2018/01/05 のログ
■ゼロ > 夜の訓練場に響き渡るナイフの音。
どれだけの時間同じ動きをしていたのだろうか、しかしてそれは唐突に終わる。
大きく息を吸い、吐き出せば仮面の脇から呼気が白く吐き出されていく。
それなりに動いていたせいか、鎧の中も汗ばんでいる模様。
いい時間になっていたようだ、今日の訓練はこのぐらいにしておくべきだろう。
あまり無理をしても体を壊してしまうのだ、いつ襲撃があるかわからないこの場所では程々にしておくべきである。
体が変なふうに固まらないように最後にもう一度柔軟をして解し直しナイフを鞘に収める。
きょろり、と周囲を軽く警戒し、誰もいないことを確認。
脇に置いておいた自分の荷物からタオルを取り出し、仮面を外して汗を手早く拭う。
そして直ぐに仮面を付け直すことにする。
まあ、仮面の下を見られて行けないわけではないけれど、あまり外したままにはしたくないもので。
仮面を再度付け直してからタオルを鞄にしまい、さてどうしようか、と考える。
休みに休めない性格してるのかな、とか思ってしまったり。
■ゼロ > しばしの間、休息して疲労感もある程度抜けてきた。
特に何をということも思い浮かばなかったけれどそういえば食事していないな、ということを思い出す。
せっかくだし、食事をしてから部屋に戻ろうと考えて少年は訓練所を後にする。
荷物はそのまま持っていくことにして、食堂の方へと進んでいく。
石畳はグリーブが踏みしめるたびにかつ、コツと音が響く。
流石に夜なので人の気配は少ない。
最低限の見張りなどの夜番を除いてはみんな寝ているだろう。
いつも夜に起きているせいか眠くはない。
なのでのんびりと食堂へ。
この時間は酒盛りも終わり寝ている人がほとんどのようだ。
まあ、未だに飲んでいるのもいるけど少数だ。
静かになりかけている厨房に入り、よく見る夜番の補給兵に夜食を頼み、トレイを受け取って隅の席へ。
そこで一人、静かに食事を始める。
ご案内:「タナール砦」にシズクさんが現れました。
■シズク > ギルドで引き受けた依頼は、王都より砦までの補給路の確保、及び補給物資の搬入。
冒険者被れの少女にとっては、他の補給兵が居たとはいえ、途中の小競り合いで気力を消耗してはいたが、
どうにかその任を無事に夕刻には終えていた。
王都に戻るにはすでに辺りは暗くなっていたから、出立するのは明朝、と補給兵たちには通達があった。
早々に休んでいく兵たちを見ながら、平穏無事な王都に住まう少女にとっては、
少しでも役に立てればと食堂の手伝いを買って出たのは少し前のことだった。
酒を飲んで盛り上がる兵たちの姿も、今は少なく、食堂は静かだったが、
それでもまだ食事にやってくる兵士もいた。
「………あ、そだ」
その兵が一人隅の席へと向かうのを片付けの手伝いをしている少女は、手を休めてそちらへと歩んでいく。
声をかける前にこちらに気付けば、にこやかに人懐っこい笑みを浮かべたであろうし、
気付かねば、あのーっ!と無駄に明るい声で話しかけるはず。
■ゼロ > 基本的に少年兵に声をかける人はいない。
そもそも、四六時中全身鎧の上仮面をかぶり、自分からはあまり話しかけない。
仕事はするけれど、部署が決まっていない。
怪しさ大爆発の彼と親しくしようというのは珍しい部類に入る。
「…………はい?」
まず声をかけられた仮面の少年兵の動きは、右を向いて……端っこなので誰もいないことを確認。
左を向いて、近くに誰もいないことを確認、目の前の席を……と周囲の確認。
