2022/06/10 のログ
■E・T・D・M > 「……!?」
誰か来た!潜伏している最中において駆け寄って来る駆け足に縮こまるような気配
次の瞬間には投身してくるその勢いを飲み込んだ水面が大きく割れて
ばしゃーん!高らかなる音を立てて周囲にへと水の飛沫を撒き散らす!
今迄において熱気に晒されていたその肢体を覆い包むのは清らかなる冷たい水となる訳だ
さてや水風呂に兎飛び込む水の音、その合間において迷宮の成すべき事と言うならば
「………」
するりと忍び寄る触手の一端が岩壁の一部より生え出して
狙いをつけたのはその放り出されっぱなしの荷物である
置き引きが如きに束の間に忘れ去られたその財産を、触手の末端がからめとり
水着した相手のその眼前において高い高いと取り上げてしまおうという魂胆だ!
■エスピー > 元々自分の魔力で作った衣服という事もあり、布面積が水着同然という事もあり、着の身着のまま着水。
本当なら水質やら何やらチェックしてから水に入るべきなのだろうが……
とにかく冷えた水に浸かりたかった。その誘惑に勝てなかった。
「あー痺れるデスねえ……血肉の中を快楽が駆け巡ってるデスよコイツは」
あつあつの肉体は清水の中、温度差の膜に包まれて……
最早それを言葉で表現する事も出来ない……
一言で言えば極楽。
「ふーぃー……って、あ゛っ! ちょ、何するデス!?」
はっ、
と気付けば。
何か、触手? のようなものが荷物を取り上げてしまった。
あらゆるグッズ類が入っている鞄である、不味い事態だ。
■E・T・D・M > 高い高い、掠め取ることに成功した相手の私物財貨の限りをパチった触手が天井高くにまで持ち上げる
更にはその盗人ならぬ盗触手を護るかのように、その周囲には草木の如くに触手群が生い茂り出した
一度取ったものを、即座には取り返されぬように
さてや、何故かような行動に振る舞っているかは無論理由が在る
君の正体は金霊の座にありし精霊の類だ
その発露される気配から性質を読み取った迷宮は瞬く間においてそれに『対応』する形を備えた
「………」
抗議の声を浴びせて来る相手の目の前で
対象的に静かに泳ぐ触手が漲る魔力を転化しそこに『物体』を編み上げる
それは相手にとっても恐らく見覚えのある一品だ
回転式の銀色を湛えたリボルバーが一丁
がららららっ、触手端が鞭のようにしなって弾く弾倉が激しく回転する
そして一端の知性を感じさせるような動きでぴっと余る触手が挑みかかるかの如くに相手の鼻っ面を指差す
「………」
無言において雄弁に語りしは即ち、荷物を返して欲しければロシアンルーレットで勝負だ、と、言っている
■エスピー > 「私のジャンプ力を試してやがるデスかコイツ!?」
高い高いの餌食にされた荷物に飛び掛かろうとした時、その周囲にうぞうぞと触手が群がり始める。
うおっという声を上げて女はぎりぎりでジャンプを停止。
このままジャンプすれば落下する先は触手の群れの中、である。
くっと悔し気な呻きを漏らし、どうしてくれようかと歯軋り。
「むむむ!?」
と──
唐突に。
眼前に現れるのは、拳銃である。
それだけでは意味が分からなかっただろうが、一連の触手が器用に行う動作で、ははーんという顔になる。
「うにょうにょした何かの分際で、私とギャンブルバトルをお望みとはいい度胸デスよこいつは!」
女は相手になってやる、と触手のほうをびしっと人さし指でさしてポーズをキメる。
■E・T・D・M > 「 b 」
相手の返礼に応じ、複雑に触手が重ね合わさるようにして形作る親指を立てるかのような形状
互いの合意によって、この迷宮内の一角において賭場が発生したのだ!
