2023/03/05 のログ
ご案内:「無名遺跡」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 無名遺跡。昼夜を問わず、変わらずにほぼ一切の陽射しの差さない閉塞的な空間が維持されている。数多くの遺跡特有の怪物だけならず、生きたトラップ類が作動する事も在り、安全性だけを考えるならば活動に適している場所とは到底には言えない。
しかしながら、怪物の棲息数が多いということは、即ちにおいてはその遺伝子も多種多様に渡っているという事に他ならない。よって、その採取を目的として、此処に足を運んで来る者が居る事も在った。

「………」

薄暗く、照明は壁際に立て掛けられている松明の類だけ。周囲を焼き締めた煉瓦の壁で構築されている人工回廊内を徘徊する巨大な蜥蜴のような生き物が一体散見される。表皮粘膜の腹部に位置する場所が破れ、そこから黒々とした体粘液を垂れ流しにしながら。
街でぬくぬくとしている一般人や、油断した対象ならばまだしも。生存競争の著しい環境下での強敵を相手に遺伝子を採取する事はこういったリスクも在るという事だ。手痛い反撃を受けて命からがらに情けなくも逃げ出した怪物は、回廊内を廻っていた。

そのように今も肌に感じ続けている猛獣や、それに類する危険な生命体の気配から身を隠しつつ、辿り着いたのは回廊の端に設置されている宝箱となる。

ドラゴン・ジーン > ぬるん、と、間も無くしてそこに手足をかけてとりつき、閉じられている箱の中にへと入り込んだ。施錠をされており閉じた箱も鍵穴やその他僅かな隙間さえあれば侵入するのは非常に容易だ。本来は不定形である我が身を生かして一抱え以上もありそうな豪奢な装飾の施された宝箱の中にへと逃げこんでしまう。

あたかも、この手のダンジョンにはありがちなミミックのような有様だ。そのまま内包されている財宝類に紛れ込んでその底に身を隠し、周囲の危険をやり過ごす為の休眠に入り始める。
潜り込んだ粘液の分だけ嵩増しのされた箱の容量は満杯になり、見目においては内圧によってみちみちと箱を構成している木目の板や金属部品が窮屈気にしているようにも見えるかも知れない。だが、そのような些細な変化は周辺に居る怪物達も気にしないだろう。
遺跡内に座している財宝など、食えも飲めもしないのだから。

ご案内:「無名遺跡」にフェブラリアさんが現れました。
フェブラリア >  
竜令嬢がその遺跡へと足を運んだのは単純な理由であった。
古代の財宝や魔導機械で溢れるこの遺跡は、魔力を探求し、その魔力源の確保を目指している彼女にとって、是非とも調査せねばならぬ場所であったのだ。無論、遺跡内の危険性も彼女はよくよく理解をしていた。
しかしながら、彼女の中に巣くう好奇心の方が勝ったのである。

幸いにも単なる怪物や猛獣相手であれば叩きのめせる実力が、彼女には存在した。
その為、警戒はしながらも今日まで無事に積極的に遺跡の調査を行い続けた。

「おや…これは…?」

結果としてその日、フェブラリアが足を踏み入れたのが、その怪物が潜んだ宝箱がある回廊だったのだ。
箱の底に張り付くようにして、息を殺している怪物には気がついていない。
そして多少怪しくとも、財宝が入っているかもしれぬ箱を手に取らぬ程、彼女の好奇心は小さくはなかった。
何より、多少の罠であればどうにかできるという自負が、慢心があったのだから。

ドラゴン・ジーン > 潜伏している状態で認識したのは、迷宮内に立ち入って来るその気配となる。休眠状態から即座に蹴り付けられるように覚醒した。踏み鳴らす足音が近づいてくるまでに臨戦状態に移行するまでには然したる時間も掛からない、己の入り込んでいる箱に手を着けようとしたその頃合いを見計らうようにして。

「………!」

その視野の中に最初に飛び込んでくるのは、あたかもひとりでに開いたかのようにくつろぐ箱蓋の隙間より懇々と湧きたつかの如く溢れ出して来る大量の黒く混濁した粘液の氾濫となる。
その僅かな窮屈な出入口から、噴き出すといってもいい程の勢いで散開したそれらは網目状に互いを繋ぎ合わせながら拡がり。
それは蜘蛛の巣のような形をした一個のウェブネットと化して直ぐ側に居る相手の胴体、腰回り部分にへと吹きかかり、吸い付く粘着力はその下半身を捕らえてしまおうとするだろう!

フェブラリア >  
「なッ!?」

不意打ちとして襲いかかってくるであろう粘液の塊を咄嵯の判断で回避行動を取る事が出来たのは、彼女の培ってきた経験によるところが大きい。
だが、しかし、その判断が正しかったかどうかについては、フェブラリア自身も確信を持てなかった。
もしも彼女がもう少し冷静であり、事前に何らかの情報を得ていたならば、或いは回避するよりも先に防御魔法を展開するなりして身を守る手段を取っていた事だろう。

しかしながら、そういった備えをしていなければ、その対処は難しい。
多少の回避行動をとった程度では、粘液の氾濫を避けきることは叶わない。
結果、飛来する粘液の波をその身に受けてしまい、全身が粘性の高い黒い液体に包み込まれてしまう。

「な、なんですか、これっ!?」

その悲鳴じみた声音は、その状況に陥った者の多くが発するものに違いない。
下半身に絡みつくその粘り気の強い物体は、着用している衣服に染み込み始め、肌にへばり付いていく。
力づくで抜け出すことも或いは時間を掛ければ可能であったかもしれないが…

ドラゴン・ジーン > 「…!!!??」

吸着した瞬間、しかし相手と同様に激しい動揺の感情がその怪物の全身に走った。竜!!竜だ!!?接触するまでは気付かなかった相手の遺伝子の気配の認識に凍り付くほんの一瞬、しかし直後において激烈な昂りと喜びを物語るかのようにびかびかとその触角が輝き始める。
自分の至上目的である竜の遺伝子の察知と共に絡みつく無数の触腕によって織り成した巣がきは殊更に強くその濃度を高め。ぐるりと相手が身動きが出来ぬその間隙をついて、ぶしゅ、ぶしゅ、と、更に一手、二手と箱の隙間よりうちだされる粘液糸は上半身、その腕や足にまで絡み込まんとし、その総身を纏め込むようにして箱の中にへと引きずり込んで呑み込んでしまおうとするだろう。
周囲には現状においては気配は感じられないが、決して邪魔が入らないように、少しでも安全な場所でその遺伝子を取り込むが為に…。

ドラゴン・ジーン > 『移動致します』
ご案内:「無名遺跡」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
フェブラリア >  
「罠…!?ですが、この程度の粘液な――んぶぅう!!」

言葉の途中で口元に噴出された粘液によって塞がれてしまった。
下半身のみでなく上半身、特に顔面付近を覆い尽くすように粘液の津波に襲われて、その勢いのままに身体が沈んでいき、 そのままずるずると箱の中にへと引き摺られていく。
このままでは、箱の中にへと押し込められてしまう! そう感じた時、既に手遅れであった。
抵抗も虚しく、箱の中へと強引に押し込まれた彼女は、そのまま箱の蓋を閉じる事になってしまうのだった。

ご案内:「無名遺跡」からフェブラリアさんが去りました。