それから仮面に隠された顔ごと声をかけてきた少女のほうに向いて見せる。
返答に関して語尾が上がったのは、本当に自分に声かけたんですかと言わんばかりの疑問符。
彼女を見ても、見覚えはない、というか正規兵でもなさそうだし傭兵かなにかだろうか。
元傭兵の出身でもあるけれど……傭兵の時代に彼女を見た記憶もない。
声をかけられる謂れが全く思い出せない少年。
その頭の上に【?】マークも思いっきり幻視できるかもしれない。
■シズク > 暢気極まりない人当たり良さそうな、少々オツム軽そうな朗らかな表情で近づいていくあたり、警戒心はゼロで、
辺りを確認している相手に、そそ、と笑顔で相槌。
白い仮面をついつい物珍しげに見るものの、特に尋ねることはしないくらいの配慮はあるようで、
そのままごそごそと腰から下げている小さな革のポシェットを漁り。
「あの、任務、ご苦労様です!…ってことで、ハイ!」
無駄に元気に明るい声。時間も時間だが、その辺りは気にしない。
取り出したのは小さな可愛らしい紙に包まれたもの。
「コレ、私がこっそり持ってきたお砂糖菓子です。
本当は余計なものは持って行っちゃダメだって言われたんですけど…。
途中で食べちゃったので、少ないですけど、これ食べて頑張ってくださいね」
小さなフルーツ味の砂糖菓子、いわゆるキャンディである。
正規の兵なら軍紀違反、と言われるかもしれないから、こっそりと小声で説明。
頑張っている兵士さんに差し入れ、というなかなか優しい気遣いを見せて、差し出したそれを、食事中のトレイに乗せる。
■ゼロ > 爽やかな笑顔で首肯する彼女、傭兵ではこんな子はいないなぁというか、こういうところにいちゃダメな類に思える。
笑顔が可愛いので癒されてしまう。一服の清涼剤、ありがたや。
「え……あ?
あー今日は非番なんだ……」
しかし、任務と言われて、少年は戸惑いに満ちた返答を返す。
運が悪いというか、間が悪いというか……お仕事してなかった日。
ポシェットから取り出されるその品物と言葉にさらに戸惑いが深くなる。
そして、差し出された紙の包みにくるまれた何か。
興味をそそられたのか、それをじいいいいいいいいっと眺める少年。
「お砂糖菓子……は?
本当に……え?
嘘、え?え?え?」
チョットナニイッテルカワカラナイ。
お砂糖って超高級な甘味料である、ハチミツとか果物の汁とかではない、とても凄いものである。
ちょろっと出してはいどうぞというレベルのものではないハズである。
にこやかな少女を見上げ、砂糖菓子を見下ろし、もう一度少女を見上げる。
ゼ ロ は こ ん ら ん し た !
すごい欲しい。
砂糖菓子(高級品)食べたい。
でもどうしてなんでどういうこと。
トレイの上で金よりも輝いて見える砂糖菓子を眺める。
そして少女を眺める。
軍規から言えば、貰えるようなものではない。
でも、砂糖菓子なんて高級なもの今食べなければいつ食べられるのだろう。
ブルブルガクガク、マナーモードのように振動する少年。
30秒お待ちください。
「今日は非番でね……僕に何か出来ることはあるかな?
非合法なこと以外なら相談に乗るよ?」
プライベートなお仕事の報酬としてもらうことにしました。
■シズク > 正直、こうしてアホみたいに明るくしていないと気が重い。
小競り合いで見た鮮血、耳にした声、感じた恐怖。
どれも王都の日常にはあり得ないほど生々しく、軽い「お手伝い」のつもりで依頼を受けたことを後悔したほど。
だが、目の前にはそこで戦う人たちがいるのだから、せめてこうして食事の時ぐらいは楽しく!
