2015/10/08 のログ
ご案内:「タナール砦」にベルフェリアさんが現れました。
■ベルフェリア > ――高台。人々が松明を片手に巡回しているのが見える。
見張り台の天上に座り込んだ緑色の影は、眠たそうに黄金の瞳を揺らがせ、さして興味もなさそうに歩く人間を見た。
「……人間も頑張るよねぇ。」
関心したというよりは呆れ果てたに近い、そして確実に興味もなさそうに呟く。
本日は風が強く、強風の音でそんな小さな声はあっさりと掻き消されてしまっていた。
空も暗く、松明が照らす範囲までした視界が確保できていないのだろう、地上を巡回する人々は己の姿に気付く様子もない。
「そんな無防備だから魔族に何回も砦を奪われるんだよ。……僕達からしたら餌も確保できるし困りはしないんだけど。」
魔族が人間に負けて捕えられるという事もあるらしい。
地下では尋問や拷問が行われているだとか、女性の魔族は慰み者にされているとか、そんな話も耳にした。
それでもやはり、この悪魔からすれば大した話でもないと感じている。
――弱かったから捕まった。弱い魔族に権利などない。
これが魔族の掟。助けなど、余程の事が無ければ現れはしないが、砦を奪還すれば運が良ければ救われるだろうか。
しかし戦いに巻き込まれて死ぬ者も多い事から、結局は脱出できない弱い魔族が弱いのだ。
■ベルフェリア > 「……今宵はひ弱そうな人間ばかりだ。」
己は怠惰の悪魔である。故にやる気などないのだが、人間界に足を踏み入れようとするとどうしてもこの場所を通らなければならない。
仕事などしたくはないが、通る為となると目撃者が残っていると困る。つまり戦闘になるのだ。
しかし、怠け者の魔族は強い人間が相手でなければ本気で戦おうなどと考える事も出来ない。面倒だからだ。
相手が強い存在であれば或いは、そう考えもしたのだが、今宵は外れなのだと察した。
「まぁ、勝手にやっている身で文句を言うのもねぇ~。」
好き勝手やらせてもらっているのだから、この際贅沢は言わないでおこう。
――どちらにせよ、人間達の集まる街へと辿り着けば色々好き勝手出来るのだから、我儘を言っても仕方がない。
そんな考えを浮かべると、ゆらりと面倒臭そうに立ち上がる。屋根の上を。
するとその動きを察したのか、松明の照明が一斉に止まり、此方へと向けられているのが分かる。
屋根の影から脱したのだ、当然緑色の髪はよく目立つ、という事だろう。
人々が見張り台の下に集まってくる。自らは今、角も尻尾も出していないから、彼らには魔族、とはっきり見る事は出来ないのだろう。
だから、それを示す為に屋根を蹴ると、大きく宙を舞った。同時に下の方から悲鳴のような声が聞こえる。
「――人が飛び降りた、だって?」
■ベルフェリア > 人々の真ん中に。緩やかに着地する緑髪の少女。色白の肌が松明に照らされ、その黄金の瞳もまた妖しく輝いて彼らには見えていただろう。
高度のある見張り台の屋根から鮮やかに着地した少女を見据える人々は混乱した様子でただ、彼女に見惚れていた。
そしてそれこそが彼らの命取りになる。
「どォも~、みなさん。」
両腕を広げ、眠たげな表情をそのままに、口を大きく開きながら声を発する。
宣戦布告でもするかのように。
そして名乗る。
「ベルフェリア・ゴール、魔族です。」
人々が表情を一気に青褪めさせるのを見て。
ゆっくりと動き出して、正面の男性に正拳を放った。
男性の腹部が大きく抉れ、血を吐き出す様子が見えたが、そのまま後方へ吹き飛び、後ろに立っていた筈の男達も、鎧を纏った者も。
正拳を受けた男とその後方に居た者全てが弾き飛ばされるように吹き飛んだ。
我に返った人々が慌てて武器を構えようとするが、それでは己の動きには間に合わない。
■ベルフェリア > 正拳を引き戻し、回し蹴りを周囲目掛けて放つ。衝撃波のように風が吹き荒れ、人々が一斉にバランスを崩し、或いは武器や松明を落とした。
化物、と叫ぶ声が聞こえるが何を今更とも思ってその男に飛び掛かり、顔面に横殴りの拳を叩き付け、首が大きく曲がって泡を吹いた。
武器を拾って後方から斬りかかろうとした者へは勢いさえつけない、倒した男に圧し掛かったまま放った後ろ蹴りで腹部を打ち付け、後方へと下がらせた。
立ち上がった時には数名の男達が一斉に武器を構えて襲い掛かってきていたが、その剣が届く前に両腕を後方へ引いて正面へと突出し、その衝撃波で吹き飛ばす。
恐れ慄いた者達は戦う者を見捨てて我先に砦の奥へと逃げ去ってゆくのが見える。
元々期待などしていなかったが、
