2018/04/04 のログ
ご案内:「タナール砦」にルーシェさんが現れました。
■ルーシェ > 数時間前まで、砦は人間側の領地だった。
別の魔族の軍勢との戦いで勝利し、そこを支配したことは彼女にとってどうでもいいこと。
争いには基本的に関せず、領地と領海を守る魔王としての仕事を熟すだけでいい。
しかし、彼等が捕らえた捕虜が問題だったりする。
貴族として彼女が王国に構えた屋敷へと向かう最中、砦を通った魔族の一団が牢獄に囚われたからだ。
領民を救うのもお仕事と、今宵は珍しい攻め込む戦いに興じていく。
「せーの、ど~んっ!」
じゃれあうような弾んだ声と共に、空に掲げた掌を兵士達の方へと差し向ける。
すると、彼女の背後から発生した大津波が兵士達へと迫り、水壁が飲み込んでいく。
揉みくちゃに押し流され、砦の壁へ激突した兵士達だが、ある程度加減した魔術は殺傷には至らない。
強めの打撲程度に抑えると、今度は周囲に水の球体を幾つも浮かばせていく。
「ということで、今日は帰ってくれるかな~? ちょっと不機嫌だから……ニコニコしている間に帰ったほうがいいよ?」
何時もと変わらぬ微笑みだが、青筋が浮かび上がりそうなほど憤怒している。
小首をかしげながら頬に人差し指を当てて微笑む姿は、戦場に似合わぬものだろう。
指揮官らしき男が立ち上がり、反論とともに剣を構えようとした瞬間…杖にされた剣を斜めに何かが貫く。
「……次、頭に当てちゃうよ?」
透明な何かが、夜の空間を歪めて一閃を走らせる。
ジリッと削れる音を響かせて地面ごと剣に綺麗な穴を開けたのは、水の球体から放たれた水圧のレーザー。
エネルギーの余波が溢れぬほどの圧縮率と破壊力。
それに兵士達が言葉を失う中、力の解放率が増えてきた瞳は青色が少し強まる。
細めた瞳がゆっくりと開かれ、月光を背に佇む姿は魔王と名乗るに相応しい威圧感を醸し出す。
その合間も周囲には無数の水の玉が飛び交い、無数の兵士達を狙っていく。
流石に分が悪いと見たか、指揮官が兵士達を手で制すと、兵士達は一目散に砦の外へと逃げていくのだった。
「……あ~ぁ、これで今日はお出かけできないよ、もぅ」
流石に制圧した砦を放置して屋敷に戻ることも出来ず、既に脱出した仲間達が無事に戻るまでは抑えておきたい。
疲れに満ちた溜息を零すと、砦の門の前へと立ち、掌で宙を薙ぎ、光の粒子をばら蒔いた。
種まきの様にそれらが地面に触れると、彩りあるパステルカラーの珊瑚礁が育ち始め、堅牢な木々の代わりとなって門を塞いでいく。
後は惑わせの霧を張り巡らせるだけだが、少し時間がかかる。
一度周囲を確かめようと、一足飛びで防壁の上へと跳ね上がると、ふわりと着地。
夜風にくすんだ水色のウェーブヘアを揺らしながら、ゆっくりとあたりを見渡す。
ご案内:「タナール砦」にフォーコさんが現れました。
■フォーコ > 砦の管理を数日間、第五師団で請け負うことになっていた。
普段は攻撃に使われる隊だが、強力な魔族が取り返してくる恐れがあるとの情報からだ。
我が隊は砦に向かう途中、敗走する友軍と遭遇する。
事情を聴くと、魔王クラスと思われる魔族が一人現れ、砦は既に奪われたとの事。
私は隊員達にこの場で陣を張り、友軍と共に待機することを命じてから一人刀を手に砦に向かう。
最近の私は過保護な所がある。
魔王クラスが相手となると隊員たちの犠牲は避けられないだろう。
私は脚絆で地面を駆け、砦の前にたどり着いた。
既に砦は巨大なサンゴ礁が取り囲み、門扉を塞いでいた。
さらに砦の上では周囲の様子を伺う魔族のシルエット。
こちらからでは顔も見えないが、漂う気配が大物であることを匂わせる。
こんなときに空が飛べないのはやっかいだな…。