………という配慮があったのだが、当然口にしないから相手に伝わるべくもなく。
だから、とりあえずお菓子でも…たった3つしかないが…プレゼントして気を紛らわせてもらえれば、という作戦のようで、
にこやかな表情を浮かべ仮面の兵士を見ている。
「え、非番?…非番ってお休みってことですか?」
今日頑張って働いてた兵士さんじゃないの?という色が前面にでた顔つきに。
いや、だからと言ってお菓子を返してとは言わないが、何となく一瞬そんな含みがあったが、
すぐに、にっこりと笑って、まぁいいや!と切り替えた後、座ってもいいですか、と相手の正面の席を指さす。
「ハイ、お砂糖菓子です。実は、ちょっと割のいいお仕事をしたので、奮発しちゃいました」
割のいい仕事で稼いだお金でたまには贅沢を、というのが少女の金の使い道。
ではあったが、こうして最前線へとやってくると、ここで戦う彼らの苦労がしのばれる。
だから、さほど深く考えず…少なくとも相手が差し出されて困惑するなどとは微塵も思わず、
にこやかな笑顔付きで差し出したわけで。
「えー?いやいや、そんな、気にしなくて大丈夫ですよ。
あ、でも1個だけお願いが」
さほど砂糖菓子が惜しい訳ではない。惜しいワケではないが、指を1本立ててから、
「1個ください」
3つ差し出したうちの、1個、それを回収したいらしい。
やっぱり密かに惜しんでいるが、それはそれ、やはり甘い物好きとしては食べたいところ。
それに明朝出立で何があるかわからないから、保存食としても1個は確保しておきたい。
■ゼロ > にこやかな少女、雰囲気からも朗らかで平和なオーラが見て取れる。
やはり此処に居てはいけないタイプの人だなぁ、というのを感じ取れるのだ。
「ええ、そうです
15日ぶりの休みなもので。」
昨日は頑張っていたけど、今日は頑張っていません。
彼女の落胆顔に申し訳なさそうに言葉を放つ。
彼女としては、お仕事頑張った兵士に上げたかったのだろう、むしろ申し訳なく思えてくる。
向かいの席を伺う相手にどうぞ、と手のひらで指し示して了承の意を見せた。
「うん、だろうね……凄い奮発してるように思える。」
砂糖菓子である。
こう、見知らぬ人にはいと、あげていいものではない。
最近砦に天使が現れたといううわさを聞いていたけれど、ああなるほどそういうことかと納得した。
「君が噂の天使様だったのか。
なんかストンと納得できたよ。」
そりゃあ、こんな血なまぐさいところに笑顔で砂糖菓子をプレゼントしてまわれば。
天使として崇められても仕方がないなぁ、とか少年は思う。
実際天使だし。
「うん?」
1個お願いが、という言葉に少年はなに?とばかりに首を傾ぐ。
仮面で表情が見えない代わりに、ややオーバーなアクションで意思を疎通させる。
一応今までの経験からの無意識の動作ではあるものの。
彼女のお願いを聞いて少年は軽く肩を震わせる。
「はい、どうぞ。」
と、もらった包をそのまま返そう。
その包に三個入っているというのは、仮面の魔力捜査でわかっていた。
でも、包みはひとつだ。
なら、その包をそのまま返そう、開いてなければ、一個なのだから。
「気遣いと君の笑顔で癒されたし。
その報酬はこれでいいよね?」
少年は楽しそうに問いかける。
■シズク > 「えっ、15日ぶり?!だったら、うん、えと、大丈夫です、食べてください!」
相手の反応からして、自分がずいぶんと正直な反応を見せてしまったことは察して、
慌てて取り繕うように砂糖菓子を受け取るよう空を押すように手を動かす。
許可を貰ったから、向かいの椅子に座って、テーブルに両腕を乗せ、少し前かがみで寛ぐ雰囲気で相手を見ながら、
「王都に戻れば、またそのお仕事すればいいので!それに、15日ぶりにお休みだったら、また明日から任務ですから!」
奮発しようとも、1個食べたいなぁ、とひそかに思おうとも、ここは最前線タナール砦である。
そこで任に付く彼が喜んでくれるならむしろ安いものだ。
それに、自分は明日には王都に向かう。
彼らはいつ王都に戻れるかわからない………とも思っているから、
返してもらった砂糖菓子の小さな包みを受け取ると、その端をぴり、と破る。
白とピンクのマーブル模様の丸く可愛らしい砂糖菓子だ。果汁が多いから甘酸っぱい味が何とも癖になるお味。
ころりと1つを掌に乗せてから、残りの2つは相手の方へと包みごと差し出して。
「私、天使ですか?…うーん、勇者がいいけど、まぁ天使でもいいです。羽はないですけど。
じゃあ、天使さまからお返しです。どうぞ」
噂の天使、という言葉に不思議そうに首を傾けるが、それはそれ、イイ響き。
なので、否定はせず、むしろちょっと嬉しそうな顔になると、若干話がかみ合わないかもしれないが、
気にする素振りもなく、丸い小さなマーブル模様の砂糖菓子をころころと掌の上で転がしながら、
正面の相手を眺める様子は、天使とまでは言わないまでも、穏やかな雰囲気を醸し出すには十分すぎるだろう。
