2022/09/05 のログ
ご案内:「無名遺跡」にミメシスさんが現れました。
ミメシス > ――無名遺跡、そこにある地下迷宮。
外の空気と違い適度な湿度とひんやりとした空気は迷宮に足を踏み入れた一攫千金を求める冒険者や何も知らず迷い込んだ者達に一時の涼を与える。

でもそれは魔物も同じである。
外の暑い空気と違って涼やかな空気と湿度は魔物達の行動を活性化させる、特に生物系の魔物はこの時期は獣型でもない限り地下迷宮に引き篭もるものが多いだろう。

そして当然此処で蠢くある魔物も同じ。
無名遺跡の地下迷宮、その一角である行き止まりの場所にある魔物が姿を潜めていた。

その魔物はミメシス。
名称は愛らしく聞えるかもしれないが、その実態はとても相手しやすく同時に厄介な魔物なのだ。

犠牲者の声を語り、姿を迷宮の壁や亀裂へ或いは天井と同化させ、獲物が近づいてくると壁や天井から飛び、獲物に組み付いて喰らう。

金属はその表皮よりあふれる粘液で溶かし、身体の何処からでも生やす事ができる触手を使い獲物を捕らえる、捕らえて今度はその身体に特殊な体液を擦りつけ、若しくはその獲物の身体に牙を突きたてる事で体液を注ぎこみ、犠牲者に交尾を強いるのだ。

喰らうのはそれが雄だった場合。
四肢を引き千切り、当然腹に収まり、その声と装備の一部は魔物に取り込まれるだろう。

しかし、雌だった場合。
交尾を強いられた挙句、最悪無数の魔物蠢く巣に連れ去られるだろう。

――され今宵は新たな犠牲者が生まれるのだろうか。

それは天井の模様と同化したまま、甘い香りを迷宮の通路に漂わせ、じっとその時を待つ……ゆらりゆらりと揺れる迷宮の壁に備え付けられた光源に時折粘液がぬらりと輝き、その存在をあたりに知らしめるのであった。

ミメシス > 徐々に僅かにであるが天井より魔物の皮膚から分泌された粘液がどろり……どろりと糸を引き滴り落ちて、地下迷宮の床に小さくもどろどろの粘液溜りを形成する。

そこより一層芳しく腐敗した果実の甘い香りが漂い、壁にかけられた光源の熱により蒸発し、更に迷宮の通路に小部屋に香りが広がっていく。

されど獲物は近づいてくる気配を魔物は感じれない。
すると次なる手として自分の喰らった冒険者の声を真似て、「タスケテ、タスケテ……。」と鳴くが当然聴く者はいない。

暫くはそうして獲物を寄せる努力を魔物なりにするのだが、諦める程度の知能はあったようで、天井をズリズリズリと這いずり、何かの這い進んだ痕跡を残しながら、次なる狩の場所へ迷宮の奥深くへと消えていくのであった。

残ったのはその足掻きの残滓。
甘い香りとヌルヌルの液体である。

ご案内:「無名遺跡」からミメシスさんが去りました。