2018/04/05 のログ
■ルーシェ > 「なっ!? 面倒くさいって酷いなぁ。私、自分で言うのもあれだけど他の魔王に比べたら、すっごい優しい方だよっ!?」
人は食べないし、血は吸わない、殺しもあまりしたくない。
これだけ揃っておいて面倒と言われるのは心外だと思えば、頬を少し膨らませながらそっぽを向いた。
魔王というよりは、見た目相応の少女の様な反応もまた、魔王らしかぬと言われる所以なのかもしれない。
「そうなんだ~……人間も大変なんだね? ん、じゃあそういうことで! 魔族の軍勢来たらちょこっと隠れておいてね? 追い返したから後任せた~っていって、帰るから」
昔、軍議で聞いたことがある必要な損害とかそういうものだろうかと思うも、専ら軍勢を率いて動くのは守りばかりなので、その辺には疎い。
そんなこともあるんだろうと思いながら、思い悩む彼女を見上げた。
交渉が成立となれば、ぱっと花咲くように微笑みながら、目の前で軽く両の手のひらを合わせた。
ちょっとした日常の嘘に潜む口裏合わせの様なノリで告げると、休戦の言葉に小さく頷く。
「勿論、もう喧嘩する必要ないしね~。フォーコさんね、私は魔王ヴェパール。魔の海と海の住人を統べる、渚の女王……とか、かっこいいこと言っとけって言われてるの」
魔王の名前とそれに似合いそうな前口上も添えて語るも、照れくさそうに微笑んでいく。
子供のようにコロコロと表情を変えながら語りつつ、指先でくせのある髪を軽く弄る。
炎の熱に促され、緩やかな気流が熱を帯びると、くすんだ水色を撫でていく。
揺れる髪に染みたジャスミンの淡い香りを、熱に交え届けるだろう。
■フォーコ > 「もう少し弱ければ腕ずくで追い出すのだが、それも出来ないとなると面倒と意外に言いようがないだろう。
私としてはせっかく会えた魔王なのだからもう少し魔王らしくして欲しかったな。」
これが彼女の性格なのだろう。
非好戦的な相手はどこにでも居るのだし、それを否定するつもりはない。
ただ、少し溜息が出るのも分かって欲しい。
「今更だから種明かしをするが、この火はそっちの水と同じ役目をするといえばわかりやすいか?
それと、周囲はこの火が出ている間は私が戦っていると思うようになっている。」
わざわざ仕掛けを教える必要はないが、勘違いしたまま話が進まれるのも嫌なので
口に出してしまった。 彼女が放言して回るとも思えない。 まあ、大丈夫だろう。
交渉がまとまると、向こうは笑顔を見せ、手を合わせていた。
とりあえず、私は後詰が来るまで暇になってしまう。
「ヴェパールね、覚えておこう。
そうだなあ、私からしてみれば黙っていれば魔王らしく見えるんじゃないか?
力は魔王の力の様だしな。」
子供と言うか、若い娘のような魔王の顔をまじまじと眺め。
花のような香りが魔王から漂うと、私は手を伸ばし彼女の首筋を撫でようとする。
敵と言う認識が外れれば、子供っぽい所もあるが可愛らしい女性であった。
■ルーシェ > 「喧嘩したほうが楽かぁ、何だか他の魔王みたいな事いうね?」
魔王らしくしろという言葉も含め、まるで魔族の国の軍議に出た時のような心地になる。
話し合いより戦ったほうが楽だの、退屈そうにするこちらに少しは魔王らしい威厳を持てと文句を言われたりと、嫌な思い出が脳裏を過ると、つまらなそうに瞳を閉ざした。
「あれ、ちょっとバレちゃってた? そっか、それじゃ消せないね」
乾いた笑い声を零しつつ答えるも、炎の理由にもう一つの意味があれば、成る程と言った様子でぽんと軽く手を打つ。
逆に言えば、炎がある合間は交戦中とみられるわけなので、戦わなくて済む。
納得したのもつかの間、彼女の炎の秘密を一つ知ってしまうと、片目を閉ざしつつ唇に人差し指を当てる。
秘密にしとくねと小さくつぶやき、悪戯っぽく微笑む。
「黙ってれば……ぅー、黙るの難しいかなぁ、思ったこと、直ぐに口に出ちゃうし」
思い悩むように俯いていくと、ウェーブの掛かった前髪がふわりと流れる。
薄っすらと体に染み付いた、潮の香りを誤魔化すジャスミンの香り。
近くでそれを感じれば、混じり合った香りがマリン系の香水を思わせる変化を感じるかも知れない。
首筋に重なる掌に、くすぐったそうに小さく体が跳ねるものの、嫌がる様子もない。
いけしゃあしゃあとこちらに物言いをする彼女の第一印象は最悪だったが、なんだかんだと併せてくれた事に印象も入れ替わったのだろう。
■フォーコ > 「お互い先陣を切る役割だからな。
こうして向かい合っているのに何もしない方が本当は異常だからな。
それを周囲に誤魔化すわけだ。 面倒に決まっているだろう。」
好戦的な所もあるが、互いに振られている立場がそうさせるところもあって。
別に咎める気もないのでこれ以上は口を挟まないが。
「水と火で対極だが、能力のタイプは似たようなものに思えたのでな。」
問題はどちらの出力が高いかだが、それを決める日は当分は来ないだろう。
ウインクを見せてくるこの魔王と本気で戦う光景が頭の中に描けない。
「そうか、それなら無理に黙らなくてもいいのではないか?
見ていて思ったが、仕草もいちいち可愛らしいからな。」
爽快感を感じさせる匂いも漂う魔王。
体質なのかコロンでもつけているのかまでは分からない。
私は首筋を摩っても嫌がらない魔王へ顔を近づけ、唇を奪おうとする。
「せっかくだし、もう少しお互いのことを知るとしようではないか。」
彼女が拒まなければ、閨へ。
拒むようなら、砦の中の食事と酒を分け合うだろう。
確かなのは後詰の部隊がくるまで二人だけの平和な時間が流れて行ったことだった。
■ルーシェ > 「言われてみれば確かに……やっぱ、領地に引き篭もってるほうが性に合ってるなぁ」
そもそも魔族と人間の国の境界線であり、最前線で戦いたくないという方が異常なのだと今更に納得したらしい。
そうなればやはり、何時も通りの海の守りが一番良いと誤魔化すように笑いながら呟く。
力比べとなれば負けるつもりはないが、比べるつもりもなく。
似たようなタイプだという言葉にも、そうかもね?と曖昧に答える。
力を隠そうとする考えなどは、戦いを意識した一面を覗かせていく。
「そう? それなら……って、そんな褒めても何も――」
振る舞う必要がないと言われれば、安堵の吐息を零しつつ微笑む。
しかし、続いた褒め言葉には謙遜するような言葉を紡ぎかけるも、ずぃっと近づいた彼女に言葉が途切れる。
正確には予想外に距離を詰めてきた顔が、唇が重なって続けられなくなったというところか。
ぱちぱちと瞳を瞬かせながら唇を受け入れ、離れた後も呆然と彼女を見上げていた。
「――フォーコさんも、最前線でキスに口説き文句なんて、変わってるね。オマケに同性だし…」
肌を重ねていったのか、それともただ語らったのか。
二人だけが知る夜のひと時は過ぎていき、日が昇る頃には砦を去っていく。
後詰めの魔族の軍勢に、追っ払ったよと変わらぬ微笑みで嘯き、約束を果たしながら。
ご案内:「タナール砦」からフォーコさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からルーシェさんが去りました。