2021/12/02 のログ
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
■影時 > 思ったより深く潜った気がするが、そうでもないのか。
九頭竜山脈に点在する無名の遺跡の群れは、何気ない入口から潜ると想像以上に深みを見せていることがある。
慎重に潜り、何は得るることなくとも息災で還るものがあれば、無理の挙句に生還すら叶わぬものが居る。
だが、見るべきものが多いとなれば、危機の探索は当然としても奥に進んでしまうのは無理からぬ、としてほしい。
「――……入り口は荒れ地同然だったンだが、元は何かが棲んでいたのかね」
薄暗い回廊の連なりを抜け、至った先は闇から光の中に包まれているような気がする。
自然の洞窟を利用した迷宮――否、これは神殿なのだろうか。
洞窟というよりは、地下空洞と形容するような広い空間の縦横を満たすように石造の神殿めいた建物が、在る。
ぼんやりと照明代わりに光を宿した天井の御蔭で、夜目が利く目にとっては視界を通すには困らない。
得体も知れぬ建物を見下ろせる斜面の一角で腰を下ろし、持参してきた携行食を齧りながら目を遣って考える。
故郷から離れ、随分と立つが知らぬものと遭う感覚というのはいつだって新鮮だ。
抱えきれない富なぞより、このような未知と会う事の方が己にとっては価値が高い。
ぼそぼそとした携行食を水袋に満たした水で飲み干し、息を吐く。
■影時 > 下調べなしに進むというのも愉しみには違いないが、遠目から外観で窺う限りで侵入経路などの算定は必要だろう。
とは言っても、進入経路が一つしかないなら是非もない。
そして、何よりも注意を払うべきなのは、この場に巣食う魔物や残置された護衛などだ。
「外から見る限りじゃァ、護衛やら先客やらは出てる類は見当たらんがー……中に居るのかねえ」
携行食の包み紙は、その場に捨てずに几帳面に畳んで装束の隠しに押し込む。
非常時は兎も角、己が居た痕跡は煙草の灰であったとしても残すことは厭う。抜け忍の身でもこの習慣は忘れない。
少しばかり小腹が膨れた処で一息吐き、己が進入した経路である回廊の出口のほうを肩濾しに見遣る。
浅い階層は小鬼やら棲み付いた低位の魔物が跋扈していたが、装備と経験が伴っていれば進むには苦労はしないだろう。
「……どーせなら、あれだ。道連れでも居りゃあ愉しいが」
流石に贅沢か、と。口元を苦笑めいた形に歪め、顎下まで下ろした黒い覆面を引き上げる。
毒気の類の心配はないかもしれないが、事が事だ。見えぬものにこそ脅威と脅威がある。