんな檻が瞬時に完成する。無論、天井には蓋をするように重々しい豪壮な天蓋が付けられるだろう。
熱を反射し、逃げ道の無くなった熱は魔獣を更に骨まで熱していく。
魔獣の毛は燃え尽き。皮膚は溶け。肉は灰となり骨だけが残される熱の密室。
苦悶の声等も勿論上がるだろうが――その檻の外にいる自分達には何も聞こえていない。
■バルベリト > 城壁という檻は蜃気楼の様に消えていく。但し、最後まで砦側の方は壁を残しつつ、魔族の領土側に熱されていた空気が流れ込むようにして――解除が終われば、それなりに値段のつく魔獣の骨等が散乱している。
恐らくだが空を飛んでいた魔物も上手く城壁組が追い払ってくれたのだろう。
砦にはピン、と張り詰めた気配が消え去り。今は戦闘後の軽い弛緩した空気が漂っていた。
「ん、じゃぁ鉄扉の予備を大至急。後、落とし穴と投網の準備――ついでに魔獣の骨拾っといてくれ。―――あ―――俺、疲れたから少し休む。なんかあったら俺を起こすよりも先に逃げろよ。」
ひらひらと。手を振って傭兵。奴隷。騎士が混在する第八騎士団に指示を出す。
だが、その手には無数の皺が刻まれ――声には疲労の色と共に明らかに老いた老人の声音。張りが無く、聞き取りにくいしわがれ声。
グレートソードは霧状になり、鎧すら重いのか鎧をその場で脱ぎ捨てて寝室に向う。
――自分が歩いた後の道には、数本の白い抜け毛が散っている。
便利な力というものに付き纏う代償は軽い物ではない。生命力を前借するため――急激な老化を自分に引き起こすのが、唯一の欠点だった。
ゆっくり休めばすぐに回復するのだが。
■バルベリト > 翌朝、そこには少し若返った姿になって爆睡する大男の姿があったとか、なんとか。
取り敢えずの防衛策の試験の準備だけを終わらせて、結局起きなかったので馬車で王都に返品される師団長代理の図。
老人姿が長時間続けばまだ言い訳も出来るのだろうが――生憎王都についた頃には元通り。言い訳も出来ず、何故寝過ごして王都と通信が出来なかったのかこっぴどく叱られる事になるのは――知らないほうがいい話、かもしれない。
ご案内:「タナール砦」からバルベリトさんが去りました。