2022/05/03 のログ
ご案内:「無名遺跡」にレイリエさんが現れました。
レイリエ > 耳を劈くような断末魔を響かせて、地面へと崩れ落ちる魔物の体躯。
短杖を片手に肩を上下させて息を整えながら、その様子を見詰めるエルフの女の姿がひとつ。
暫くして、地面の上でのたうち回っていた魔物が完全にその動きを止めたのを確認すると、
ふぅ―――と長い息を吐き出しながら額に浮かんだ汗を拭い。

「―――急に襲い掛かってきた時は、どうなる事かと思いましたが………。
 でも、此処で倒せたのは僥倖でした………。」

手にした短杖を収め、代わりに取り出した手帳をパラパラと捲って開いたページと目の前の魔物とを見比べる。
ギルドに所属した正式な冒険者であれば、倒した証拠を持ちかえれば幾許かの褒賞が支払われるが、生憎自分は正式な冒険者では無い。
しかしながら、こうした場所に生息する魔物の身体の一部は、魔道具や魔法薬の素材として重宝されている。

女がこの遺跡に足を踏み入れたのもまた、そうした素材の収集が目的だった。
確認を終えた手帳を仕舞い、流れ出た体液の池に横たわる魔物の亡骸へと慎重な足取りで近付くと、
腰に差したナイフを抜き、つい先程までのたうっていた無数の触手の内の一本へと刃を入れ始める。

レイリエ > 「―――ん………。」

しかし、女の手付きはあまり手慣れたものとは言い難く、
表面を覆う体液にぬめり思いの外弾性のある触手の解体に難航している様子で。
漸く切り落とした一本を肩から提げた鞄へと仕舞い終えた頃には、かなりの時間が過ぎてしまっていた。

「折角の貴重な素材ですけれども………。
 持ち帰るのは、あと一、二本が限界といったところかしら。」

何時までもこの場所に留まっていてはまた別の魔物に襲われないとも限らないし、鞄の容量にも限界がある。
独白として唇から零れ落ちたその言葉は、心なしか酷く口惜しそうに。

護衛兼荷物持ちとして人を雇う事も考えたが、
今回のような成果が得られなかった場合の赤字を許容出来る程の経済的な余裕は残念ながら女には無く。
加えて、このような場所に全幅の信頼を寄せて同行を頼めるような伝手も持ち合わせていなかった。

ないものねだりをしていても仕方がありませんね、と苦笑い混じりに呟いて。
魔物の体液に濡れたナイフの刃を拭ってから、二本目の触手の解体へと取り掛かり始め―――

レイリエ > 「………よし。」

暫くして無事に解体を終えた二本目の触手を鞄に収めるとゆっくりと立ち上がる。
常に暗闇に閉ざされた遺跡の洞窟内では時間の感覚は曖昧だが、恐らくはそろそろ日が落ち始める頃だろう。
そう判断すると女は短杖と傍らに置いたランタンの明かりを手にし、遺跡の入口を目指して元来た道を引き返していった。

ご案内:「無名遺跡」からレイリエさんが去りました。