私は心の中でため息をつくと、刀を抜きサンゴ礁を切裂く。
竜の素材で作った刀は城門すら両断できる特別品。
閉じられた城門ごと一刀両断すると、状況を確認するために城内を走り回る。
味方の捕虜は居ないのか。 魔族は一人だけなのか。
空を飛んでいる魔族の対応は後回しだ。
■ルーシェ > 「うぇぇ……まだ来るのぉ? こんなところで喧嘩してないでさ~、王都で美味しいものでも食べてればいいのに」
城壁の上へ降り立ち、辺りを見渡すと、遠くに陣を敷く兵士達の姿が見える。
まだまだやる気のある彼等に、嫌そうに顔をしかめてつぶやけば、がっくりと肩を落とす。
加減して攻撃するのもまた、面倒なところなのにと思っていると、ザリッと独特な破砕音が響く。
軽く地面を震わせるほどの振動は、門の扉が崩れ落ちた事によるものだろう。
門はともかく、魔族の国に生息する珊瑚はそれなりに固い。
刃物で大きく育ったそれを切り裂くのは難しいはずと思いながら、門を抜けてきた気配へと視線を向けた。
砦の中は何故かそこらじゅう水浸しであり、砕けた珊瑚が突き刺さっている部分もある。
人の気配はなく、感じる気配は防壁から彼女の目の前へ降り立った魔族の気配のみ。
「っと、捕虜も仲間もいないよ。何もしないなら喧嘩する気ないから帰ったほうがいいよ~? そっちの兵士さんも殺さず帰したでしょ。」
降り立つと同時に、先程と同様に水の球が周辺に幾つも浮かび上がる。
先程の一暴れで少しはフラストレーションは抜けたらしく、アメジストの様な綺麗な紫色に戻った瞳が細くなっていく。
そこらで雑談でもするような軽いノリで微笑み、話しかけながらも自身から溢れる魔族の気配は隠さずにいた。
その方が、目の前の相手が何者かぐらい、察し付きやすいだろうと。
「今は落ち着いたけど、今日は機嫌悪いところもあるから、帰ってくれると嬉しいんだけどな~……?」
小首をかしげながら、先程のように頬に人差し指を当てて微笑む。
凡そ、戦いの場に合わぬ微笑みと格好でだ。
■フォーコ > 城壁の上からの声はこちらまでは届かない。
何せこちらは解体工事で大忙しなのだ。
刀が優れものと言えど固いサンゴを切裂くのはそれなりに大変なのだ。
普通の武器ならとっくにダメになっているだろうが、流石に古龍の品は違う。
城門とサンゴを抜けた先では外よりも群生しているサンゴと水浸しになった城内。
「ほう、城内には貴様意外誰もいないのか。
それは何よりだ。」
突然目の前に降り立った魔族。
一人だと言うのに軍隊に相当するであろう気を放っている。
間違いなく、この魔族一人により陥落したと言えるだろう。
しかし、狂気に肩まで浸かっている私には彼女のせっかくの忠告も
届かなかった。 むしろ、私の眼は輝いていたことだろう。
私は全身に魔力を集め、一斉に解き放った。
砦の中を飲み込む勢いで広がる魔力による炎。
城内に広がるサンゴに移った火は瞬く間に延焼していく。
「ならば私の力が魔王にどこまで届くか試すのも悪くない。」
私は正眼の構えを取る。
ここから先は今ばら撒いた炎がどこまで燃えてくれるか次第だ。
炎があるだけ私は回復を気にせず戦える。
しかし、相手の水がどれほどのものかだ。
何せ相手は魔王。 ただの水とは訳が違う。
■ルーシェ > 第一声にジト目の様に瞳を半分閉ざしながら、不機嫌そうに彼女を見つめた。
「貴様……ねぇ、女の子に対して貴様とか、もうちょっと言い方あるんじゃない?」
第一印象は非情に最悪最低と評価されていく。
こちらは温厚に接していたつもりだが、まるで気にしている様子もなければ、こちらをみて戦意に満ちた瞳を見せる。
所謂戦闘狂なタイプかなと思いつつも、面倒臭そうに小さく溜息を零す。