じゃらん、と、相互的な認識の影響によって迷宮の魔力が反応し
相手が勝利した場合における『報酬』が触手群の足元に出現する
金や銀で構成されたちょっとした量の財宝だ
「……」
そして返す手により突きつけられた指先から少し下向きにずれこむようにして
延ばす肉色のうねりは過剰露出ながらにちゃんと多分大事な部分は隠している相手の御腹辺りを指差した
是即ちが詰まりはこちらが勝利した場合の報酬となるという次第
合間において慣れたような『手』使いで開いた弾倉にへと弾丸が一つ仕込まれた
もしも命中すれば『死』ぬ訳ではないが、睡眠状態に陥る睡眠弾だ
がらららっ!そしてまたも弾倉を弾いて『シャッフル』させると共に
その拳銃をまずはそちらの方にへと投げつける、ぽーい
「………」
では此処で基本的なルールに進行しよう
互いに『相手の手番』において自らの頭を狙ってトリガーを引く
そしてもしも『運悪く』銃弾を引いてしまえばアウトという次第だ
というわけでレディ・ファーストだ、君から引金に指をかけるがいい、幸運のウサギよ
■エスピー > 摩訶不思議の世界に片足を突っ込んだ存在である女にとって、
突如出現した財宝は驚くには値しない。
両目が$マークになる。
しかし、ギャンブルでこんなに稼いだら「上司」に怒られるのでは……
という懸念も鎌首をもたげる。
三秒で「まあいいか」と懸念をスルーことにしてしまったが。
「つまり、こっちが負けたら、そっちの報酬は私ってことデスか」
超速理解。
レンコン型弾倉に一発だけ装填されたリボルバーを、慣れた手つきでパシィッと受け止める。
昔ならギャンブル力の権能で絶対に負けることはなかったが、今は普通の人間と同じ運しか持っていない。
しかし。
まるでガンマンかカウガールのように、片手のリボルバーでガンスピンをキメて、
《カチンッ!》
銃口をこめかみに押し付けて、迷うことなく引き金をひく。乾いた音。こんな段階で自分が悪運を引くなんて根拠もなく思い込んでいる。
「フーッ。さあ、そっちの番デスよ!」
ぽーい。と、パス。
■E・T・D・M > 閉鎖された洞窟の空間に陰々と金物の音が反響した
それが消え行ってしまう前に投じられた拳銃を、ぱしんっと薙ぎ払うかのように走る触手が捕まえた
骨の欠如している軟体がぐるりと前後逆様に裏返り、自分自身を指し示す
「………」
思わせぶりな一瞬の重い空白、そして次の瞬間には
がちん
当たり前のような仕草で手繰られ引かれたトリガーの音ばかりが響き渡った
結果はまたも『HIT』せず、これで4/5を通過して3/4にへと至ったという事になる
冷や汗一つもかかないポーカーフェイス、表情の欠如した肉の触手は直ぐにその銃器を、相対したギャンブラーにへと放り投げた
銃弾が一つそこに通っているのは確かなる事実、運勢が味方するか
あるいは何がしかの力が無ければ何時かはずどんと弾丸が自らを貫く事になるのだ
さあ、自らを運命の渦にへと託すのだ、次は君の手番
迷宮の奥底だというのに沸々と煮えるような鉄火場の熱気が此処には籠り立っている
■エスピー > 「このうにょうにょ、ヤるデスね……!」
堂に入った動作に、思わず不敵な笑みを浮かべる女。
流れるように引き金を引く動作に、ただの触手だというのにギャンブル強者のナイスミドルの姿が重なって見える。
実際には性別などないのだろうが。
ぱしっ!
受け取った拳銃の銃口を、再び流れるような動作でこめかみに近づける。
しかし、一回目とは違う……
間があった。
発射の可能性が増せば、当然のようにプレッシャーが増大する。
しかし、プレッシャーが無ければギャンブルとは呼べない。それは常勝の権能を失って知った妙味。
すー……
眼を閉じる。深呼吸の音。わずかな間。
「!」
開眼。
《カチンッ!》
……額から頬に伝い落ちる汗。細く長く息を吐き出し、手の中の拳銃を相手に放る。
■E・T・D・M > 「…………」
またも命中はせず、一瞬動揺したかのように空気が揺らいだ
その感情的なブレの振幅が表出化したその証として
受け取った筈の拳銃の握りが甘くその手元から取り落としそうになり
「……!」
慌てて地面に飲み込まれる寸前にセーフティネットとなった肉の網がそれを受け止めて構え直す
じ、と、相手の顔を見つめるようなワンテンポを置いたその後に意を決して今一度に銃口は己にへと向き直った
…ギャンブルには『流れ』というものが在ると言う
金の精霊を眼前にして釈迦に説法というものだろうが、これは気勢に弱った相手から逃げていくものであり
それ即ちは
かちり
「……!!?」
ガオン!!少しでもメンチを切り合ったこの状況下で膝を屈した方に死神が微笑むという訳だ
放たれた銃弾を受け止めた瞬間にびんっと全ての触手は突っ張るように痙攣し
そして間も無くして筋肉が皆まで弛緩してぐったりとしおれてしまう
手持ち擡げていた荷物はどさりと相手の目の前に落ちて来た
渦を描く肉の腕に抱かれた財貨の数々は、しかし最早それを手に取るならば邪魔をする者はいない
今回の勝利者は君だ、幸運のウサギよ、その度胸と運を勝ち取った力に見合った対価を持って行くがいい
ご案内:「無名遺跡」からE・T・D・Mさんが去りました。
■エスピー > 「………………」
ひゅうー……
全てが決した後、何処か荒涼とした風がその場に流れていくのを感じた。
ひりひりとした勝負の後はいつもどこか虚しい……
「って、キメてる場合じゃないデス。いい勝負だったデスよ!」
フェアな勝負をした相手には、いつでもリスペクトを欠かさない。
東洋人なら合掌のひとつでもしそうな神妙な顔で、立てた指二本を振る。
そして、荷物と持ち帰れるだけの財宝をゲットし、その場を立ち去る。
しかし、前情報とは全然違うダンジョンだった。
そのうち、また足を運んでみよう。
また面白いことがあるかも知れない。
……その発想はカジノジャンキーめいていることに、当人は気付いていないのだった。
ご案内:「無名遺跡」からエスピーさんが去りました。