2023/04/18 のログ
イーゴリ > 「なるほど。 そこも突き詰めれば、医療には違いないか。」

説明を聞けば得心を得たとばかりに頷く頭。
生命の営みを、新たな命の誕生を”援ける”と言う意味では、医療用ではあるのだろう。
そこに、所謂人道的な観念が含まれるかは別として―――そもそも、この世の命は軽い。

その間も体積を増す物体に、軽く爪先を持ち上げ質の確認。
液体よりも固形に近いそれに、弓よりもナイフの方が通りやすいか、などと思考を巡らせつ、

「――――マスターだ。」

返した答えは、嘘八百のマスター宣言。
目の前のスライムが如何言ったものか、は知っていても、取り扱いについての詳細は知らぬ。
一番主導権の握りやすそうな存在、と言うので宣ってはみたが――今や足首を覆わんとするそれから、一旦逃れるべく片脚を引き上げ。

キュアポット > 創造主の意図は善で、医療を受けられぬ者にも医療をと考えたのだろう、子を宿し難い者に祝福をと考えたのだろう、でも人間は善だけではない、こうして歪んだ使い方を考える悪も当然居る――そこに人工的に創造された生物の思考が混ざる余地はないのだ。


「ま、ままま、マスター…?おはようございます。医療用魔導生命体キュアポットです。まずはいつもの朝のマッサージを行いますので、服を全て脱いでベッドに横たわってください。」

キュアポットは目の前の存在がマスターだと名乗るなら、キュアポットの存在意義はマスターの健康と生命の継続が最重要となる。

あと日々のストレスの発散やメンタルのケアも当然。
特にこの個体に登録されたマスターはその辺りを重要視し、朝目覚めるとまずはマッサージを行い目覚めを促すと同時に、溜まっているものを吐き出すのを好んでいた、のを記憶から理解する。

くにゃん、と柔らかい弾力をマスターの足に返しながらマスターが足を引き上げるのを止めずに、キュアポットは独自に毎朝のルーティンを勝手に始める。

本来なら言葉通りマスターと名乗る人物が全裸になってから始める行動なのだが、まだ錯乱状態が続いているのか、それを待たずにマスターと名乗る目の前の人物の背後にぐにゅんっと妙な音をたてて集まり盛り上がると、どよんっと柔らかい弾力のある体でマスターの背に軽く圧し掛かり、その背中に腰にお尻の曲線にヒタリと密着し、ひんやりした身体を押し付けるのだった。

「おはようございます。キュアポットです。まずは目標であるサイズに近づくように胸部をマッサージしていきましょう。」

と、またしても抑揚の無い声で返答も行動も待ちもせず、これから行う行為に関して勝手に説明を始めるのだった。

イーゴリ > 思わず、耳を疑う。
朝の挨拶もマッサージも、まだおかしな話ではない。
然し、続けられた指示には思わず、短い眉が片側だけ跳ね上がって不可思議な物を見る目で見てしまう。
スライムに、己の表情の機微を読み取る力があれば、何を言っているんだ、とでも言わんばかりの表情。

「――――マッサージは要らんよ。」

目の前の物体に視覚となる場所があるのか、も分からなければ、足許に向けて呆れた声音で告げる他ない。
然し、異音を立てて背後で形を作る物体に伸し掛かられれば、引き上げた足が再び地面へと戻る。
布越しに伝わる低い温度の持ち主が、更にと言葉を続けるのに今度は表情ごと、完全な呆れ顔へ。

「いや、だからなア……。」

そもそも、この体躯を如何こうしたとて、本来の体に影響などない。
なんて事は、スライムには関係ない事は分かり切っている。
対話なりも現状は難しいのだろう事も、察することが出来る。

ともすれば、武力行使しか無いのだろう。
弓をその場へ放れば、腰裏に提げたダガーを引き抜くべく、背へと伸し掛かるスライムと己の体の隙間へ右手を差し込まんと試み。

キュアポット > マスターの言葉と命令を何よりも最優先するキュアポットだが、それ以上に最優先されるのはマスターの健康の維持と生命の継続であり、時にマスターがそれを拒絶しても健康管理を行うキュアポットが言葉に反しての行動を取る事だろう。

