2017/03/02 のログ
ゼロ > 手早く食事を済ませ、水をコップ一杯飲み干す。
 ぷは、と小さく息を吐き出して少年は食事のトレイと皿を回収場所に置いた。
 そのまま通路に出れば、足を進める。
 まずは休憩室に移動しつつ、何するか決めよう。
 とりあえず、襲撃があるか、何かしらの呼び出しが来るまでは暇になる。
 次の作戦が決定するまでは一応は休みとなるのだから、なにか羽を伸ばすのもいいかも知れない。
 とはいえ、ぱっと思いつくものがない。
 とりあえず、歩いていれば何かしら思いつくかも知れない、それに休憩室で眠くなるまでボーっとするのもいいかも知れない。
 そんなふうに考えたから少年はのんびりとした足取りで休憩室へと進む。
 多分今頃会議室では喧々諤々の会議でもしてるんだろうなぁ、とふと、思っても見たり。

 まあ、いいや、と考えるのをやめて何しようか、と考え直す。

ご案内:「タナール砦」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 男が食堂に入ると、あたりがざわつく。
今回の遠征で一軍を率いるオーギュストが、兵士用の食堂に現れればそうなるだろう。
もっとも、彼は戦闘には参加していない。今回は遠征での強行軍の訓練として、タナールまで出張ってきただけだ。

しかし、戦闘の記録を読むと、まぁひどいものだった。
わざわざ大魔法を誘発する為に傭兵軍を先陣で集中させ、囮として使ったようだ。
そんな事をしていれば、傭兵どもの値段が高くなり、王国軍のクビを締めるだけだろうに。

「よぉ、親父。今回は災難だったな」

見知った顔の古参の傭兵に声をかける。
老傭兵は憮然としながら頷くだけだ。
これはまずい。かなり士気が下がっている。

「んな顔するな。俺から一杯奢るからよ――おう、傭兵どもには俺からおごりだ、飲め!」

ゼロ > 少年と入れ違いに、大剣を背負った誰かが食堂に入ったようだ。
 思考に囚われていたせいで誰が通ったのかまでは記憶になかったが、背後で大きなざわめき。
 と言うか歓声が聞こえてくる。
 何らかの報告があったのだろうかと気になって少年は足を止めた。
 気になってしまえば、暇を持て余すだけの体だ、そっちに行くことに抵抗はなくて、食堂へともどる。

 ひょこり、と食堂の入口から仮面が覗く。
 凄い異様な光景だが、本人は気にしてないし、おそらく食堂の傭兵全員は酒を飲めると気にもしない。

 仮面の少年が見たのは、大剣男の背中のみだ。
 故に誰かわからない。

『将軍様有難ぇ!!』

 傭兵たちの声にて、ようやく食堂にいる大剣の人物が、今回の自分たちのトップの将軍だと認識した。

「酒かぁ……」

 飲めなくはないが人体実験の後遺症で、酒は分解されて酔えない。
 奢っているようだが、どうしたものだろうと思考する。

オーギュスト > よしよし、現金なもので、何とか士気は戻ったようだ。
会計はどうせタナール司令官につけるからいい。
あんな下手な戦をした罰だ。

「――あん、お前も飲むか?」

ふと視線を感じて振り返れば、少年の傭兵が一人。
何か仮面を被っているが――まぁ、傭兵というのには色々いるものだ。
もしかしたら、大きな火傷があるとか、呪いで動物の顔に変えられたとかかもしれない。
触れてほしくないのではとあたりをつけたオーギュストは、仮面には触れないでおく。

「おう、酒でも飯でも奢ってやるよ。今回はご苦労だったなぁ」

ゼロ > 傭兵は生き死にが関わるだけに即物的な思考の人が多い。
 よく言えば今を楽しんでいるというやつだ、お偉いさんが自分らのことを労ってくれるなら、それはそれで嬉しく思うものだし。
 ふと、彼が振り向いた、こちらの気配を察したのだろうか。