「あの、それで、兵士さん、もう1ついいですか?折角だから、名前、聞いておきたいです。私、シズクっていいます」
ついでにお願いごとをひとつ追加して、首を傾けては、じっと相手の仮面の向こう、
それを見ようとするような、少々不躾かもしれない真っ直ぐな視線を注ぎながら問いかけて。
■ゼロ > 「まあ、ほら此処は最前線だからね。
休める時はあまり、休みの日に襲撃あればそれで休みは潰れるし。
それに、のうのうと休んでる間に抜かれたら困るから。」
大丈夫定期的に交代するし、とカラカラと笑ってみせよう。
慌てなくてもいいよ、と。
「お給金のいい仕事は基本的に危険な仕事が多いものだと思うよ。
もしくは、口に出せないような事とか。」
あまり自分をいじめないでくれよと、少年は心配をする。
理解があるだけでも、十分に嬉しいことなのだから。
それに、お金は自分のためにも使うべきものである、自分が元気で余って仕方ない時に、少し幸せを分けてあげればいいんじゃないかな、と。
確かに、何ヶ月か王都に戻った記憶はないし、戻るときは何がしかがあるときである。
ほかの兵士よりはスパンが長いかも知れないのはまあ、身寄りもないから。
ピリ、と破られた袋から転がる甘い香りと、丸い砂糖菓子。
一つが彼女の手に入り、二つ差し出される。
「勇者というには、血なまぐさくないなぁ。
やっぱり天使かな?」
差し出された砂糖菓子を眺めながら、勇者がいいという相手に対して感想を一つ。
のんびりとしている彼女の様子にやっぱり天使様でいいと思うよ、と。
「ああ、失礼。王国軍第七師団所属の見習い兵士のゼロと言う。
シズク、よろしく。」
彼女に笑い返しながら、仮面に触ってみせる。
気になっているのだろう、だからうなづいてみせる。
「この仮面で、生きてるようなものなんだ。
外すことはできなくもないけど、あまり外したくないんだ、ごめんな。」
生命維持の一旦であるから許してくれ、と黒い後頭部をポリポリと掻いて謝罪。
■シズク > 相手の言葉から、現実を知ると、叱られた子どもか、犬か、みたいにしゅん、となってやや肩を落としては、
「そうですよね、やっぱり任務、大変ですよね。ごめんなさい、非番だから働いてないみたいに思って」
正直に思ったことを口にして謝罪をしてから、笑ってくれる相手を見て、ごめんなさい、と。
こうやって気遣いをしてくれるような心根の穏やかな兵士もいると思うと安心するし、
一方で王都でぬくぬく、な日々を少し反省をしたりもするけれど。
「ありがとうございます、気を付けます。でも、お店番とかなので。
あとは、九頭龍山脈辺りで蒐集とかだし」
大丈夫っ!とぐ、と拳を握り明るく元気に応えて見せるのは、何も空元気というわけでもなく、
相手の声色から判断するに心配してくれていることを察すれば、それを払拭しようと、である。
「勇者は無傷で戦うんですよね、多分。逢ったことないので解りませんけど。
…ふふっ、天使ってなんだか嬉しいです」
照れますなぁ、と照れ笑いを浮かべながら、若干勇者なるものの定義や情報が怪しいが、さほど重要でもないようで、
それより天使だと言われることの方が何ともくすぐったく、嬉しい。
破顔して、名を継げてくれた相手に、はい、と頷いてから、
「ゼロさんですね、ちゃんと覚えました!
あ、え…ご、ごめんなさい、じろじろ見ちゃってました?
その…かっこいいのかなーって、素顔を見たいなーと思ったので。…ごめんなさい」
こうして言葉を交わすとなんとなしに気になるから、ついつい視線を注いでしまった。
年頃の少女だから、まぁ顔の良し悪しだって気にしよう。
だが、相手は怒るどころか、逆に謝らせてしまったからバツの悪い表情を浮かべて慌てて首を振り。
「そ、そだ。王都に返ってくることがあったら、美味しいお菓子のお店、紹介しますから。
あの、…なので、ええと…怪我しないでくださいね」
と慌てて話題を変えたものの、最後は何となくしんみりした話題になったので、とりあえず砂糖菓子をぽい、と口に放る。
ころころと舌の上で転がして、その甘酸っぱさにほっこり。
やはり甘いものに限る。
■ゼロ > 「大丈夫だよ、ほら、一応仕事といっても時間は決まっているし。
大変になるのは襲撃の時ぐらいだから。」
そんなに気にしなくてもいいから、とシュンとする彼女に言葉を放つ。
彼女にイラついても仕方がないし、それは人としてどうなのだろうというところがある。
寧ろ、ここで怒ったらきっとファンクラブが出来上がっていてその面々に後で屋上に連れて行かれるだろう。
なんとなく思った。
「九頭龍山脈って盗賊が多いじゃないか。
本当に気をつけてくれよ、軍が定期的に族を退治に出ても退治しきれていないのが現状なのだから。」
むしろ心配になりました。
年が近いからこそ余計に大丈夫だろうかという不安。
まあ、不安に思いすぎても失礼だし、それ以上はもう言わないでおこうと決めた。
「そもそも、勇者の定義ってなんだろう?