周囲に飛び散っていく魔力が珊瑚を焼き払うなら、人にしてはやるものだと思いながら、おぉ と感嘆の声を溢す余裕すらある。
「ぇ、ヤダよ。何で貴様呼びしてくるような無礼な人の相手なんかしなきゃいけないの? 人なのに魔王に礼儀説かれるとか、人としてどうなのかなぁ、それ」
勝手にやる気満々の相手に対し、こちらはやる気の無い声。
これが多少礼儀のある相手なら、暇潰し相手にちょっと練習に付き合うぐらいは考えるも、彼女に対してはそんな気持ちは微塵にもわかない。
言葉と共に、無い無いと言いたげに真顔の目の前で掌をパタパタと振っていく。
そして、周囲の水の玉が幾つかシャボン玉の様に弾けていくと、内包していた水が粒子となって周囲に散っていった。
徐々に立ち込める霧は秒ごとに濃くなっていき、そこには彼女の魔力が混じっていく。
変わらず周囲には幾つかの水の球を準備したまま、霧を広げようとするだけだ。
■フォーコ > 「う…。 すまんな、魔王を相手にするのは久しぶりだったので
つい興奮してしまった。」
砦を一人で壊滅させる魔王だけに好戦的なタイプかと思いきや、周囲を取り巻いている水よりも冷めていた。
おまけに溜息まで出されると私は微妙な気持ちになる。
振り上げた拳を下ろす先がなくなってしまった。
「私はダークエルフだからな。 人の道理は通用しないぞ。」
どうやら、相手は敵意もやる気もないようだ。
手のひらを左右に振る様子はバカにされている気さえした。
私は魔族相手だと言うのにすっかりやる気が失せてしまった。
刀を鞘にしまい、がくっと項垂れてしまう。
このまま問答無用で斬りかかるのもありだろうが、もはやそんな気力は湧かなかった。
何せ追い出されただけで味方に被害は出ていないのだ。
砦はその間も炎上を続けるが、魔王らしき女性の周囲だけは
水玉が弾け、細かい粒になった水が取り囲む。
「おい、それは何の真似だ。」
もうこの場に居る意味はあまりなさそうだが、一応聞いておこう。
ついでに言うと、適当な所で追い返そう。
それ位はしないと私の立場がない。
■ルーシェ > 「ふ~ん……まぁ、男の魔王相手ならいいかもだけど、女の子の魔王相手だと、カチーンとくると思うよ? 貴様呼びは」
興奮したせいだと告げる彼女に、変わらぬ表情のまま説教じみた言葉をつなげていく。
何やら出鼻を挫かれたように言葉の勢いが弱っていく様にも見える。
ダークエルフだと言われようと、そこはあまり気にする様子もない。
言葉の音や言い様、視線の位置は種族が違えど意味は左程変わらないと考えるからだが、こんなところでそれを問答しても意味はないと口を閉ざしていた。
そして項垂れながら刃を収めるならば、周囲を漂っていた水の玉はただの水へと戻り、そこらで地面へ落ちていく水飛沫へと変わっていく。
「んー、魔法の霧とだけいっておく~。そうそう種明かしできるほど、引き出し多くないもん。今はこうやって……消火に使っておくかなっと」
本来なら幻術に包む霧に使う予定だったが、相手が刃を収めたならそれ以上の事はしない。
いじけた様にムスッとした顔で霧を操っていけば、水蒸気となったそれを火に浴びせようとする。
言葉通り、彼女が放った炎を消火しようとしつつ、片腕を右に左へと薙ぐ度に指揮棒に操られるが如く、水蒸気の帯が動き回っていく。
「まぁということで、引き継ぎの魔族の軍勢が来るまで、ここにいるだけなんだけど……それまでは交戦しないってことでいいのかな?」
彼女の考えとは裏腹に、直ぐにここを去るつもりもなければ、軍勢の引き継ぎがくるまで居座ると答えていく。
さもありなんといった様子で紡ぐ辺りは、魔族らしいマイペースさがにじみ出ていた。
■フォーコ > 「女でも男でも魔王は魔王だろ?
