2018/04/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 「全砲門開け、一斉射撃!」
オーギュストの号令一下、タナールに向かい砲弾が雨霰と降り注ぐ。
命中率も格段に向上し、ほぼ命中、わずかに至近弾だ。
城壁は脆くも崩れ去り、駐屯する魔族が慌てて出撃してくる。
「――構え!」
次の号令で、今度は銃兵が隊列を組む。
持っているのは、最新式の『ライフル』。かの世界の技術を使った、命中率に優れるシロモノだ。
「放てぇ!」
号令とともに銃声が鳴り響く。
魔力を帯びた弾丸は驚異的な精度で魔族を打ち抜き、屍の山を築いた。
■オーギュスト > まだまだ数は少ないが、最新式の技術を持って魔族に対抗する術は確立しつつある。
第七師団の直営隊は、荒くれ者の集団から、最新武器を使いこなす技能集団へと変貌しつつあった。
「――課題はやっぱ、量産化か」
ちなみに今回の出撃は独断である。
サロメが何時までたっても出撃許可を出さないので勝手に出てきた。
まぁ、将軍の務めだし大丈夫だろう。多分。
ご案内:「タナール砦」にルーシェさんが現れました。
■ルーシェ > 想定外の攻撃を受けた砦、その傍にいた自身は今回は知らぬ素振りをするのが難しい。
追い払ったと嘯いた後、雑兵を全滅させているのも有り、今回は埋め合わせとちょっかいを出すことに。
崩れた防壁の下から色とりどりの珊瑚が急激に生えていくと、縫い合わせるように広がる枝が絡み、堅牢な壁の代わりとなっていく。
魔海に生息する岩よりも固く、鉄のような靭性も多少持つそれは、壁として使うにも十分なもの。
ピンク色に白、薄紫に水色と、パステルな珊瑚礁を築いた本人は、砦内に浮かぶ水の魔法陣から姿を現す。
「あちゃー……ボロボロだねぇ。ん、帰ろっか? 適当に防御しておくから、怪我したのも抱えて撤収~!」
怪我人多数、外に転がる屍の山と合わせても戦闘継続は無理と見える。
乾いた笑い声を溢しながら苦笑いを浮かべれば、ぱたぱたと掌を振って撤退を促す。
普段軍議にもそんなに顔を出さない魔王ではあるも、顔と名前ぐらいは知られているのか、軍勢を指揮していた魔族はそそくさと撤収を進めていく。
「さってと~……どんな人きちゃったのかなぁ?」
珊瑚礁の壁の上へジャンプで飛び乗る姿は、小娘の様な姿とは似つかわぬ跳躍力を見せる。
相手を一望できる高い位置へ映ると、額に掌の側面を当てていく。
軽く体を前へ乗り出すようにし、目をゆっくりと細めて凝らしていくと……銃やら砲やら、色々と見えてくる。
うわぁと露骨に嫌そうな顔を浮かべながら体を起こすと、どうでるだろうかと、相手の様子を見ることにした。
■オーギュスト > 砦から出撃が止まった。
砲声にビビッたか、もしくは撤退の算段をしているか。
後者だとちと厄介だ、かなり状況が見える魔族だし、下手をすれば援軍を呼んでいる可能性もある。
「――潰しとくか」
オーギュストは合図とともに手旗信号を振らせる。
上空の竜騎兵--ワイバーン騎士偵察部隊が魔族の撤退ルートを探り、オーギュストに合図を寄越す。
「いくぞ、選抜隊、俺に続けぇ!」
号令と同時に、オーギュストを先頭にして走り出す一隊。
砦を制圧し追撃戦を行う構えだ。
■ルーシェ > 「ん~? あれって」
珊瑚の上から眺めていると、一人が意味ありげな手の振り方をしているのが見える。
何処にだろうかと動きを眺めていると、斜め前…というよりは上といった様子。
空を見上げればワイバーンの姿もあるが、あれだけで追撃してくることはないだろうと考える。
逃している軍勢だけでなく、後から自分と同等の存在がやってきたら深追いで死亡と勿体無い結果となる。
来るか来ないかと考えるより、来るやも知れないと考えれば踏み込まないはずと頭が回る辺りは、普段はおちゃらけていても魔王の端くれと思いたい。
「後ろは取られたくないよねぇ、返り討ちで挟み撃ちじゃ最悪だもん」
こちらへと突撃してくる一隊、それを確かめつつも、他の軍勢がどちらへ向かうか、軽く一瞥して確かめていく。
その合間も掌に魔力をまとえば、ざっと薙ぎ払うように腕を振るい、水の玉を無数に浮かべていった。
それらが弾ければ、徐々に砦を包む霧となって広がり始めるが、更にもう一つ魔法を重ねていく。
「せ~……のぉ~っ」
ちゃぶ台でもひっくり返すような大げさな動きで両手を空へ掲げていくと、それに引っ張られるように地面から海水が沸き立つ。
海水の噴水と言ったように壁の前に溢れかえる塩水は、徐々に形を変えて畝る大津波の様に変化していくのが見えるだろう。
「――ど~んっ!」
そして両手の掌を前へ突き出すと、大津波は解き放たれる。
水の圧縮率と酸素の遮りは起きないように加減された塩水は、雑兵でも重症はあれども死なない程度の衝撃力。
手練なら全身打撲ぐらいさせるほどの力を込めた大津波で、軍勢を迎え討とうとする。
■オーギュスト > わずかな魔力の感知と、そして竜騎兵からの警告。
来るのは水。明らかに魔術の類。
「――全軍、隊列を整えろ! 突撃中止!」
オーギュストはすぐさま叫ぶと陣形を整えなおす。
同時に津波。大慌てで前衛は盾を構え、後衛はその影へと隠れる。