僕もあったことは無いし……本当になんだろう。
優しいし、癒されるし、シズクは天使を名乗るといいと思う。」
よく聞く職業ではあるけれど、誰が決めてるんだろう、とか首をかしげる。
勇者はわからないけど、天使はこういう子の事を言うのだろう。
だから天使の方に、と彼女の言葉に同意した。
「ああ、一応この仮面、周囲はちゃんと見えるから。
はは、カッコいいかどうかはわからないな……。
そもそも、仮面を外して誰かと合うなんて殆どないし。」
まあ、期待しないほうがいいと思うよ?
自分の美醜はむとんちゃくな少年でした、そもそも美醜で戦場生き残れませんし。
「ん、怪我をしないというのはちょっと約束しづらいけど。
砂糖菓子の為に頑張って生きて王都に戻ることは約束するよ。
生き意地だけは汚いからさ。」
その時は宜しくね、お給金たくさん持って食べ歩くから。
甘いものは、大好きです、幸せになれます。
なので全力でお約束。
仮面の目のあるところが光ったかもしれない。
目のところものっぺりした仮面なのですけども。
■シズク > 「襲撃、当分ないといいですね。ゼロさんの任務が減るように祈ってますし!」
しゅんとしたけれど、気を取り直すのは早い。
笑顔で声援を送るぐらいしかできないが、砂糖菓子を渡してしまった以上、物資的な応援はできないから、
何とも安上がり。でも、天使だと言ってくれた彼なら喜んでくれるはず、とちょっと調子に乗っている感が否めないが。
「ゼロさん、優しいなぁ…」
心配してくれているらしいことが解って、何ともほんわかした口調でしみじみと。
仮面の向こうの素顔は知れないが、いい人だ、とは解る。
声の雰囲気や言葉から、さほど年齢が離れているというわけでもなさそうだから、ついつい口調も崩れてしまった。
「勇者さまっているのかな。砦あたりなら居そうな気もするけど。
…あっ、まさかゼロさん、その仮面で勇者ってことを隠して、る?」
勇者とは何ぞや、と思わず二人して考えてしまいそうになったが、ふと気づいた。
彼の仮面は世を忍ぶ姿ではなかろうか!…と。
少々オツムの出来がよろしくないから、再びじ、と相手を見つめてしまう。
彼が言う天使だというなら、ここまでオツムは軽くないだろうし、もう少し配慮もあろうものだが、
残念ながら天使にほど遠い少女にとっては興味が先立ち。
「んー、そうなんですか。
でも、安心してください、私、人を見た目で判断したりしませんからっ。
それに、何となくゼロさんはかっこいい予感がしますしっ」
きりっ、と真顔で断言したが、そもそもイケメンかどうかを気にする前言がある以上、まったく説得力はない。
とはいえ、相手には相手なりの事情があることは理解できたから、こくん、と頷いてそれ以上興味を向けるのは控えるつもり。
「ハイ!王都に戻ってきたら、食べ歩きしましょ!
なので、絶対生きて帰ってきてくださいね。怪我したら、すぐに衛生兵を呼んでください。遠慮不要」
努めて明るく、約束をする表情も声も、最前線という場所では不釣り合いだが。
それでも、折角出会えた縁である、せめて殺伐とした場所以外で再会したい思いもある。
ころころと舌の上で転がす砂糖菓子はちょっとだけ酸っぱい。
甘い甘い砂糖菓子を、無事に王都に戻ってきた相手と食べる日が来ることを祈りつつ。
■ゼロ > 「そうだね……魔族の国が攻めて来るのをやめてくれればいいんだけど。」
まあ、そりゃないよなぁと、ぼやいてみせる。
それでも声援を受けたのだ、頑張らないとと少年は頷こう。
「……え?」
優しいの?普通じゃないかな、というか、こんないい子を心配しないでどうするんだろう。
多分普通だと思うよ?そう言いながら首をかしいでみせる。
「イヤナニソレコワイ。
勇者とかわからない存在にしないで欲しいなぁ、王国の兵士だよ?
