2022/10/28 のログ
ご案内:「無名遺跡」にE・T・D・Mさんが現れました。
E・T・D・M > 迷宮が在る
迷宮が居る

E・T・D・M > さてさて、皆様は思うだろう
数多の化け物、難解なリドル、そして命に迫るトラップの数々
伝聞の限りでも恐ろしいばかりであるが、しかし所詮は他人事
危険地域に足を踏み込みさえしなければ自分自身は大丈夫だ、と
しかしながら油断してはならない
平穏無事な生活圏においても、数々の落とし穴がそこかしこに潜んでいるのだから

御覧頂きたい、此処は無名遺跡の一角だ
石造りのブロックが敷石として敷き詰められ
周囲の壁には此処が文明地であった物語る名残の古代の文字列が犇めいている
何等かの儀式場であったのは確かな事、広間となっている領域
その四方八方には己の尾を噛む蛇を模した金色のフレームに囲まれた姿見が林立していた

E・T・D・M > 嵌め込まれたガラス板は多少経年劣化しているが
それでも十分に『何か』を映し出すには事足りる
では、その鏡面に映り込んでいるのはこの遺跡内の光景か?
と、問われるならばその回答は否となる
不可思議不思議!あらゆる鏡の中に在るのは
この遺跡周辺の様々な別の場所の景観だ
何の変哲もない森や湖、山岳回りである事もあれば
あるいは人里の何処かの家の中の光景を今も映し出している鏡も在る
バリエーションに富んでこそいるが、全ての場所の共通点もまた存在している
此処に設置されているような人工の『鏡』、あるいは水『鏡』、ぴかぴかに磨いて『鏡』面として意味を成す床面などなど
即ちは諸国周辺の『鏡』を経由して、そこに映り込んでいるものが此処には表れているのだ

E・T・D・M > 向こう側に人通りを見掛ける事すらも在る
ほら、今も何処かの大きな御屋敷の寝室に
清掃婦の姿が目の前を横切っていった
でも、こちらには一つも気付かない
あたかもマジックミラー、一方通行の盗撮のごとし

「………」

広間の中心に聳えるようにして、天井から幾重にも枝分かれしながら垂れ下がる肉の逆さ樹木がある
遺跡の一部と融合して擬態化したその怪物こそが、現在のこの儀式場の支配者だ
ぬるぬると揺らめく触手の末端に拵えた眼球をぱちぱち瞬かせつつ
周囲八方の鏡面に見える光景の一つ一つを忙しなく確認して回っている

E・T・D・M > 「………」

そこから不意にぬるりと触腕の一部が泳ぎ
こん こん こん
鏡の表面を、まるでドアをノックするかのように叩いた
するとどうだろう?先程通過していった清掃婦が戻って来て
こちら側を、つまりは寝室に設けられた鏡を覗き込んで小首を傾げている
向こう側からは干渉出来ないが、こちら側からは干渉出来るのだ
今、此処で触手を伸ばして鏡面の中に沈めてしまえば、向こうに居る誰かをこっちに引き込んでしまう事すらも容易い

「………」

だが、事は慎重に当たるべきだ
かくして周辺の転々と変化する世界の風景を眺めつつ
そこに行き交う『獲物』達を吟味している真っ最中なのであった

ご案内:「無名遺跡」からE・T・D・Mさんが去りました。