「ありがとうございます。
 しかし、僕はお酒は飲めませんし
 無理に飲んですぐ襲撃があるといけないので、僕は遠慮しておきます。」

 酒でも飯でも。
 彼の好意を無駄にしてはいけないなとは思いつつも、酒は飲んでも意味ないし。
 食事も今撮り終えたばかりである、さてどうしたものかと考えよう。

「しかして、将軍はなぜここに?」

 将軍ともなれば、普通はこことは違う特別な場所で食事をするものなのだろう。
 一緒に食事する将軍とか指令を見たことがないので、その疑問を素直に口にすることにした。

オーギュスト > 傭兵どもは遠慮なく酒をかっくらっている。
にも関わらず、少年は飲まない。
理由は、この後襲撃があるといけないからだと言う。

「へぇ……」

こいつは生き残るな。彼の直感が告げる。
食事も今しがた食べ終わったばかりのようで、奢るのは無しだ。

「あん、上の将校用の食堂だと酒が出ねぇんだよ」

オーギュストが言うと、古参の傭兵たちがゲラゲラと笑う。
彼がここに顔を出すのはいつもの事のようだ。タナールでは傭兵や一般兵士と同じ飯を食い、酒を飲む。
士気をあげる効果もあるし、オーギュストは戦場でフルコースを食べる趣味は無いのだ。

「……お前、名前は?」

ゼロ > 彼らは彼ら、自分は自分。
 若さとか、育ちとか、いろいろあるが。
 自分の場合は兵器として作られたというのもあるだろう、戦闘が一番最初に理由として浮かんでしまう。
 今でも、それは染み付いているのだから。

「?」

 彼の声音に不思議なものを感じても、それの理由がわからない。
 とりあえず、無理に酒を勧めるタイプではないのは安心できたとも言える。

「むしろ、お酒が出てくると思ってました。
 上等なワインとか。」

 それは少年の勝手なイメージではあるが、意外だったということを示すには十分だろう。
 『何だそんなことも知らないのかオメェ』とか、熟練の傭兵に言われてしまったりもする。
 彼はまだ、ここでは新人なのだった。

「ゼロといいます。将軍。」

 名前を尋ねられたので、答える。
 なんで急に名前を聞かれたのかはわからないが上位者に問われたので、反射神経で名前を答える。

オーギュスト > 「昔俺が高いやつをガブ飲みしてベロベロに酔いつぶれて以来、将校用食堂からワインが無くなった」

再び傭兵たちが爆笑する。
まったく失礼な連中だ。あいつらだって同じ立場になったら飲みまくるに決まってる。

「新人か。お前、どっかの傭兵団に所属してるのか?」

なじみの傭兵連中の中では見た事がない。
ついでに今回の戦争での戦歴なども合わせて問いただしてみる。
食堂の傭兵連中は興味深々にこちらを眺めており。

ゼロ > 「ぶふ!?」

 何その面白行動、思わず笑いそうになったが我慢した。
 でも思わず吹き出してしまったし、バレたかもしれないというかバレてる。
 周りの傭兵たちは爆笑してるが、日常的なものなのかも知れない。
 親しみやすい上司というやつなのだろう。

