2016/10/02 のログ
ロザリア > 「逃がすな、喰い殺せ」

黒い毛並みの狼が放たれ、逃げ出した兵達をも襲う

……この砦にまた現れると踏んでいた
いつぞやの部隊、屈辱を払拭するだけでは生ぬるい

口元が笑みに歪む

スケルトンが更に数を増してゆく
主戦場たる砦、いくつもの屍が築かれる地はこの手の術法に打ってつけである

オーギュスト > 「閣下、獣達の数が増しています!
キリがありません!」
「わぁってる!」

スケルトンはともかく、獣はまずい。
兵士達は戦争用の重装備。獣のような身軽な相手には相性最悪である。
さらにまずい事に、スケルトンの数にはキリがない。こちらは一戦終わった後。体力の限界は早いだろう。

「――しゃぁねぇ、突破するぞ、陣形を整えろ!」

強行突破し撤退するしかない。
幸い、相手に指揮官らしい者がいる動きはない。
比較的薄い部分を突破し、撤退するぐらいはなんとかなりそうに思えた。

オーギュストは大剣を構え、再び先頭に立つ。

ロザリア > 「───退くか」

勢いによる制圧、一方で砦をあっさりと明け渡す冷静な判断
率いているのは、豪胆かつ狡猾な指揮官だろう

あの男か

ふ、と口元が笑みに歪む

「では…尻を捲るがいい。
 騎士なれば、背から射られるほど不名誉なこともなかろうな」

すっと細指が踊る

それまで乱雑に攻めていた獣やスケルトン達が動きを変える
まるで突破地点を誘導するように───

そして、砦の上にはその人間側の出口を見降ろすように、弓を持った骨兵達が並び弓を構えていた

オーギュスト > 「――ん?」

スケルトンたちの動きが変わった。
どういうわけか、相手の動きが『読めなくなった』。

戦場では、軍隊の動きは生き物のようなものになる。
指揮官が無能だと分かりやすく動く。
指揮官が不在だと野生の獣のように動く。
そして……

今まで獣のようにこちらに襲いかかってきたスケルトンたち。
だが、その動きが『分からなくなった』。

動きが分からない、すなわち――有能な指揮官に率いられた証拠。

「しまっ――!?」

気付くのが遅かった。
背後からの弓兵の一斉掃射。こんな古典的な作戦に引っかかるとは。
不死者と侮った!

「――クソがぁ! 全軍反転、応戦するぞ!!」

こんな作戦を取ってくるという事は、相手には不死者を召喚している誰かがいる。
そいつを倒さないと、撤退もままならない。

ロザリア > 「歴戦の勇士も勝ち戦の後は驕り油断するものだな」

ふわりと砦の上に降り立つ黒赤のドレスを纏った少女
月明かりに照らされ見えるその姿は恐らく指揮官である男にも見覚えがあるものであり

「背中から射掛けてやろうと思ったが、
 まるで野生動物のようであるな…余程鼻が効くらしい。
 …まぁ、構わぬか。射掛けよ、全て血祭りにあげてしまえ」

自らの足場よりも下に居並んだ骨弓兵達は一斉に弓を引き、眼下の軍勢に向けて矢を放つ
同時に砦の中から追撃の獣達が姿を現した───

オーギュスト > だが、オーギュストとともに反転できたのは一部だけ。
それ以外はまともに背中から矢をくらった。

そして、上を見上げてみれば――なるほど。

(最悪だな……)

いつぞやの吸血姫。まったく、こんな所まで追いかけてくるとは。
いや、仕打ちを考えれば当然か。

「よぉ、奴隷666号。随分と元気そうじゃねぇか」

ふんっと鼻息とともに鎧に刺さった矢を抜き、砦の上の少女に声をかける。
精々煽ってやらねば気が済まない。

ロザリア > 「ふふ、まぁこの状況では貴様といえど口しか出るまい」

侮蔑の言葉をするりと流し、その冷たい視線を向ける

「あの時は随分な仕打ちを受けた…。
 ……その罪を満身に受けて煉獄へ堕ちよ」

城塞に腰掛け、まるで見物でもするようにして、戦場を見降ろす

スケルトンの射掛けた矢が飛び交い、
黒い獣が疾走し、人狼達がその爪と牙を振るう

「最後には何を聞かせてくれるのだろうな。
 怨嗟か、悲鳴か、それとも最後まで減らず口なのか」

オーギュスト > 「わりぃな、俺は天国へ行くって決めてるんだ」

地獄の特等席を予約中のような男が嘯く。
まったく状況は最悪だ。
スケルトンどもは味方に当てるのを躊躇しないし、こちらは負傷兵だらけ。
それでもまだ戦線がかろうじて持っているのは、第七師団の意地だろう。