こう、モブ的な。
ほら、勇者魔法とか使えるじゃん?俺使えないし?」
いやいやいやいや。ないないないない。
なんでそう言う結論が出てくるのか少年にはわからなかった。
こうRPGで言えば、前衛に立って攻撃を受け止める戦士的な戦士である。
狂が付いてもいいような戦士である、興味深そうな相手に、首をブンブンと横に振る。
「見た目……仮面でしょうに。」
見た目も何もないと思う、仮面の下はもしかしたら、人には見せられないグロい系の可能性も。
まあ、多分普通の東洋系の顔ではあるけど。
鏡もあまり見ないから、自分の顔自体よくわかってない。
ある意味稀有な存在。
「衛生兵……ははははっ!!
そうだね、じゃあ、街に出た時は宜しくね。
何がしかの任務で、戻ることもあるだろうし。」
いつの間にか衛生兵になった彼女。天使から華麗なる職業変更に思わず笑ってしまう。
肩を震わせて思いっきり笑いながらも、よろしく、と。
まあ、ここで叫ぶと本当にきそうだから、えいせいへーいと小さく呟いてさらに笑う。
笑いのツボがちょっとずれているのかもしれないが、楽しいと萌えてしまったから仕方ない。
■シズク > 相手が言う通り、侵攻が止まるかどうかは望み薄。
だよねえ、とがっくり肩を落とすのは、己が前線配置ではないにしろ、続く戦闘、小競り合いに対する拒否感からである。
しかも、目の前の少年も明日にはその中に身を投じていくのだから。
「…え?」
相手の言葉を聞くと同時に同じセリフが口から零れる。
え、優しいでしょ?という確認の意味を込めて相手を見てから、相手と逆の方向に首を傾げて。
「実は仮面をとったら勇者さまで、んで、えーと、実はすごい秘密が、とか…で、イケメンとか」
きゃっ、と一人で何やら盛り上がってしまったが、相手の言葉に、あら、と盛り上がりは鎮静化。
魔法が使えない、と聞くと、私もっ!と思わず身を乗り出してしまい。
そして結論付けた、彼は勇者じゃない、自分と同じ魔法が使えない人だっ、と。
そして、その結論は一気に親近感を抱かせたようで、人懐っこい笑みを浮かべ、
「じゃあ、お互い勇者を発見したら教え合いましょう!」
と提案して終わる。
この世界のどこかには「勇者」という職業の人がいるだろうことを想像しつつ。
「え。…いや、えーと…仮面も、うん、仮面もこう、なかなかステキな感じでー…」
ツッコミめいた言葉に、慌てて仮面自体への褒め言葉も口にする。
白い仮面、としか、語彙力のない己には表現できず、あたふたしてしまう。
きっと、たぶん、かっこいいはずなので!と無理やり暗示でも掛けるように矢継ぎ早に畳みかけておく。
「任せてください。私、これでもちゃんと働きますし!
わおっ、そうそう、そんな感じ!」
笑う相手の様子に、ほっこりしつつも、試しに呼んだ呼び方を意味なく褒める。
実際には、そういうことがない方がいいのだが、いざというときのレクチャーをするほぼ新米冒険者。
相手の方がずっと手練れであろうにもかかわらず、こうして話に合わせてくれるのだからありがたい。
「…あっ。はぁい、お手伝いにいきまーす!」
その時厨房から声が掛かった。
明朝の支度の手伝いをしてほしいという夜番の声。
兵が起き出す前に支度をしたいであろうし、そのためには人出が足りないのは解っていたから、返事をしてから席を立つ。
「約束ですからね、ゼロさん。無理しちゃダメですから!