「……飽きた。」
まだ立ち向かおうとする者は居るが、その手は震えている。
しかしもう相手にならないとわかってしまうと、これ以上無駄な体力を使うのも馬鹿らしいと思ってしまう。
だから飽きたを告げた。それに、もうすぐ勝負は着くからだ。
先に逃げた者達が緊急を知らせる為に皆を起こしている声や、鐘の音が聞こえる。
しかしそれは逆効果だと彼らは知らないのだろう。そんな事をすれば。
――表にいる魔族が黙っている筈がない。
■ベルフェリア > 頭上。何体かの飛翔系魔族が飛び去って行くのが見えた。その影は地上へと降りて行き、問答無用で砦内への攻撃を始めている。
彼らは魔族の誰かが砦を襲撃するのを待っていたのだ、勿論全力で攻め込めば容易くこの程度の人間達は殲滅できただろう。
魔族は楽しんでいるのだ、戦いという名の虐殺を。強者が居ないのなら弱者を甚振るという娯楽を。
自分とて同じ魔族なのだから、その考えはわかるし、その手助けになる事をわかっていて攻め込んだのだから何の問題もない。
「けど……僕が欲しいのは男性じゃないんだよねぇ。」
倒れた男、唖然と空を見上げる男。男ばかりだった。
奥を探せば見つかるかもしれないが、乱戦となった砦でいちいち拾ってくるのも面倒だと思い、ベルフェリアは欠伸を零した。
もうこの場所はカタが着くだろうから、街の方へ行ってしまおう。欠伸の中にそんな考えを持っていて。
やがて悲鳴や叫び声が木魂する砦を歩き、人知れずにその場から姿を消した。
ご案内:「タナール砦」からベルフェリアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にソードさんが現れました。
■ソード > (タナール砦に程近い村で、砦が陥落したという話を耳にしたのは夕刻の事。そのまま、行商人の護衛の依頼を切り上げて砦へと向かうまでに何分もの時間はかからなかった。陥落とし陥落とされを繰り返している砦だ。もはや、死守して兵力を徒に失うよりもそこそこの損害が出れば潔く明け渡して、敵が砦に落ち着くよりも先に即座に奪還作戦を開始する方がむしろ効率が良いという事なのだろう。陥落して間もないというのに、砦では既に結構な兵力が砦奪還の為の戦いを始めていた。)―――んん。急いで来たつもりだったけどな。ちと出遅れたか。(嘯く。砦へと到着したのは今しがた。正確には、まだ砦そのものの敷地内には到達していないが、もう目と鼻の先である。騎乗するでもなく、傍らに騎獣の姿もない。どうやらここまで走って来たようであった。来るまでの間に適当に叩っ斬った魔物の返り血に穢れる鉄剣を無造作に肩に担ぎながら、男は一度足を止めて戦場となる砦を見つめた。さて、まだ面白そうなイベントは残っているだろうか。こうして見る分には、人間側の方が優勢そうであるが。)
■ソード > (しばらくそうして、砦の方を眺めていたものの、やがて微妙そうな顔をして歩き出す。)何でぃ。特に何もなさそうじゃあねぇか。(無造作に歩を進めながら嘯く。こうして遠目に見る分には、何やら楽しそうな事は起こらなさそうな様子だ。単純に見たまま、人間側の優勢な攻城戦である。すでに砦の内部へと攻め込んでの乱戦になっている様子からして、その勢いの差は明らかだ。まぁ、それでも魔族というものには圧倒的な個の力を保有するような個体も存在する故、形成逆転がないとは決して言いきれないのだが。一度は引き受けた依頼であるし、こうして足を運んでおいてとって返すのも阿呆くさい。漏れてきた小鬼型の魔物を無造作に斬り伏せ、男はそのまま気怠そうに戦場へと脚を踏み入れる。敵味方入り乱れての大乱戦。そんな中を、退屈そうに剣を振り回しながら、のんびりと進んでゆく。目指すはひとまず、砦の内部。)
■ソード > (男が砦の内部へと脚を踏み入れる頃には、寄ってくる魔物は殆どいなくなっていた。立ち塞がっては無造作に斬り棄てられ、進行上にいれば無感動に叩っ斬られる同胞達をいくらも見ていれば、それも当たり前であろう。別段、男の方から突っ込んで来て斬りかかって来るでもなし。無視しておけ、という事で。こうして男は、悠々と砦内部へと踏み入る。無論そこでも、激しい乱戦が繰り広げられている訳であるが。)―――さぁて、外から直接見えなかったのは中だけだからなァ。……何ぞ面白い事がありゃあいいんだが。(早速襲い掛かって来た白骨の魔物の頭部を裏拳で粉砕しながら、男は嘯き。やはり変わらぬ調子で歩き出す。そして、まるで砦内を見学でもしているかのように、のったのったと内部を練り歩き始めて。)