「いいえ、傭兵団には所属してません、個人で動いています。」

 そもそも、こんな身元不明な仮面をかぶって全身鎧なやつを仲間にする傭兵団は少ない。
 仮面を外すならともかく、といったところだろうか。

「戦歴ですか、ハテグの主戦場で、2部隊潰したのと、此方では3回ほど、今回は3回目です。
 先程の爆撃の際にも吹き飛ばされましたが。
 術師は殺してきました。」

 戦歴といっても、半年ぐらい前から転々としていたので、それを伝えるしかない。
 ここでの戦歴は、記録は残ってるはずです、と伝える。

オーギュスト > 「――ほぉ」

思った通り、なかなかの戦歴だ。
フリーで部隊を潰すほどの成果を挙げる奴はなかなか居ない。
……中にはいるが。

「お前、このまま傭兵を続ける気か? 何か目的とかあるのか?」

周りの傭兵達の目が鋭くなる。
どうやら、たまにある「アレ」かと当たりをつけたようだ。

傍に居た情報将校が耳打ちする。
彼の親告した戦歴に間違いは無いとの事。

ゼロ > 「いいえ、目的という程の者はありません。
 ただ、生きてくための金を稼ぐ手段をこれ以外知らないだけです。」

 彼の質問には正確に答える。
 おそらく、根底に組み込まれたモノの仕業かもしれないが、それは本人にさえ、わからぬことだ。

 彼が、彼の付き人の情報官が魔法に明るいのならば、情報通であるのならその鎧が、別の国で作られた、唯一の鎧だと知れるだろう。

 生体兵器の崩壊を防ぐための治療の鎧だと。
 その国は、生体兵器を『遺失』したという事。

 周りの傭兵の視線に不穏なものを感じたのか、仮面の少年は傭兵立ちの方を見た。
 その立ち居住まいには、困惑の色が大きく浮かび上がっていた。

オーギュスト > 「――なるほどな」

実力、精神は折り紙つき。
そして、特に目的はなく、傭兵たちとも馴染めない。
うん、理想の人材と言えるだろう。

「お前、うちの師団に来る気は無いか?」

そう、オーギュストの悪癖。
良い傭兵を見ると、自分の師団に引き抜こうとするのだ。

彼の第七師団はかなりきつい職場だが、その分報酬は大きい。
さて、反応はどうだろうか。

ゼロ > 「ーーーへ?」

 素っ頓狂な声が溢れる。
 いきなり将軍閣下から士官のお誘いがあるとは誰も思うところではない。
 しかし考えてみよう。
 宮仕えはある意味どことではなくとてつもない大抜擢。
 アルバイトが社員になるようなものだ、係長クラスの。
 しかし、問題が色々とある。

「すごく光栄ですけども!
 はいと言いたいですけど。
 こんな得体の知れないのでいいんですか?」

 仮面をかぶってる人間。
 普通の人物なら、後暗いところを勘ぐったりするものである。
 命に関わる部分でもあるからかぶってるのですが。
 世間知らずの自分から見ても怪しさ大爆発。
 それで、いいのですかと情報官の方もおもわず見る少年。

 本音で言えば、一兵士でも召抱えてくれるなら充分嬉しい。

オーギュスト > 「あん、構わんぞ。
もっと怪しげな奴も多いからな」

第七師団は、貴族からはゴロつき師団とすら言われる所である。
対魔族を主とし、身分や出自に問わず、その道のエキスパートを集めた集団だ。
良い人材ならばミレーや、半魔族すら積極的に登用している。

「まずは下士官見習い、そのうち一部隊を任せてもいい。
あぁ、集団行動が苦手だったら単騎専門でもいいぞ」

少なくとも、このタナールで生き残り結果を出している。
ついでに師団の荒くれよりも精神も出来ているようだ。
見逃す手は無い。

情報官は特に反応もなく苦笑するだけ。
何時もの事だとでも言いたげに。

ゼロ > 「ぅわぁ……」

 もっと怪しいってどんなのだろう。
 想像ができません、だって脳筋だもの。
 静かに考えて、考えた結果殴るという結論にに行くタイプ。
 最低限の会話ができるぐらいのゴリラ系男子。

 これが怪しくないとか、正直ドン引きです

 でも。
    でも。

「わかりました、お願いいたします、将軍。」

 正規軍に入れるというのは、傭兵としては名誉でもある。
 それに、先程も言ったが。それ以外の行き方は知らない。
 彼がいいというのであれば、甘えさせてもらうべきであろう。

「集団行動は苦手ではありませんが、命令をする立場は苦手です。」

 そもそも、命令される側である。彼の目の前でスカーフを外せば。
 首をぐるりと回って書き込まれた首輪のような文様。
 支配の文様を見せよう。
 コマンドワードで彼の意志に関係なく命令を下せるというもの。
 すなわち、時限爆弾のようなものだ。
 コマンドワードを知る者が敵に入れば、敵になりかねない存在。

オーギュスト > 「あぁ、なるほどな。
うちの魔術師連中に解析させるさ。とりあえずは下士官からはじめろ、俺の直属部隊に配属する事も考慮しておく」

仮面はこの為かと頷き。
情報官が、彼の為にいろいろと情報を教え始める。
とりあえず、王都に戻って、師団駐屯所へ来る事。
そこで登録をした後、師団の兵士として採用する事。
王都では望むなら師団兵舎へ入る事も可能で、その場合衣食住を保障する事などだ。