それがたとえマスターと言う存在が鋭い刃を持って拒絶するとしても、絶対に主人に傷を負わせる事無くキュアポットは対処しようとする。

そのために造られ、そのために生まれ、そのために存在しているのだから。

――…このキュアポットの個体に不具合が生じていなければ、である。

遺跡の中、発動した罠が作り出した竪穴の中で一人と一匹の対話は続く、その結果どうなったのかはキュアポットのマスターとなった者にしかわからないが、少なくとも無事に穴を脱する事は出来る筈だ。

キュアポットはマスターの健康の維持と生命の継続の為に存在しているのだから。

ご案内:「無名遺跡」からイーゴリさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からキュアポットさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 昼夜の関係も無い、閉ざされた無名遺跡の底にてそれは潜んでいる。朗々と照らし付けて来るのは何者かが敷設した魔力照明の灯火だ。延々とひた続く回廊の彼処において悍ましい怪物達が跋扈しているのをその気配から感じとる事が出来るだろう。焼き締めた魔法煉瓦が壁や床、それに天井までをも埋め尽くし、そこに補強として建てられた梁には入り込んだ蜘蛛のかけた白い巣がカーテンのように下がっている。
その廊下に面した一室の中にそれは潜んでいた。何の変哲もないベッドが幾つかに食料や水の入った棚。椅子やテーブルが設けられ、良くみれば竈らしきものまで備わっている小部屋だ。入口にたてられた木製の門戸に刻み付けられた魔法陣はまだ活性化しており、白々と放たれる発光は即ち邪な者達を寄せ付けない結界の一種だ。この遺跡に元々在ったものではなく、遺跡を攻略する冒険者が一時的なセーフルームを拵える為にかけた魔術の賜物となる。

「………」

今も入口周囲から壁や床にまでぎちぎちに走った魔法文字の放つ力によって、その御蔭で此処には怪物達も容易には立ち入れないという訳だ。しかしながらにおいて封鎖されているのは入口の門戸だけであって、それ以外の場所からならば容易に此処に忍び込む事も可能であった。
即ちにおいては敷き詰められた煉瓦のモルタルの欠けた僅かな隙間を経由してスライムのような不定形ならば此処に入り込める。
元々は竜の形を形成しているその怪物は今は黒いコールタールのような形状として、今は眠る者の居ないベッド下の物陰に平らに伏せるようにして潜伏している。
休眠状態ではないその証に、時折に頭部から伸びている触角が炯々と光を湛え、うねるようにして周囲の暗がりを照らし出す。

ご案内:「無名遺跡」にベルさんが現れました。
ベル > 副業の冒険者業に精を出していた狐の少女。ギルド経由で組んだ仲間たちをキャンプに残し、周囲の調査に歩き回っていた。
思ったよりモンスターの気配が多く、慎重に足音を消して下見を続けていると、

「…………ん?」

そこで発見したのは、魔力の灯明。少し思案し、その発生地点へと足を向ける。
一言でいうと、部屋。街では見飽きるほどだが、ダンジョンにおいては珍しい。しかし、冒険者が一時避難所、九sくなどに用いるセーフルームという形で存在することも、稀にある。
殺風景な通路でキャンプを張るより、よほど休息効果がのぞめそうだ。となれば自分の役目は、ここが安全かどうか確かめるのが最優先にシフトする。
とりあえず、いたるところに見られる魔法文字が機能しているのは魔術に堪能でなくてもわかる。では、内部の諸々のほうは……
棚、椅子、テーブル、そしてベッド。とりあえず上に張っているものをテーブルの上に置き、しばらく様子をうかがう。何も起こらない。
ひとつ首肯してから、今度はベッドの上に仰向けに寝転がってみる。

ご案内:「無名遺跡」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からベルさんが去りました。