(……だが、夜明けまではもたんな)

冷静に分析し、一番手っ取り早い方法は。

「……ち。やっぱこうなるのかよ!」

ロザリアを何とか負傷にでも追い込み、撤退させるしかない。
が、ここから城壁を駆け上っては、弓兵どもの的だ。
となれば……

「――あれか」

オーギュストは兵を率いて、陣地のあった場所の一角へと向かう。
時間はあまりない。

ロザリア > 「追い詰めよ、絶望させ、そして殺せ」

残忍な笑み
細指で指示を飛ばせば、黒い獣達がオーギュスト達の後を追う

「ふむ。…下がれ」

こちらに向かってくるかとも思ったが
足元の弓兵達を下がらせ、そこへ降り立つ

「この期に及んで何か策でもあるのか、それとも悪足掻きか」

オーギュスト > ある種賭けだったが……あった。
攻城用の大砲。スケルトンや獣たちが破壊しているような事はないようだ。

「――いいか。俺が走りだしたら、遠慮なくぶっ放せ」

仲間の砲弾に当たって死ぬようなら、仕方がない。
どの道、この状況の生還率は限りなく低いのだ。
やってみるしかないだろう。

「――おら、いくぞぉ!」

ヘイストを発動させ、ロザリアの元へと駆け出すオーギュスト。
その背後から、轟音が響き。
砦を、そしてスケルトンや獣たちをなぎ払うべく、砲弾の雨が降る。

ロザリア > 「──!」

轟音と、着弾の爆煙
見る見る間に獣達が、骨兵達が蹴散らされてゆく

……自軍もそこに留まっているままだというのに、危険極まりない作戦である

「自滅覚悟か、潔い…と言ってやるべきであろうな」

こちらに向かってくるオーギュストを迎え撃つようにしてその手を翳す
背後に控えた骨弓兵達が一斉弓を絞り、そして矢継ぎ早に放ってゆく

オーギュスト > 「――ふん」

爆音と煙で、こちらの姿は見えていない。
あてずっぽうで撃った弓ならば、避けようはあるというもの。

砲弾の直撃で、負傷兵達が死んでいく。
中には死ねないで苦痛に呻いているものもいた。
だが、オーギュストは振り返らない。

「――ふんっ!」

ヘイストの効果で、砲撃によりでこぼこになった城壁を駆け上る。
もっとも鎧には矢が刺さり、手傷も何箇所かある満身創痍だが。

ロザリア > 骨達はただただ命令を繰り返すように矢をつがい、放ってゆく

「自軍もろともとは、起死回生とも呼べぬ采配であるな」

轟々と轟く残響
戦場が土煙と爆煙に覆われる

それが城壁の上にまで立ち込め、その口元をドレスの袖で覆う

オーギュスト > 「こうでもしなきゃ、俺とは踊ってくれねぇだろ?」

城壁の上に立つオーギュスト。
全く、ここまでくるのにどれほどの同胞が死んでいったか。

だが、オーギュストは振り返らない。
死ねばただの肉塊。それだけだ。
生きてなにを為すかのみを追い求めるこの男は、死人を振り返らない。
だからこそ。

「なぁ、奴隷666号よぉ」

だからこそ、吸血姫などとは呼んでやらない。
死者の居場所は墓の中にしかない。
だから、目の前のこいつは、断じてただの奴隷だ。

ロザリア > オーギュストに向けて射掛けようとする骨弓兵達を手で制する

「その名で吾を呼ぶのは二度と許さぬ。
 …して、何のために貴様はここまで駆け昇ってきた?
 まさか舞踊の相手などという酔狂な言葉をそのまま受け取れとは言わぬであろう」