「身の回りの事を済ませたら来い、歓迎するぞ」

傭兵たちも、手を叩き口々に彼の出世を喜ぶ。
なんだかんだ言いつつも、戦友が幸せになる事を喜ばないやつはいない。
第七師団に入る事が幸せとは限らないが。

ゼロ > 「……!?本当ですか!?」

 お金を求めていた理由の半分。
 この首の文様の解呪である、これで、自分は本当の意味での自由を手に入れられる。
 少年の声に希望が込められることになった。

「了解しました、今回の仕事が終わり次第、王都へ向かいます。
 後ほど。僕のスペックも正確に教えておきます。」

 流石に、ほかの傭兵のいるところでは言いづらくもある。
 あとで、書類を提出します、と。
 自分の研究レポートを。

「ありがとうございます。
 身の回りといっても、この砦の任期ぐらいです。

 お祝い替わりに、皆さんに僕からも一杯ずつ。」

 今まで貯めていたお金は、国が持ってくれる。
 それなら、出世を喜んでくれた仲間にお祝いに対する返戻として奢るのもいいだろう。

 戦しか知らない少年からすれば、戦場は討伐は。少なくとも不幸ではない。

オーギュスト > 「そういう面倒な呪いに関する研究は王都でもしてる。
 お前が功績を立てて、師団に必要な人材になりゃぁ、解呪の必要も大きくなるからな」

情報官は頷き、割り符を彼に渡す。
これがあれば、師団の受付で登録をしてくれる。
また、王都までの馬車も優先的に手配してくれるだろう。

傭兵たちはもう一杯奢りと聞いて沸き立つ。
彼の肩を抱き前途を祝そうというもの、将軍の太っ腹を褒め称える者、様々だ。
明日は戦場で息絶えるかもしれないからこその、戦士たちの絆だった。

ゼロ > 「ありがとうございます。
 将軍、これから、よろしくお願いいたします。」

 少年はまず、大きくお辞儀を行う。
 其のあとに、差し出された割符を情報官から受け取り、それを眺める。
 大事なものなので、懐にしまいこんで小さく息を吐きだそう。
 そして、ぐ、とガッツポーズ。

 彼らの手痛い祝福を受けながら少年は笑う。
 そんな戦場の砦での一幕。

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 後に、情報官から、将軍に渡された書類は彼の実験記録

 彼の鎧は過剰な肉体強化で崩壊する体を抑えるために永続効果の高位の治療魔法の組み込まれた鎧である。

 彼の肉体強化は魔法のものと薬物と両方有り、魔法の方は封印を解除する形で発揮させるタイプ。

 彼の封印を全解くと鎧があっても10分で死に至る程の速度の崩壊。
 その代わり、魔王と殴り会えるだけの力を解放できる。
 彼個人の魔力は、封印と強化魔法に使われて一切の魔術講師は不可能。

 大雑把に書いてそんな感じであった。

オーギュスト > 後に記録を見たオーギュストは、彼が訓練課程を終えて適正があった場合、師団直衛隊への入隊を薦めるよう指示する。
同時に、何があっても封印を解く事を禁じるだろう。

