2023/04/17 のログ
ご案内:「無名遺跡」にイーゴリさんが現れました。
■イーゴリ > 住み着いた魔族によって日々魔改造の為される名も無い遺跡の浅部―――に潜っていた筈だった。
迷宮と化した遺跡の通路に仕掛けられた罠を解除し、一息吐いたのも束の間、
解除する事が次の罠が発動するトリガーだったらしい。
通路の一角丸ごと崩落してしまえば、掴まる場所も無く、その儘落下した。
「――――……随分と深い所まで落ちたな。」
落ちる合間に魔力を練り上げ、生み出した水をクッションにし、床に直撃は免れた。
が、見上げる天井、もとい、己が落ちた穴は大分遠い場所にある。
溜息を一つ逃がしては、薄暗い周囲を見渡し。
ご案内:「無名遺跡」にキュアポットさんが現れました。
■キュアポット > ――罠の発動。
通路の一角が崩落した。
床が崩れて落とし穴が大きな口をあけ、罠を発動させた者を飲み込んだ。
当然罠はその程度で終わるはずがない。
遺跡の浅部であっても遺跡に仕掛けられた罠は加減がない。
なんせ日々魔改造されていく遺跡の中で罠だって魔改造されていく、誰が何の目的でそうするかは諸説有るが。
罠を発動させてしまった者。
深い深い穴へ落ちた者へ、発動した罠の本命が蠢きだす。
薄暗い穴の中で壁と言う壁に出来た亀裂からコポコポと音を立て、その亀裂の中から半透明なゼリー状の物体がドロドロと這いずりだして、穴……落とし穴の床に広がっていく。
俗にいうスライムトラップである。
モノによっては万物を溶かす致死性のモノから、快楽の底へと落とすものまで様々であるが、今夜発動したスライムとラップは……比較的友好的であった。
「ナニカオコマリデスカ。キュアポットはアナタをタスケマス。」
抑揚は全くない、作られたような声。
その声は穴の四方から、或いは床から響くだろう。
■イーゴリ > 明かりの乏しい空間では、正確な広さは分からず、出来た亀裂の所為で空気の流れも曖昧。
一番分かりやすい脱出ルートは頭上ではあるが、些か難儀しそうなのは明白で。
不意、自身にとっては馴染みのある、気泡の様な音が耳に届く。
鋭い聴覚が拾うその音は、一方からではない、と言う事にも、無論気付く。
提げていた弓へと手を伸ばし、構えるや否や、僅かな明かりを受けて照る半液状の物体が視界へと入り込んだ。
次いで、耳に届いた抑揚のない無機質な声。
「キュアポット――――……ああ、」
名乗りを聞けば、己の持ちうる知識と照らし合わせて、納得したよな声も出る。
が、場所が場所なだけに、野良とも誰ぞの従僕とも分からぬ存在である事は変わらず、弓は番えた儘。
「助けてくれるのは有難いがねェ……お前さん、ここから抜ける最短ルート、は、流石に分からないだろう?」
■キュアポット > 相手が敵意を持っているか或いは友好的かはキュアポットには今のところ関係がなく、野良であり只今主人か若しくは被験者或いは実験体となる人間を求めている野良としては行き成り敵対する事はない――…それが例え相手が警戒を向けていてもだ。
「キュアポットにお任せクダサイ。キュアポットは患者様の安全と健康を第一に、ニニ…ニ……ニ、アナタハ、患者様デスか?マ、マスター?被験者の方デスカカカカ?」
早速不具合、ではなくて罠として設置されたキュアポットは現在相対している存在が己のカテゴリのどれにも当て嵌まらない状況下で軽い錯乱状態を起こしている。
医療用魔導生命体とカテゴライズされる生物であって、トラップとして使われるというのはまるっきり想定外である。
トラップに利用した者の思惑と創造主の思惑は別であるが故に現在の想定外の状況に錯乱し、相手に対して自分の立ち位置がどれかを抑揚のない声で尋ねた。
当然のことながら尋ねている間も縦長の穴の四方八方の亀裂から次々に半透明なゼリー状のモノがゴポゴポゴポゴポと気泡をわかせて爆ぜる音共に溢れ出す。
今はもう穴の床を数センチくらい埋めるほどに広がって、僅かな明かりで場に似つかわしくない程にきらりと煌いて見せるのだった。
■イーゴリ > 相手の答えに期待していた訳ではないが、矢張り最短ルートの道案内は任せられそうにない。
長い間傭兵稼業に身を費やしていたのだ、目の前の物体が名乗り通りの存在なのであれば、元より分かっていた事ではあるが。
再び溜息が零れ落ち―――僅かに擦った足が、仄かに滴る音を響かせ、動きを鈍らせたのに気付く。
視線を下げれば、亀裂から出て来ている最中だと思っていた物体が、存外嵩を増している。
「――――生き埋めにされかねんなア、……あ? 被験者?」
然程焦りの無い声音で嘯きつ、中途に耳が拾った単語を訝し気に紡いだ。
患者やマスターは分かるが、被験者とは。
■キュアポット > 医療用魔導生命体であるキュアポットは問いに答える。
抑揚のない声色は当然変わらずであるが、答えは聞く者に酷く残酷な返答となるが、その辺りを気遣うようには出来ていない。
「ヒ、ヒひ、ひ被験者とはキメラを創造する為に生命力に溢れた雌の事を指します。その母体の胎を使い、ゴブリン、オーク、人狼、ドラゴン、他、あらゆるモンスターの精子を被験者の子宮に着床させ、ア、ああ新たな生命を創造します。――アナタは被験者デスカ?」
キュアポットは再び抑揚のない作られた声で問う。
患者と答えれば対話を重ねながら安全の確保と健康診断を。
マスターと答えれば主である存在の健康と身体に変わりがないかのチェックを。
そして被験者もしくはどれにも適さない答えを返せば、被験者として目の前の存在を扱うだろう。
それだけの体積は壁からあふれさせしたくは出来ている。
体積を増して穴底に広がった柔らかさと弾力を兼ね備えた体をゆっくりと目の前の人物の足元に集わせていく。
どの答えにせよキュアポットは動き始め、適した行動を取るために集まり、今や目の前の何物かの足首を飲み込むほどにまで寄っている。