そこは世間の期待に応えて欲しかったかなあ。
正直、私としては思っていたのと違いすぎてどうすればいいか分からん。」
説教をされてもそれでめげることはないが、敵意も害意もまるでないことに関しては
毒気が抜けてしまう。 流石にこの状態で刀を振るっても違う気がする。
漂っている水は普通の水の様だ。
砦を飲み込まんとしている炎は当初の予定通り、砦中を包み込みつつあった。
一応、思う存分戦える環境は構築された。
「おい、人が折角出したのを消すな。
私はそっちと違って部下たちが見ているんだ。」
火が消されると、それだけで戦局が悪いのかと思われてしまう。
私にとって火は旗と同じようなものなのだ。
「駄目に決まっているだろう。
さっさと出て行くなら黙って返してやるが粘る様ならお前も引き継ぎも
両方殺すに決まっているだろう。」
だんだんイライラしてきた。
魔族らしいと言えばそれまでだが、随分と勝手をしてくれている。
やはりこの場で殺そうか。
私は鯉口に手を伸ばす。
■ルーシェ > 魔王らしい反応といわれれば、そうなんだけどねと呟き、苦笑いを浮かべる。
魔王らしかぬ振る舞いと雰囲気は自覚あることなので、あまりとやかくは言えない。
「そんなこと言われても、私は人と喧嘩したくない派だからなぁ。世間一般の魔王とは違うかもね? 今日はうちの領地の子が捕まってたから、ちょっかい出しただけだし」
彼女が毒気抜かれる理由となりそうな部分、魔王にしては交戦を好まぬタイプだと明かしつつ霧を操ろうとする。
しかし、火を消すのを拒む彼女にキョトンとしながら小首をかしげた。
「別にいいけど……砦丸焦げになったら、後で直すの大変だよ?」
どうせどちらが抑え込んでも修理して使うのだから、無駄に燃やす必要もなかろうと思っていた。
炎自体になにか意味があるとは気づいていないらしく、彼女が嫌がるならと、ぱちんと指を鳴らす。
すると霧は煙のように散っていき、空気に溶けて消えていった。
「ぇー、私としては勝手にしてなんだけど、空けて帰っちゃうと後で煩いんだもん、周りが。あっ、そうそう、引き継ぎの人達そんな強くないし、私のところの子じゃないし、入れ替わったら好きにしちゃっていいから……」
駄目だと言われれば、不服そうに目を横線を並べる様に細めて、唇を尖らす。
自身の領地の同胞以外ならあっさりと切り捨てる辺りは、魔族らしいドライな反応を示す。
それならと彼女に新たな提案を示しつつ、苦笑いを浮かべながら言葉を濁すのは、それじゃ駄目かな?と妥協案の提示といったところか。
鯉口に手を伸ばしていくも、こちらは最終的に刃を抜くまでは行動には移さない。
魔王として、それぐらいの余裕はあり、何よりギリギリまで喧嘩は避けたいのも心情だった。
■フォーコ > 「ああ、もう…。 面倒くさい奴だなあ。」
この手の話しが通じそうで通じないタイプは会った事がないわけではなかった。
しかし、今までは拳でどうにかなることがほとんどであった。
目の前の相手を除いて。
「それでいいんだ。
こっちも色々事情があるんだ。
分かったら私の炎に余計な事をするな。」
頭が痛くなるような気がするが、とりあえず彼女にこれ以上の鎮火をしないようにした。
彼女も大人しくしたがってくれてほっと一息。
あまり火が消えてしまうと心配した団員達に今の状況を説明しないといけなくなる。
「まあ、それならそうしようか。
とりあえず砦は燃えたままにしてくれ。
周りには膠着状態で長引いたと言うことにしよう。
そっちは入れ替わりで帰ってくれたらいいし、私はその後詰の部隊を潰すことにしよう。」
私は鯉口から手を離し、額に手のひらを載せてしばし考え込んだ。
魔族と手を組むのはこれで二度目だ。
苦笑いを浮かべている彼女が提案した内容はどちらもメンツが立つ落としどころと言えるだろう。
これ以上はどちらかが痛い目を見ることになる。
私もリスクなしでは彼女に勝つことが出来るとは思えない。
「後詰が来るまで休戦だ。
私はフォーコ・アッサルト。 そっちは何て言う魔王なんだ?」