オーギュストが買ったのは、彼自身の実力と、その精神である。
鉄砲玉を買ったのではない。
それだけは、彼に固く言いつけるのであった。

ご案内:「タナール砦」からオーギュストさんが去りました。
ゼロ > ゼロ自身に、適性があるかどうかはわからない。
 ただ、今は今の任務を終えて王都へ行く。

 希望はあるのだ。
 生きるために、少年は一層の戦いに身を投じよう。

 彼の封印指定には素直にうなづく。
 生きたいからあの国から逃げた、この国ならば逃げなくても良さそうだ。

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にメアリさんが現れました。
メアリ > (砦の中にある食堂――そこではまるで街中の酒場のようなガヤガヤと賑やかな喧騒が響いていた。とある机に座る兵士はもっと酒を!食事を!と、食堂で働くウェイターに声をかけ、とある机を囲む傭兵たちは机の上に酒と一緒にチップとカードを並べ、賭け事に興じる。そして、また別の机を囲む顔を紅くした酔っぱらい達は給仕服に身を包んだ女性に声をかけ、少々過激なボディタッチを敢行し、その可愛らしい給仕の女の子に逃げられたりして・・・そんなとても最前線とは思えない賑やかな喧騒を砦の中で見せていた。
そんな有様であるが、別に兵士たちがやってられない、と堕落した訳ではない。つい先程まで魔族との戦いがあり、見事それを追い返したのである。諸々の後始末もとりあえず片がつき・・・そして勝利の祝杯を砦内であげているところである。戦士たちにも休息は必要・・・それが、この宴会が繰り広げられている理由である。
そんな中にゆらゆらと魔女帽を揺らす混血のダンピールも混じっていた。兵士や傭兵としてこの砦に詰めている訳ではなく、ただ別の用事で砦に来ていたのだが・・・運悪く魔族の襲撃に居合わせ魔女としてこの防衛戦に参加することになってしまった。そして、その防衛戦でそれなりの活躍をして、共に戦っていた傭兵にこの宴会に連れ込まれ・・・現在に至る。肩を組まれ、席につかされ、あれよあれよと言う間にかんぱーい!と、彼らと共にグラスをかち鳴らしている始末である。)

・・・まぁ、いっか。

(少々釈然としない気持ちもあるものの、祝い酒であり、楽しい場であるのは事実だ。ほとんどお金もかからないのもあるし、ひとまず楽しむとしよう・・・。)

ご案内:「タナール砦」にグスタフさんが現れました。
グスタフ > お疲れ。活躍だったようだな。

(男はふらりと姿を現して、にやりといつものように笑った。今回は偶然というよりは彼の領分に相手がやってきた形だろう。お仕事としての魔族との小競り合いに、一応現場指揮官級の狩りだされ方で身を投じていたため、彼女の噂は男の耳にも入っていた。彼女を取り囲んでいた一団に向けて手を鳴らす。)

よし、お前ら! ここは俺のおごりだ。じゃんじゃんやれ!

(男の声に歓声が上がった、そこらここらで騒ぎが始まる中、彼女を連れ出し輪から離れて。一息。酒場を眺める。それから改めて、という感じでお互いの飲む分のグラスを手に取らせて小さく乾杯を。)

乾杯……おっと、そんな警戒するなよ。感謝はしてるんだ。
いいやつらだろう? 無駄に死なせるには惜しいさ。
ありがとうな。

メアリ > (そして、注がれた酒を喉へ流していけば空いた腹へ、乾いた喉へ、使い切った魔力炉へ潤いが巡っていく。普段、酒で一気に酔うことはあまりないが・・・今回のように魔力を使い切った際は話は別である。少々度数が高めの酒を注がれたのもあり、ほんのりと顔に朱が指したのがわかる程度には瞬く間にアルコールが回っていくだろう。
そんなアルコールがまわってきた頃、聞き覚えのある声が少女の耳に届く。その声を聞くと、大概ロクなことにならない為あまり良い思い出のある声ではないのだが・・・。ちらり、と振り向くように赤い顔をそちらに向けて。

そして、輪の中心に放り込まれていた少女を彼が連れ出したのなら傭兵達から 抜け駆けかー? と、ヒューヒュー、とからかうような口笛が飛んでくるだろう。突然連れ出されたもので、魔女は少々躓きながらも彼の後をついていき・・・彼の求めに応じ、かちん、とグラスを打ち鳴らすだろう。)

いえ。自分の身を守った結果、ですから。 ・・・確かに気の良い人達ですよね。私も嫌いじゃないです。それに・・・とてもおいs・・・ん、んんっ!とても、素敵な方達だと思います。

(いかんせん、空腹なもので思わず欲望が表に出てきてしまったが咳払いして取り繕おうとするか。・・・取り繕えてない気しかしないが。
彼らは傭兵・・・鍛え上げた肉体と経験を武器と、商品とする人種である。そういう人種が吐き出す血や精気というものはとにかく味が濃くて美味である。肩まで組んでくるものだから湧き上がる衝動を抑えるのに苦労した。)

――珍しい、気がしますね。貴方から素直に礼を言われるのは。