おかげで被害といえば後衛に幾人かの軽症者くらいなものだ。が。
「ちぃっ――火薬を湿気らせてきやがったか!」
そう、津波の影響で魔導砲、ライフルともに使用不能。
これで使えなくなったら大損だ、ただちに技術士官たちに命じて銃と砲を下げさせる。
「散開だ! 右翼は後衛とともに後退、左翼は竜騎兵の指示で敵の撤退ルートを塞げ! ――残りは俺について来い!」
この大魔術、敵にはかなりの上位魔族、下手をすれば魔王級が居る。
と、なれば自分で相手をするしかない。
オーギュストは先程の津波の根元に向かって部隊とともに進む。
■ルーシェ > 前回もこれでひっくり返し、帰れといって追い返したところだが、今までの人間側と違い、統率の取れた動きで防御態勢を取るのが見える。
津波に飲み込まれても、怪我人の数は少ない。
見事な防御態勢に、おぉ と感嘆の声を溢しながら胸元で小さく拍手をする程に、想定外の結果。
なにやら銃を下げていく様子にはあまり気にしていないようで、どちらかといえば散っていく兵士達の動きの方へ意識を向けていた。
「ん~……あれだよね、同時に攻めて逃げた方は殺っちゃえ! って感じかなぁ…んー……よし」
下がっていく軍勢と、二手に分かれる軍勢。
恐らく自分の方に足止めが出来るか、強い駒をぶつけるのだろうと思いつつも、こちらも出来れば逃してあげたい心情。
次の手を考えると、呪文を唱えていき、濃霧が立ち込める砦の中に自身の幻影を幾つも浮かび上がらせていく。
外からは見えない囮を設置すると、砦の中に逃げるように後ろへ飛び退き、霧の中へ消える。
着地すれば、掌を空へ突き上げぐるぐると回していく。
すぐさま嵐のような風が砦の前で渦巻いていくと、それを投げるように前へ放った。
肌を痛いほど叩きつける雨粒を伴った嵐を、一瞬で吹き抜ける突風の様に将軍たちの方へと放つ。
それ自体はダメージも毒もなにもない、ただ一瞬だけ足を止めて瞳を守ろうとしてくれれば十分なもの。
「今のうちに~っ!」
一瞬の視野の遮りを期待しながら、自身の側面に光の屈折を歪ませる水のヴェールを展開すると、砦から飛び出して左翼の軍勢へと走った。
ヴェールは将軍たちの方角へ向けられ、周囲の景色に溶け込むように光を屈折させる。
とはいえ、向けた方以外からは見えてしまうが、追いつきさえすればと小娘とは思えぬ疾さで走っていく。
■オーギュスト > 「ちっきしょ、気象魔法での目晦ましだと!? 一番えぐい手使ってきやがって!」
吐き捨てるように言うオーギュスト。こちらは病み上がりである、少しは手加減して欲しい所だ。
何せ統率された部隊にこれは効く。隊列は乱れるわ指示は入らないわ、下手な攻撃魔法よりも厄介だ。
「竜騎兵! 通信を絶やすな、別働隊の動きを逐次知らせろ!!!」
とはいえ、この嵐では望み薄か。
砦の中に突入するも、あるのは幻影ばかり。
忌々しそうに制圧を進めながらも、オーギュストは気付く。
魔王級、いやこれはもう魔王そのものだろう。
そいつの反応が無い。
「――別働隊の方か!!!」
■ルーシェ > 嵐はそのまま留まるかと思いきや、一気に吹き抜けてしまう。
彼等がほんの一瞬だけ目をそらしてくれれば、こちらとしては十分。
嵐も長く維持すると魔力をそれなりに食うので、ある程度は温存したい本心。
とはいえ、嵐のような突風が吹き荒れれば、指揮を暫し混乱させるぐらいは出来たようだが……本人はそんなこと気にせず、別動隊へまっしぐらである。
『はっずれ~!』『ぶっぶ~、偽物だよ~』『本物かな、偽物かな、どっちかなぁ~っ?』
まるで子供の悪戯のような弾んだ声で、幻影達は喋り、微笑みかけるが実態はない。
魔力の気配も魔術に込められた部分にあるかもしれないが、本体とは比べ物にならないほど弱い。
ただの濃霧でも方向感覚を狂わせ、先の見えぬ景色は不安を煽るかも知れない。
けれど、傷つけることはない実態のない敵。
(追いついたぁっ!)
別動隊へ突撃するように迫っていくと、ざぁっ!と激しく砂埃を巻き上げながら、踵でブレーキを掛けていく。
そして、唐突に現れたのが王都にいそうな小娘の姿とあっては、魔王かと即気付くこともないはず。
一瞬の間、例えそれがなくても歌を奏でるだけ。
澄み渡る程よい高さの音色を奏でると、歌に込められた言霊の力が兵士達へ襲いかかる。
深く、そして心地よい眠りへ誘う魔王の子守唄。
ブレーキを掛けて現れ早々歌声を響かせれば、異様な景色は空の竜騎兵にも見えるかも知れない。
少女の歌声に眠りに落ちる兵士達の姿か、それとも必死に堪える姿か、そんなところだろう。
■オーギュスト > 手近な馬を使い、一気に駆け抜けるオーギュスト。
速すぎて後続がついてこないが仕方ない。
兎にも角にも駆け、なんとか別働隊へと近づく。
竜騎兵からの緊急信号。
遅かったか! と思いつつも別働隊へと走る。
そこでオーギュストが目にした光景は……
「――なんだこりゃ!?」
ぐーぐーと気持ち良さそうに寝る別働隊の面々。
全員残らずおねんねである。
「なんで死んでねぇんだ」
別働隊の全滅すら覚悟していた男には拍子抜けである。
しかも、そこに居るのは――たった一人の少女。