……今日はお話できて楽しかったです!ちゃんと砂糖菓子、食べてくださいね」
明朝にはここを出立して王都に戻る身である。
手伝える時間は多くはないが、こうしてここを護る兵士である彼と話したことで、少しでも役に立ちたいとは思ったようで。
にこやかに、穏やかに、そして少しばかり心配する色を乗せた声を掛け、
「おやすみなさい、ゼロさん!」
そう声をかけ、食堂の厨房へと向かう。
こうしてのんびり話ができたこと、そして襲撃がなかったことに感謝しながら―――………。
■ゼロ > 「ゑ。」
彼女からも同じ音が発せられた。
すごいすれ違いを感じるがこれは自分の常識のなさのせいなのだろうか。
多分そうなのだろう、作成後戦場に生きて、軍にいるし。勉強していても、街にいないとわからない常識もあるのだろうと。
自分勝手に納得することにした。
「まあ、確かに人間だから秘密の一つや二つはあるだろうけど。
大したものはないよ?」
大嘘吐きました。
イケメンとかではなく、首のスカーフの下には奴隷の証、全身は強化しすぎで、鎧と仮面がないと崩壊しちゃったり。
魔法を使えないのは体に刻み込まれた魔術のせいだとか、全身薬漬けとか。
天使に言えないことのオンパレード。
まあ、勇者じゃないのは確かです、兵器です。
「ん、了解。
勇者見つけたら連絡するよ。」
その提案に乗ることにする。
問題が二つあるが、見事に失念したまま。
何を持って勇者とするのか、ということと、彼女の連絡先を知らないという素敵で大事で最大の問題。
でも、それに気が付くことなくスルーするのがこのふたりなのだろう。
「無理に言わなくてもいいと思うよ?」
うん、仮面は仮面でのっぺらぼうの仮面だし。
白くて顔を隠すだけで目の部分も口の部分も空いてない仮面。
とりあえず無理に褒めなくてもいいと思うのと、手をパタパタと降ってみる。
「じゃあ、街で見かけたら覚えていたら呼ぶよ。
でも、名乗ったりしたらそのまま軍に入れられてしまったり罰せられたりするかもだから気をつけてね?」
ほら、一応兵士は国家公務員みたいなものだし。
詐称はさすがにいけないからね?気を付けてね、と。
それに、少年も年頃の男の子、雑談するならノリと勢いと脊椎反射であったりもする。
もう少し大人になってもいいかもしれない。
「っと、お仕事頑張ってね。
引き留めて悪かったよ。」
夜番の厨房の兵士の声に少年は立ち上がる。
彼女も立ち上がるのを見て、トレイを持ち上げた。
「砂糖菓子、ありがとう、大事に食べるよ。
またね、シズク。」
彼女に答えを返し、彼女と共に歩き、と礼を返してから自分の部屋に戻るのだ。
食堂からでたら、仮面を外して飴を一つ口に入れる。
ころりコロコロ、飴をなめながら、少年はその甘さと彼女の心遣いに、感謝をしつつ、休むのだった―――――。
ご案内:「タナール砦」からシズクさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にカレンさんが現れました。
■カレン > (現在はこの砦は、人間側が支配している。
夜になり魔物の襲撃もなくなってきたので、
一人砦の外を見る。
カップに入った紅茶をすするが、
薄い上に冷めている)
■カレン > (戦場で食べる食料が不味いのは普通である。
嗜好品の紅茶となればなおさら。
砦に近寄ってくる魔物も
見張りに立っている兵士たちだけで追い返せている。
なんとか均衡は人間に傾いていた)
■カレン > (全滅するかさせるかの激しい戦闘もあれば、
こうして比較的穏やかに防衛に専念できる時もある。
そういう意味で、この砦はまるで海のようであった)
…もう一杯飲むか。
おーい…
(部下に紅茶のおかわりを持たせる。
やはり薄くて冷めている)
■カレン > (これからますます冷えてくる。
夜だからではなく季節的に。
魔物も、寒さに強い種族が増えてくる。
こちらは、あるいは雪で馬が使えないかもしれない。
そういったことを考えると、
おちおち呑気にしてもいられないのであった)
うーん…
■カレン > 私が考えても仕方ないことではあるが…
(カレン・クラフトはしがない百人長。
作戦立案や指揮は、その都度配属させられた部隊の長がやる。
カレンは上手く命令を遂行することだけを考えていればいい。
そう思いながらも、部下たちを失うのは恐ろしい。
思考が堂々巡りする)
もう寝よう…
(その日は、手近な部下を誘って慰めさせた)
ご案内:「タナール砦」からカレンさんが去りました。