冷たい瞳はその余裕を崩さない

月の夜
闇の眷属は存分に力を発揮できる
そして何より、この場所には旧神の加護が存在しない

「無様に命を乞うもまた良し、野晒しに果てるも良し。
 応えよ、人間」

オーギュスト > 「んなの決まってるだろ。勝つためだよ」

少しでも多くの人間が撤退する為。
この闇の中、散り散りになって逃げれば、獣達の餌になるだけだ。

「命乞いねぇ。死んだ人間に乞うなんて、本末転倒だろうよ。
死者ってのは、大人しく墓の下で寝てるもんだ。
なぁ、666号?」

片手で大剣を担ぎながらふてぶてしく言い放つ

ロザリア > 「死を超越した…と言って欲しいものだな。
 が、まぁ良い……二度と口にするなと言った筈。
 楽には殺さぬつもりだったが、この場で死ね」

目を細め、指を躍らせるように翳す

金色の魔法陣から次々に白金の燭台が飛び出し、その鋭い切っ先を向け放たれた

オーギュスト > 「豪勢な魔法だなぁ、おい!」

あんな高そうな燭台を飛ばしてくるなんて、贅沢の極みだ。
まったく、予算不足の師団の為に持ってかえりたいくらいだ。

大剣で燭台を叩き落しながら考える。
次の一手が無い。なんとかあの吸血姫を攻略しなくてはいけないのだが。

(夜にタナールで不死者相手とか、勘弁してほしいぜ)

悪条件が揃いすぎている。
何か好機を探らなくては。

ロザリア > 「優雅、と評するがよい」

まるで攻めの手を緩めない、その魔王すら飲み込む無尽蔵の魔力のままに
燭台に続き、金のナイフや短剣といった武器までも出現し、降り掛かってゆく

「どうした、防戦一方であるな。
 それで勝てるつもりでいるとは笑止。
 大人しくその矮小なる命を請うてはどうだ?
 吾もキルフリートのアンデッドを統べる城主、気が変わるかもしれぬぞ?」

オーギュスト > 相手の魔力も弾も底無し。
こちらは近接戦闘要員が一人だけ。
まったく、お話にもならない。

「はん、こちとら面子が命の商売でな。
奴隷に命乞いしたなんて知れ渡ったら、商売あがったりなんだよ、666号!」

防戦一方どころか押されている。
しかし金やら白金やら、やたら高価な金属ばかりだ。

(……なるほど)

そういえば、あの金属がない。
アンデッド故か、あれは受け付けないのかもしれない。

(だがなぁ、そう都合よく……)

ロザリア > 「もう黙らせるとするか」

冷たく言い放つ

オーギュストを取り囲むようにいくつもの魔法陣が展開され、剣の切っ先がそこから覗く

「去らば。
 貴様も所詮は醜悪な人間の一人でしかなかったな」

ぱちん

背を向け、小さく指を鳴らす

魔法陣から出現した槍が、その身体を串刺しにしようと四方から迫った

オーギュスト > 「やべっ……!」

慌てて転がるようにして避けるが避けきれず、幾本もの槍がオーギュストの体へと刺さる。

「がはっ――!?」

血を吐きながらロザリアを見据える。
終わり? この俺が、こんな所で?

「――否ぁ!!」

咆哮するように絶叫しながら、立ち上がる。
まだだ、終わりではない。

「まだ、終わっちゃいねぇぞ――」

が、ふらりとオーギュストは倒れこむ。
そして砲撃で空いた穴から砦の中へと落ちた。

ロザリア > 「………」

最後の言葉を残して落ちてゆくオーギュストを振り返り、冷たくその穴を見降ろす
あの深手ではまず助かるまい

連れてきた兵も壊滅状態

「…さんざ切り倒してきた、魔物の餌にでもなるがよいわ」

ばさりとその全身を無数の金色の蝙蝠へと変えて、
月の光る夜空へと羽ばたき、吸血姫は消えていった───

ご案内:「タナール砦」からロザリアさんが去りました。
オーギュスト > 暫くして、王都に早馬が届く。


オーギュスト・ゴダン第七師団長、タナール砦での戦闘により行方不明。生存は絶望的。
師団主力は壊滅する。


その報は驚愕をもって王都を駆け巡った

ご案内:「タナール砦」からオーギュストさんが去りました。