2017/03/30 のログ
クラリッサ > 「私はクラリッサです、では尋常に…ぶほぉ!」

余裕を持った対応とは裏腹に拳をまともに食らって派手に吹き飛ぶ。
所詮格闘戦なんか碌にやったことがないんだから当然の結果と言える。

「い、痛いじゃないですか―!」
涙目になって頬を抑えながら立ちあがる。
頬は膨れ上がって真っ赤になっているがまだ致命傷に至っていない。

そして立ちあがった瞬間にゼロの背後に地中からもう一人のクラリッサが現れて後頭部に魔力の籠ったパンチを放った。

ゼロ > 渾身の一撃は、凄く綺麗に決まった。
 あれ、と拍子抜けをするぐらいに、綺麗に決まった。
 見れば、ものすごい勢いで吹っ飛んで顔を赤く晴らしている。
 普通の人間ならもう気絶してるというか顎が砕けてるレベルだ。

「魔王はすごくがんじょ……!」

 そこまでしか言えなかった。
 少年は良くも悪くも物理的な存在で、魔力は常時0
 魔力感知とかそんなスキルもなければ背後から出てくるもうひとりの存在に気がつくことが遅れた。
 彼女がぶっ飛んで拍子抜けしたのも理由の一つだ。
 後頭部にクリーンヒットして、少年は顔面から地面にぶっ倒れる。

 頭蓋骨が陥没しているように見える。

 が。

 鎧が。
   仮面が光り。

 少年の後頭部が見る見るうちに修復されていく。

「っくぁ……!!!
   後ろから……だと!?」

 頭をブンブン振りながらよろよろと立ち上がる。
 リビングデッドを彷彿させる、自動回復系。

クラリッサ > 「あら、とっても頑丈」

普通の人間なら即死のはずだし実際に手ごたえがあったのだが
明らかにおかしな再生速度。
ただの一般兵ではなさそうだ。

「どうやら再生能力をお持ちのようで」
この手の相手は正直倒すのはすごく面倒だ。
だったらそれはそれで手段は存在する。

「私、さっきも言った通り個人としては弱い方なんですけど…」

次の瞬間クラリッサと同じ姿をして分身が1000体ほど現れる。

「対軍隊なら魔王の中でも強い方なんです、貴方の相手は面倒なので、サッサと砦をいただきますね~」

そして1000体でタナール砦に突撃をしようとする。
ゼロを完全に無視して。

ゼロ > 立ち上がり、頭を振り仮面に張り付いた泥を跳ね飛ばす。
 戦闘の意思を無くさぬままに、少年は再度の構えを。
 一般兵なのである、特殊であるのは間違いはないが。

「そういうふうに作られましたからね。」

 ええ、魔族と戦うために、そのように作られた、少年。
 そして、次の瞬間目にした光景に、仮面の下の目が見開く。

「……は?」

 目の前に、たくさんいる。
 同じ顔、同じ服装、同じ……存在。
 それこそ、一つの軍隊というレベル。
 正直、怖気が走る、こんなに同じ顔が同じようにいるのは。

「……っ!!」

 自分を無視して、走り始める『彼女』ら。
 その数は、一人では対処できないが。
 砦には、まだほかの兵士もいる。
 無視をしようとする彼女ら。

 少しの間なら、なんとかする手段はあるが、それは将軍に使うなと言われた。 

 別の方策を思考し、最初に殴った彼女が本体だと思った少年。

「させるかっ!!」

 真っ直ぐに、最初殴って頬を腫らしている個体に、再度の攻撃をするためにダッシュする。
 狙いはその腹部。
 走り込みながら、懐まで接近し、地面が凹むぐらいに踏みしめた腰だめに力を溜めたボディーブローを放つ。

クラリッサ > 白兵戦では勝ち目はない。
そもそもそんなタイプじゃない、こうげきをまともに受けて血を吐く。

「もしかして…私が本体で私をどうにかすればいいと思いました?残念」

にこりと微笑むと零の腕を掴んで全身が発光して。
「私の本体はもっと遠くに、私も分身の1体にすぎません、それではごきげんよう」
言うと同時に自爆する。

残りの砦に突撃した分身は瞬く間に砦を制圧しようとしていた。

ゼロ > 致命的な間違いを犯していたことに気がつかぬままの、攻撃。
 それは狙いを違うことなく彼女の腹部に突き刺さる。
 そこからの、衝撃の事実。

「……な…?」

 分身だと言われて、衝撃に一瞬身が固まる
 ここには本体がいないと言われ、自分の腕を押さえ込まれる。
 はっとして、逃げようと思うも、それは遅かった。
 自分の攻撃は彼女に突き刺さり、腕を引く刹那の時間。
 自爆に巻き込まれ、少年の体は大きく吹き飛ぶ。

 地面に落ちる自分。

  霞む視線に、陥落していく砦。
  先程までの幸せなひとときがあっという間に阿鼻叫喚の地獄に。
  その声を聞きながら、地面に倒れ伏す。

 回復がもどかしい。
 しかし、自爆の威力で立ち上がれない。

クラリッサ > 砦は制圧。
逃げる敵は追わない、魔王に砦に親友された時点で負けなので死んだのはせいぜい1割程度だろう。

人がいなくなれば個人としては特に問題はない。

「これで用事は済みました、それでは、またご縁があれば」

分身の1体が倒れている零に声をかけてそのまま地面に溶けるように消えていった。
そして砦は無人となり、ほどなく適当な魔族が占拠することになるだろう。

ご案内:「タナール砦」からクラリッサさんが去りました。
ゼロ > 再生は、高速で行われていく。
 全身の焼け焦げた匂いが、綺麗な肌に生まれ変わり、肉体の機能が回復していく。
 力が入るようになるまでの間、倒れ伏したまま、彼女の言葉を聞くことになる。

「……畜生。」

 魔族と戦うために作られた。
 その存在なのに、このざまだ。
 この程度なのかという、悔しさ。
 彼女が消え去ったあと、回復が終わればのろのろと立ち上がる。

 逃げ去った仲間。
 少年は、部屋に戻り、自分の荷物を回収し。

 大事なものを回収し、砦から撤退する――――

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。