2017/06/17 のログ
ご案内:「タナール砦」にウィルバーさんが現れました。
ウィルバー > 闇の勢力が跋扈する時間。
タナール砦の中を金色の瞳を輝かせてうろついている不審な人物がいた。
まあ、僕であるが。

荒事の苦手な僕がここに来た理由は一つ。
ここの戦でほったらかしにされた遺体を回収するためである。
つい先刻まで、王国軍と魔族軍の派手な戦があり、どちらも膠着状態となってしまい双方とも砦からは撤退した後。
どちらにとっても想定外の結果だったようで、味方の遺体の回収すら出来ぬうちに闇夜が訪れたというわけだ。

どうせなら、可愛くて状態の良い遺体が欲しい。
僕は生存者が居ない筈の砦で、そこらじゅうに散らばっている遺体を一体一体見て回ることにした。

ウィルバー > まずは一体目。 恐らくどこかの家の貴族の関係者と思われる女性騎士の遺体だ。
死因は…止めておこう。 飯が不味くなる人もいるかもしれない。

とにかく、目の前の遺体に魔術書で身に着けた術を行使する。

どうやら、成功したようだ。 右手で剣を持ったままこちらを睨み付けてきた。
「いや、僕を睨みあげても意味ないよ? 君は今、僕の術で生かされてるんだからね。
拾った命を僕がどうしようと勝手だよね?
…いや、そんな顔で睨まれても事実は変わらないから。
とりあえず、今日から僕の家で家事手伝い頑張ってね。
早く終わったら遊んでてもいいからさ。」

まだ不満そうだが、術の影響下にある以上、僕には逆らえない。
随分と落ち込んだ様子でだが、僕の家に向かって行った。
さて、次を探そう。

ウィルバー > 完全に死んだ人間をああやって呼び戻せるなんて、こっちの術の方がよっぽど奇跡のような気がするよなあ。
な~んて言うと、敬虔な人たちに怒られちゃうな。 うん、口に出すのは止めておこう。
なんだっけ、雄弁は銀で沈黙は金だったかな。 そういう意味では僕は常に銀メダリストか? …うげ、銀かよ。

銀もらう位なら銅の方がマシだなあ。
頭の中で色々考えていると、早くも2体目。 これは幸先いいぞ。

しかもこの人、生きてたら僕よりもっと偉い魔族だな。 結構強くなった今では僕の方が強い気がするけど。
まあ、僕の場合は色んな人に支えられての強さだからね。 僕一人の力では決してないからなあ。

とにかく、術だ術。 魂が離れてからでは、違う中身になってしまうし、腐敗の進む前に術で固定しないといけない。

………よっし、成功だ。
その証拠に、僕のことを睨み付けたあと、魔法を使おうとしてきた。
ま、体の自由を制限できるので無駄なんだけどね。

「ごきげんよう、同族さん。 残念だけど、今から君は僕の配下だよ。
とりあえず、君の数分先輩が先に家に向かって行ったので合流してね。
…え? 人間は敵だ? いや、人間も魔族も僕の前では関係ないよ? ラブアンドピースだね♪」
右手で親指を突き立ててみたが、無視された。
おまけにぶつぶつ文句を言いながら消えていく。

ワープできるのか。 いいなあ…。 

ウィルバー > これはあれじゃないか? 魔王クラスが死んで直ぐの現場に行けたら魔王が僕の戦力になるんじゃね?
問題は、魔王が死ぬような現場がそうそうないことと、そんな現場に立ち入って僕が無事でいれるかどうかだが。
仮にそんなことが出来れば人間、魔族どちらへもパワーバランスが変わることだろう。
当然、僕は自分の意思に関わらず抗争に巻き込まれる可能性が生じる。

そうこうしていると、3体目の登場だ。 損傷の酷い物や、今回の趣旨にそわない遺体が多くだいぶ空振りが続いたあとの3体目。
だが、これは…。

「そう、最後まで戦いぬいたんだね。 お疲れ様。」
僕は石化した遺体に話かけていた。
石化してからの時間が長く、普通に解呪した所で元には戻らない。
石にされる直前まで戦っていたのか、右手には剣を、左手には魔術を使おうとしていた痕跡が残っていた。
彼女は僕が担当していた、学院の卒業生である。 剣も魔法も学院内で抜群の腕前で、卒業する前から進路が決まっていた模範的な優等生であった。

「気が付いた? 君は石にされてたんだよ。 覚えあるよね? どうする? このまま術を解けば多分あの世に行けると思うけど。」
久方ぶりの再開となった卒業生に、今の状況と、僕の素性を伝える。 最初は驚いていたが、僕の家で働いてくれることになった。

「それじゃ、新しく買った家の方に向かってね。 人間の騎士と魔族が居るけど、喧嘩とかしたらダメだからね?」
この娘とは、割と仲が良かった。 別に男女の関係になったことはないが、実家がややこしかったのか学院内に居ることが多かったからだ。
だから、こんな形とはいえ再開できて…いや、止めておこう。 それは僕の都合が良い言い訳だ。