2021/09/30 のログ
ご案内:「無名遺跡」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 遺跡の深層。
陽光が届かないそこでは遺跡の壁や天井を侵食するヒカリゴケだけ。黄緑色と白の斑のような模様となって周囲を彩り照らす中、それらを震わせる地響きが轟く。

ぽっかりと天井が高くなった広間のような場所に蹲る黒い影。
その傍ら、佇むヒト影。

辺りには血の匂いが色濃い。壁のヒカリゴケも所々血濡れて光を欠けさせている。ぽたり、ぽたり、続く水音は、零れ落ちた地下水のものか、はたまた深紅のそれのせいか。

「――――……」

肩で息をしていた佇んでいたヒト影が、ゆらり、蹲った影に近づく。
触れれば解る。巨大な熊に蛇の尾が付いたようなそのいきものから、急激に命が抜け落ちて行っている。

―――女の口が弧を描いて
うっとりと、血まみれの、まだあたたかいその身体の首筋に頬を寄せて
弱まって行く鼓動に聞き入るように、耳を押し当てる…

グァイ・シァ > その巨体から完全に体温が失われるまで、どれくらい時が経ったろうか。
ハァー、と深い吐息のような呼吸とともに女は血濡れた毛皮から顔を上げる。
ぐい、と顔を手の甲で拭っても血の跡が広がるだけ。
ほんの少し翠の瞳を細めると、愛おしげにすっかり冷たくなった亡骸を見詰め

「―――…」

女なりの敬意なのだろうか。触れていた毛並みを撫で梳いてから、そっと口付けをする。

――――それからくるりと朱い髪を翻すように踵を返し
遺跡の更に奥深く、更に獲物を求めて
ヒトならぬ女が彷徨っていく

ご案内:「無名遺跡」からグァイ・シァさんが去りました。